金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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次の危機はイタリアから~Italexitと不良債権問題

2016年07月05日 | 国際・政治

世界の株式市場は概ね英国のユーロ離脱国民投票の前の水準に戻りつつある。Brexitのプロセスと影響を落ち着いて見極めようということだろう。

だがBrexitは欧州各国のユーロ離脱の動きに影響を与えている。今懸念されているのはイタリアだ。市場では早くもItalexitという言葉がささやかれている。イタリアのレンツィ首相は「上院議員の数を315から100に減らし、行政府への影響力を削減する」等といった政権基盤強化策について10月にも国民投票を行うと予想されている。レンツィ首相は構造改革に国民の支持が得られないなら辞職すると背水の陣の構えだ。

だが先週の世論調査では、反対派の五つ星グループ支持者が首相の民主党支持者を上回った。五つ星グループは「ユーロ離脱について国民投票を行う」と言っているので、同グループの勝利はItalexitを現実味を帯びた話にするだろう。

イタリアの問題はユーロ離脱の可能性だけではない。いやもっと喫緊かつ大きな問題は銀行の不良債権問題だろう。

WSJによるとイタリアの不良債権比率は17%でこれは米国の10倍の水準だ。欧州の上場銀行の不良債権の半分はイタリアの銀行が保有していると言われている。

イタリアの銀行が不良債権の処理を進められない理由は「低収益性」と「中小企業融資の担保がオーナーの自宅」という点にあるようだ。この構造は日本によく似ていると思う(ただし日本では今不良債権は大きな問題ではないが)。

低収益性は「銀行の過剰人員と過剰店舗」「伝統的な貸出業務に固執して、資産運用や投資銀行業務といった手数料部門が弱い」ということに起因する。

イタリア政府は昨年の秋から「不良債権市場の創設」「破産手続きの短縮化」「400強の信用金庫Cooperative bankの合併」といった金融改革を掲げているがほとんど成果を挙げていない。

英国のユーロ離脱懸念で欧州の経済成長が減速することは間違いないが、その影響は英国よりもイタリアあるいはポルトガルなどといった南欧諸国に一層強く出てくるのだろう。マーケットはひと時安堵しているに過ぎないのかもしれない。

 

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