森友学園問題で、役人の文書改ざんが大きな問題になっている。
パソコン等の利用で文書を簡単に修正することができるようになったメリットは大きいが、変えてはいけない最終的な文書が簡単に変更される可能性を高めたという問題を起こしている。
この問題を解決する一つの方法が、仮想通貨で話題になっているブロックチェーン技術の中にある。
「仮想通貨」の本質は「参加者全員が元帳を共有する」ことにある。現在の銀行システムでは「元帳」はすべて銀行のシステムの中にあり、個々人はこの元帳を頼りに送金を行っていた。しかし仮想通貨では、銀行に相当する中央管理者は存在せず、参加者が元帳を分散的に管理することでシステムが成り立っている。
そこでは個々の元帳が正当なものであることを参加者全体で担保することが極めて重要だ。
技術的にはコンピュータ上のあらゆるファイルをハッシュ化し、そのハッシュ値が変わっていないことでファイルに改ざんがないことを証明するプロセスが正当性を担保している。コンピュータ上のファイルは0,1の組み合わせで作成されているので、ファイルの大小にかかわらずある桁数の英数値を与えることができる。これをハッシュ値というが、ハッシュ値は元のファイルをほんの少しでも変えると全く異なる値になるから、改ざんの有無を簡単に検証することができる(ただしどこが変更されたかまではわからない)。
このような仕組みを導入すれば、作成された文書に改ざんがあったかどうかを検証することは容易だろう。
だがより本質的には「分散型台帳技術」が発展しつつある背景には、中央管理者への信頼が揺らいでいることがあった。
仮想通貨の代表格であるビットコインは、リーマンショック後に銀行システムそのものの信頼性が揺らいだ中で誕生したと言われている。
もっとも昨今の仮想通貨の価格のボラティリティを見ると「価値の保存」という点で私は仮想通貨そのものはネガティブに評価しているが。
ただお役所にしろ銀行にしろ中央の管理者に間違いはない・中央の管理者は悪いことはしないという楽観的な前提は捨ててスクラッチでものを考えるべき時代が来ていると私は考えている。
また中央の管理者に悪意はなくても、法制度等が社会の変化に追いつけず、管理が極めて杜撰になっているものごとが多い。
一例は不動産登記の問題で、全国ベースでは約2割の土地が所有者不明になっているという推計もある。
これは不動産の所有権移転登記が義務でないことが大きな原因である。スウェーデン等では不動産取引や登記をブロックチェーン技術を使って大幅な時間短縮と不正防止を進める研究が進んでいる。しかし私は日本ではこのような動きは中々出てこないと考えている。法整備や登記簿のデジタル化が進んでいないことが大きな原因だが、そもそも元ネタ(所有者)がはっきりしないので、元帳を作ることができないことが大問題なのだ。
ブロックチェーン(分散型台帳技術)が世の中を大きく変えるかどうかは分からないが、そのベースにある英知を取り入れることで、現在のいくつかの問題は解決できるはずである。