金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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年を取るということはリスクが減るということ?

2018年08月29日 | ライフプランニングファイル

羅臼岳を歩きながら、ふと「年を取るということはリスクが増えることか減ることか?」ということを考えた。

一般的には年をとる⇒若い時にはできたことができなくなる、病気やケガをする可能性が高まる、収入が限定されるので経済的に不安定になる、などの理由から「年を取るということはリスクが増えることだ」と考える人が多いのではないだろうか?

実際急な山坂を歩いていると若い時に較べると足取りがおぼつかなく、小石に躓いたりすることがある。転倒には至らなくても、スタスタ歩くことが少しづつ難しくなっていると感じることは多い。

だがリスクを「予想されることからのブレ」という金融的な定義から考えると、年を取るということはリスクが減ることだという見方ができると私は考えるようになってきた。

まず極端な例を考えてみよう。

ある人が何らか(病状の判断など)の理由で「明日確実に死ぬ」という情報を得たとしよう。死は忌まわしいことだが、確実になった以上予想からのブレはないのでリスクはほぼゼロに近づいたと考えることができる(不測の事故で今日死んでしまうこともあるのでリスクはゼロにはならないが)。

もう少し一般的な例で考えてみよう。

たとえば働き盛りだけれど住宅ローンを抱えた50歳と、無職になったがそこそこの資産を持ち終身型年金(厚生年金など)を受給している70歳ではどちらがファイナンス面でリスクが高いか?ということを考えてみよう。

働き盛りの50歳の人は事故や病気で働くことができなくなる可能性がある。また勤めている会社が倒産したり、大きなリストラに合う可能性もある。もちろん転職したり起業して収入を増やすチャンスもある。リスクはマイナス面だけではなくプラス面もある。要はリスクとは予想からブレが大きいか小さいかなのだ。

年金受給世代になると、年金が破綻しない限り、決まった(正確には決められた計算方法に従って)年金額を受け取ることができるので、働き盛りの人よりもリスクは少ないということもできる。3つの大きな前提条件が付くが。

前提条件の一つは「年金制度は破綻しない」「破綻を回避するために大きな給付減額が起きない」ということだ。

次に「大きなインフレ」が起きないということだ。厚生年金は物価スライドするがマクロスライドという制度によりインフレ率に100%追随する訳ではない。

最後は「税金や社会保険料が大幅に増えない」ということだ。税と社会保険料負担は手取り収入を圧迫するので「予想手取り収入」が下振れするリスク要因である。

一方支出に関しては働き盛りとシニア層でどちらがリスクが高いだろうか?

病気になる可能性は年齢とともに高まるからシニア層の方がリスクが高いという見方もできる。だが病気リスクを医療費負担というファイナンス面から見るとある程度ヘッジすることは可能だ。まず高額医療制度という社会保険で高額医療は上限が抑えられている。また民間医療保険に加入することでガンなどの治療費をヘッジすることができる。

つまり「年を取るとある確率で病気やケガをすることが増える」という前提を立てるとそこからブレる可能性は減る。つまりリスクが減るのだ。

年を取って山歩きをするとき、若い時代と同じペースでスタスタ歩くことができると考えるとするとそのことがリスクなのだ。

自分の目線を下げ、「若い時と同じペースで歩くことはできない」「足を痛めて想定外に時間をかかることがある」などと期待値(予想)を下げるとそこからブレる可能性は低くなる。

総じていうと年を取ることは余命が短くなることであり、余命が短いということはその中で想定外のことが起きる確率が少なくなるからリスクは低下することになる。

年をとってリスクが高くなると感じる人は「若い時のように体を動かせる」と考えるなど期待値が高すぎる人なのだろう。目線を下げるとリスクは下がるのである。

 

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