昨日WSJは総務省が毎月発表する物価指数と東大日次物価指数の乖離が拡大していることを記事にしていた。
総務省が発表している7月の物価上昇率は4月の消費税引き上げ効果を除外すると前年同月比+1.3%だった。 上記グラフが示すとおり、物価上昇率は頭打ちの感が強くなっているが、それでも14か月連続の上昇をキープした。
一方東大が開発した日次物価指数を見ると5月から物価の下落が始まり、二つの物価指数の乖離が目立ってきた。
東大日次物価指数は、その名前のとおりスーパーマーケットのPOSシステムを使い、約300の店舗の日々の商品価格を原データとして使用している。だから時間限定の安売り販売価格もデータに反映される。一方月次ベースの総務省物価指数にはそのような価格の一時的な変化は反映されない。
また東大日次物価指数がカバーする商品は総務省物価指数の2割に過ぎないということも、二つの指数に差がでる要因の一つなのだろう。
WSJは東大物価指数を開発した渡辺努教授の「東大物価指数は経済状態の先行的な指標」「小売業者は時間限定の安売りセールの後、そのまま値段を下げてしまうことが多い。なぜなら値段を元の売値に戻すと顧客が戻ってこないからだ」という言葉を紹介していた。
二つの物価指数の相関関係を見ると、東大日次物価指数の動きは総務省物価指数に3か月ほど先行した動きを取っている。渡辺教授は「CPIは近い将来下落することに自信を持っている」と述べている。
もし二つの物価指数の過去の関係が持続するとすれば、早晩CPIの下落が顕著になり、消費税再引き上げの可否を巡る議論が活発化しそうだ。そして日銀は追加的緩和に踏み出すことになる。それは理屈の上では円安要因だが、問題はそれをどこまで今の市場が織り込んでいるかということである。