WSJは今週発表された日銀の展望レポートの中のある分析を紹介していた。
それは「労働需給がタイトなのに賃金があまり上昇しないのは、女性とシニア層が比較的低い賃金で労働市場に参入し続けているからだ」という意見だ。
労働需給がタイトなのにあまり賃金が上昇しないという従来の経済理論に反する現象に日銀はこれまで色々な説明を加えてきたが、また一つ解釈を付け加えた(というかこのことは広く知られていたと思うが・・・)。
65歳以上のシニア層で働いている人の数は過去10年間で約3百万人増え8百万人に達している。
女性労働者は過去10年で約2百万人増え2017年にはほぼ3千万人に達している。
人材不足に直面する多くの企業は、女性やシニア層をフレキシブルな勤務形態や短い労働時間で雇用することで人件費を抑えながら働き手を確保している。
このバッファーがあるので、労働需給がタイトになっても大きな賃上げ圧力につながらないというのがレポートの見解だ。
この見解が正しいとすれば、シニア層や女性の潜在的な労働力の供給が続いている間は賃金は中々上昇せず、人件費が抑えられているので物価も上がりにくいということになる。
日銀としては忌々しいかもしれないが、実はハッピーな話だろう。
たとえばシニア層は働くことで社会的つながりを維持し、それが健康促進につながる。それは国の社会保険料負担を抑制し、悪化を続ける国家財政を少しでも緩和するからだ。
また家族の中で働く人が増えると消費支出が増え、景気が拡大する。働く人が増えると良いことが多いのである。