江戸末期の儒学者佐藤一斎の言志四録に「一燈を提げて暗夜を行く。 暗夜を憂うることなかれ。 ただ一燈を頼め 」という有名な言葉があります。
この一燈は自分の信念、ビジョンを指しますが、今の投資の世界で一燈を頼むとすると、インフレ、政治地政学的リスクにも強い米国経済でしょう。
もちろんその米国経済にも景気後退というリスクはついて回るのですが、最近の好調な企業収益が、景気後退リスクを防ぐのではないか?という記事がWSJにでていました。
記事のタイトルはHow rising profits could prevent the economy from falteringです。
内容は商務省が発表したところでは、第三四半期の企業収益は前年度比1.1%上昇しているというものです。ちなみに第二四半期の企業収益は前年度比6%のマイナスでした。またこの企業収益は各連邦銀行の決算も含んでいるのですが、連銀は金利上昇により保有している米国債など固定利付債の含み損が拡大しています。この各連邦銀行の損益を除いた企業収益は、第二四半期が1.6%、第三四半期が6.7%の増益となっています。
1940年代まで遡って商務省のデータを見ると、企業収益が上昇に転じている時は、リセッションの終わりの時期かまったくリセッションがない時に見られる兆候だと記事は述べています。例外は1990年。この時はガルフ戦争とS&L危機が重なり、企業収益が改善していたにも関わらず景気後退に陥りました。
企業利益が上向いてくると、経営者は従業員の解雇を抑えるので、雇用市場が安定し、消費者が必要以上に財布の紐を閉めることがないので、景気後退に陥るリスクが少ないと記事は解説しています。
もっとも記事は企業業績が好調だといって翌年リセッションに陥るリスクを排除するものではないし、一つの要素だけで米国経済のように複雑なものを予測することはできないと述べています。
私もそのとおりだと思います。ただ不確実極まりない世の中を歩いていく我々としては、できるだけ先を照らす灯りが欲しいと思います。複雑な現実社会では一燈だけを頼むことは危険ですが、少しでも大きな灯りである米国経済を頼りにすることは妥当だろうと私は考えていますし、その灯りが輝きを増す可能性があるということは明るい情報に違いないと思っています。