昨日(3月9日)発表された米国の雇用統計は株式市場にとって誠に都合の良いものだった。
2月の非農業部門雇用者数は、建設業が牽引して313千人の増加(ロイターの事前予想は200千人)、失業率は4.1%(同4.0%)、市場が注目していた時間当たり平均賃金の上昇率は1月の0.3%アップから0.1%に鈍化した(事前予想は0.2%)。
つまり景気は堅調で雇用は強いが、直ちに過度のインフレを引き起こすほど賃金上昇圧力は高くない~ゴルディロックス状態~がしばらく続くだろうという判断から株式は大きく買われた訳だ。
ナスダックは132ポイント(1.79%)上昇して史上最高値を更新した。ダウも440ポイント(1.77%)上昇し、25,335ポイントで引けた。
市場では今月連銀が政策金利を引き上げることはほぼ確実だが、賃金上昇率が鈍化したことから連銀の利上げペースがやや鈍化するのではないか?という見方もあるようだ。
ところでハイテク銘柄の多いナスダックが早々と高値を更新したのに較べ、ダウは1月半ばの高値26,616ポイントに較べまだ1300ポイント弱低い水準に留まっている。
成長期待の高いハイテク銘柄が選好されていると言ってしまえばそれまでだが、もう少し深読みをしてみると、長期的な労働力不足に備えて、企業がICTの力を使って労働力不足を補おうとするだろうという想像が働いているのだろうと私は考えている。
賃金統計は月ごとにブレのある統計なので、先月の数字だけでゴルディロックス状態が持続すると考えるのは早計だ。むしろ景気の拡大が持続するなら賃金上昇圧力は持続し、それを緩和するためにはICTの活用で人件費の抑制を図る動きが強まるのではないか?などと私は考えている。