金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

金融超緩和終了で株は下がる?上がる?

2006年03月08日 | 株式

日銀の金融政策決定会合が今日(3月8日)始まり、明日には結論がでる予定だ。これを巡って小泉首相から量的緩和解除決定は時期尚早というシグナルが出る等にぎやかになってきた。明日の政策発表を控えて株式市場は下げている。こういう時は一歩下がって海外勢の見方でも分析してみよう。

8日付のウオール・ストリート・ジャーナルは「借入コストの上昇が日本株ラリーに歯止めをかけるか?」という記事を書いている。見出しと中身が若干違う気もするがポイントを紹介しよう。

  • 先月メリル・リンチ日本のエコノミスト・コール氏が世界の45の投資家に行なった調査では38%の投資家は「政策変更後も日経平均は継続して上昇」、31%が「変更後は下落」、残りは「中立」と回答している。
  • 昨年のラリーを引っ張ってきたのは、外人投資家と日本の信用取引による個人投資家だった。2005年の個人による取引割合は日本の3大証券取引所合算ベースで28%になった。(2003年は19%) 金額ベースでは過去2年間に3倍以上になり昨年は250兆円になっている。
  • 東京証券取引所によれば2005年の個人投資家取引の内、金額ベースで49%が信用取引である。金融超緩和政策のお陰で個人投資家は年率1.5%で信用買いの資金を調達することが出来たので、信用取引が外人投資家とともに昨年の株式ラリーを呼んだと言える。またネット証券協会によればオンライン株式取引の6割近くが信用取引である。
  • しかし超緩和政策の終了に伴い、向う数ヶ月の様相は極めて異なったものになるかもしれない。幾人かのエコノミスト達は金利は多くの投資家が予想するより早いペースで上昇するかもしれないと言う。例えば10年物国債の利回りは年初の1.44%から今週の1.653%にまで上昇している。信用取引の貸出金利は市場金利をベースにしているので、金融政策の変更は信用取引を行なう個人投資家のコストを押し上げるだろう。
  • これにより個人投資家が株を買う意欲を削がれ、その結果株式市場の勢いが失われる可能性がある。実際最近株式市場は弱含みだが。
  • 過去2ヶ月、日本株は昨年のモメンタムを失っている。日経平均は昨日(6日)1.1%下落の15,726円で終了した。これは昨年末から385円の下落だが、小型株の状況はもっと悪い。新興企業向けのマザーズ市場は年初来33%の下落である。
  • 最近の下落は年度末に向けた年金基金のりバランスのための売りに起因する。資産配分比率目標が決まっている年金基金にとって昨年日本株で大きな評価益が出たことは、リバランスのため株を売らなければならないことを意味する。
  • ドイツ証券東京は「日銀が金融市場から24兆円の流動性を回収することの影響を受ける最初の場所は株式市場の可能性がある」と言う。特に中小型株が強い影響を受ける。これは信用取引を行なう個人が短期間で利鞘を稼ぐため値動きの大きい中小型株をターゲットとする傾向が強いからである。
  • ロスアンゼルスのヘッジファンドの日本株マネージャーによれば「超金融緩和政策があちこちでミニバブルを起こしていた」「中小型株セクターではある人々はバリュエーションではなく株価の動きをベースにして株を買っていた」と言う。もっともこのマネージャーも他の市場参加者も政策変更のインパクトは市場に折込済で長い目でみれば日本株の上昇トレンドは続くと見ている。
  • 日計り商いをする個人投資家は市場から撤退すると見る向きもあるが、楽天証券のチーフストラテジストは「それは株式市場のパフォーマンス次第だ。投資家は株で利益が得られる限り、売買手数料や信用取引の金利について大きく気にすることはない」と言う。

まあ以上のようなことで、3月は国内の大きな投資家である年金基金・個人とも需給要因は悪いということだ。ここは株価収益率等をしっかり見ながら、落ち着いた投資スタンスで望みたいところだ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 高年齢者再雇用安定法を前にして | トップ | 「金(カネ)」でコンペに勝つ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

株式」カテゴリの最新記事