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トランプ候補の言いたい放題、建て前に疲れた一部の白人層に受けたのか?

2016年07月25日 | 国際・政治

先週ドナルド・トランプを大統領候補に指名して終わった米国共和党大会。この話題は日本のテレビニュースでもしばしば取り上げられていた。

今週開かれる民主党大会では、ヒラリー・クリントンが大統領候補に指名される予定だから、いよいよ大統領選挙がヒートアップしてくる。

今月7日にピューリサーチセンターが発表した世論調査(今日大統領選挙が行われるとすればだれに投票するか?)によると、ヒラリー・クリントン45%、ドナルド・トランプ36%、ゲイリー・ジョンソン(小政党リバタリアン党の大統領候補・元ニューメキシコ州知事)11%となっている。

このような世論調査をベースにして、民主党のヒラリー・クリントンが大統領に選出される可能性が高いと推測する人が多いようだが、私は現時点での投票見込みより、接戦になるのではないか?と考えている。

理由はトランプ支持がある種のモメンタム(慣性)を持っているからだ。共和党で予備選運動が始まった頃、泡沫候補と見られていたトランプがどうして大統領候補に選ばれたか?というと「言いたい放題」を言ってきたからである。

「メキシコ人の大半は犯罪者だから国境に壁を作り、不法移民をさせない」「イスラム教徒の一時入国禁止」

これらの発言は人種差別的・宗教差別的でありかつ現実性はない(たとえば米国には国連本部があり、当然イスラム諸国の人も多く来ている)。

その程度のことはトランプ支持者といえども、百も承知だと思うが、それでもトランプ支持者がいることは彼の「言いたい放題」発言に「よくぞ、言いたいことを言ってくれた」という共感があるからだ。

トランプはテレビ番組の司会で人気を博したそうだが、その番組の中の彼の決め台詞がyou are fired(お前は首だ)だそうだ。

解雇の自由度が高いアメリカとはいえ、実際にボスがyou are firedということは少ないだろうと思う。なぜなら首にされた方が訴訟を起こすリスクが高いからだ。私の経験ではアメリカでも訴訟リスクを回避するために、自主的な退職・転職という選択肢を選ばせることが多い(そのため転職時の職歴照会書には悪いことは書かないという条件を出す)。

人を解雇するということはアメリカでも骨の折れる仕事である。現実社会ではyou are fierd と叫ぶ訳には行かないから、テレビの中のトランプに溜飲を下げる人がいるのだろう。

メキシコ人に対する差別的発言も今まで政治的禁句であった。本音と建て前の差が小さいと思われているアメリカでも何でも言って良いわけではない。その代表が民族的・宗教的多様性を尊重するというものだろう。

そこをトランプはあっさり踏み越えてしまったのである。グローバリズムというのはある意味建て前の世界である。一方現実社会に目を向けると、犯罪者の中にある民族的傾向を見ることができる(だからといってある民族を犯罪予備軍的に見るのは暴論だが)。

現実社会から感じる「本音」をぶつけられないことに疲れを感じた一部の白人層がトランプ支持に回っていると考えるべきだろう。

グローバリズムという理念=建て前に対する自国主義という構図は英国のEU離脱でも見ることができる。

仮にトランプが彼の過激なレトリックを少しトーンダウンして共和党の穏健派の取り込みを図りながら「自国重視主義」を前面に打ち出してくると彼の支持率は高まる可能性がある(一方過激なレトリックを止めると支持者が減る可能性もある)。

米国大統領選挙は興味深い。

 

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