今朝(9月1日)見たCNBCのトップラインに出ていた記事のタイトルはJapan's economy is stuck in no no man's landというものだった。
「日本経済はNo man's landにはまり込んで動けない」という意味だ。No man's landは「無人地帯、荒地あるいは軍事的対立の中でいずれの勢力によっても統治されていない領域、未知の領域」を指すイディオムで、第一次大戦中に出現した言葉だ。
S&Pの主席グローバル・エコノミストはCNBCに「もし安倍政権が来年10月に消費税引き上げに向けて動いたら、日本経済は未知の領域に入るだろう。そして日銀が掲げるインフレターゲットが達成できるかどうか誰も分らなくなる」というコメントを伝えていた。
最近新聞で週刊誌の見出しを読むと「安倍首相と石破幹事長の不和」「安倍首相の健康問題」等安倍政権の問題となりうるところをピックアップした記事が目立ってきた。
憶測が多いと思われるそれらの記事を読んだ訳ではないが、そのような記事が「売れ筋ニュース」として取り上げられるところに、政権に対する批判の声が以前より高まっていることが感じられる。
先週金曜日に発表された経済指標は、日本経済の足取りの弱さをうかがわせるものが多かった。総務省が発表した7月の家計支出は市場予想(▲3%)を大幅に下回る前年同月比▲5.9%だった。
また同月の鉱工業生産指数は前月比0.2%上昇して2か月ぶりに増産となったものの、市場予想のプラス1%には届かなかった。
もっとも総てのエコノミストがアベノミクスの行方を懐疑的に見ている訳ではない。労働市場の改善を材料に年後半には景気は成長軌道に戻ると予測する人もいる。その一つの根拠は有効求人倍率が前月に続いて1.1倍と1992年6月以降で最高水準をキープしたことだ。
しかし私は有効求人倍率や失業率の数字だけでは、今の日本の労働市場の問題は測れないのではないか、と考えている。それは日本では余り話題に登らないがUnderemployment(不完全雇用)の問題である。「不完全雇用」とは「能力以下の仕事に従事している」ことだ。たとえば大学卒業者が高卒資格の仕事に従事しているような状態だ。
この不完全雇用の状態が一部に続いている状況で、有効求人倍率が高くなっても、実質賃金はあまり上昇しないから、中々財布のひもは緩まないのだろうと私は考えている。
週刊誌のタイトルに話を戻すと、著名な米国の経済学者が日本で消費税を10%に引き上げると景気は滅茶苦茶になるという趣旨の記事を寄稿していたようだ。中身を読んでいないので、批判は避けるが、もし消費税を10%に引き上げて景気がとんでもなく悪化するのであれば、10%以上の消費税を課税している日本以外の国の景気はとんでもないことになるはずだが、そんなことはない。それなりちゃんと経済は回っているのである。
ただし消費税が10%を超える国の大部分は「食料品を非課税または軽減税率を適用」するなどの、低所得者対策をキチンととっていることを見落としてはならない。
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私自身は消費税を10%に引き上げるべきだというスタンスを取り続けている。極端にいうと足元の景気が少々弱かろうもそれ位のことをしないと、積もり積もった借金の返済とこれから益々増える社会保障費の財源が確保できないからだ。
ただし大きな前提条件があってそれはキチンとした低所得者救済対策を取る、ということなのである。これができないと本当に安倍政権はNo man's landに踏み込むことになり、安定政権下でデフレ脱却を期待している国民もNo man's landに引きずり込まれる可能性がある。
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