昨日(3月25日)八ヶ岳連峰・阿弥陀岳の南稜で関西の登山者7名が滑落し、3名の方がお亡くなりになり、4名の方が怪我をされるという痛ましい事故があった。お亡くなりになった方のご冥福をお祈りするとともに、怪我をされた方の早いご回復を祈念します。
私は冬の阿弥陀岳南稜は登ったことはないが、反対側の阿弥陀岳北稜は登ったことがある。また冬の八ヶ岳には何度も足を入れているので、今回の遭難については、他人事とは思えない面がある。つまり状況が悪ければ、私もまた遭難する危険性はあったということだ。
阿弥陀岳南稜は一般登山道ではないが、本格的な岩登りのルートでもない。バリエーションルートの一つだが、ヤマケイ・アルペンガイド「八ヶ岳・北八ヶ岳」に記載されているので、無雪期には登られる方もかなりいるのではないか?と思われる。
そのガイドブックには次のように記載されている。
「阿弥陀岳南面の古典的なバリエーションルートである。・・・南稜上部にあるP3の俗にいう「樋」の通過がコースのポイントだが、技術の確かなリーダーに導かれたパーティなら問題はない」
もっともこれは雪のない時の話で雪がある時は数段難しくなることは間違いない。
実際このガイドブックは後段で「ルンぜ(上記の樋)に残雪があったり、凍結しているときは確保点が乏しいから充分な注意が必要だ。落ち口から草付を約80mで稜線をぬける」と注意を呼び掛けている。
今回の事故現場はP3と言われているので、このルンぜ(浅い溝))で起きたことはほぼ間違いないだろう。トップの人がなんらかの理由で滑落し、一本のザイルで結ばれていた全員が引き込まれたということだ。
状況から判断するに、隔時登攀(スタカット)ではなく連続登攀(コンティニアス)で登っていたものと思われる。
隔時登攀とは一人が登っている時、確保者がハーケンなどで自己確保を行った上で登っている人を確保する登攀方法で、登攀者が滑落した場合、確保して止めることができる可能性が高い。一方連続登攀は比較的容易な場所でロープで結びあった全員が一緒に登り(または下り)を行う登山方法だ。
万一ロープを結んだ仲間が滑落した場合はとっさにピッケルを雪面に差し込み、ロープとピッケルのシャフトの摩擦で滑落者を止める技術だが、安全性は隔時登攀に較べると著しく劣る。
今後事故原因等が明らかになっていくと思われるが、最大のポイントは事故当時なぜ隔時登攀を行わなかったのか?ということになりそうだと私は考えている。
いや正確に言うと「連続登攀を行っていたのか?隔時登攀を行っていたのか?」ということから考える必要がある。私は上記で連続登攀で登っていたものと思われる、と書いたが、隔時登攀を行っていたのかもしれない。隔時登攀でもトップが滑落し、落下重力が大きい場合は、ロープで止めることができない場合もあるからだ。
また7人が一つのロープで結びあうというのも異例なことだと思うが、どのような事情があったのかは当事者から聞いてみないと分からない。
言えることは、雪が積もっている場所で確保点が乏しいところを登るのはかなり難しいということである。