前回「シニアになっても働き続けるにはヒューマンスキルを維持する必要がある」と書いた。
しかしこれは必要条件であって、スキルがあっても仕事に出会わないこともあるだろう。
仕事に出会うには運が必要なのだ。キャリアマネジメント理論の大家クランボルツ博士は「計画された偶発性理論」の中で「キャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決まる」と述べている。私の場合も60代の後半をある会社のアドバイザーとして過ごしたが、これはその会社の社長と昔一緒に仕事をしたことがあるという縁によるものだった。
そんな個人的な体験からも私は「計画された偶発性理論」を信じている。世の中には若い時に描いた設計図どおりの人生を歩きキャリアを積み重ねている人もいると思う。ただし芸術家、職人さん、個人事業主の人ならそのような生き方が可能だろうが、会社員の場合は難しい。まずほとんどの会社では定年というものがある。定年後のことを考えるとキャリアの8割は偶発的なことで決まるという考え方は説得力がある。
「キャリアの8割が偶発的に決まる」とすれば我々はどうすれば良いか?
それには幸運に出会う頻度を高めることが一番だ。ある出会いが幸運を呼び込むかどうかは事後的にしかわからないことが多いだろう。そこでとにかく出会いを増やすのが良いと私は考えていた。出会いには「人との出会い」や「未知との遭遇」など色々なものがあるが、まず家に籠らず外に出て、色々なものを見よう、色々な人との出会いを楽しもうということだ。
クランボルツ教授は「予期せぬ偶然」に出会う行動指針として「好奇心」「持続性」「楽観性」「柔軟性」「冒険心」の5つを持って行動することをあげている。
この5つは性格とか資質と呼ばれるものだ。つまりかなりの部分は持って生まれたものなのだ。
では好奇心や柔軟性に乏しい人は人生をプラスに導く偶然に出会うことはできないのだろうか?
そんなことはない、と私は思う。性格や資質を100%変えることはできないと思うがある程度は変えることができるだろう。
心が変われば、態度が変わる。態度が変われば、行動が変わる。
行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変わる。
人格が変われば、運命が変わる。運命が変われば、人生が変わる。
という言葉がある。色々な人が使っているので元の出典は知らない。また因果のチェーンが長いので短くして使い易くしよう。
つまり「行動が変わると運命が変わる」だ。たとえば「分からないことが出た時なおざりにしておかず自分で調べる」という行動パターンを作ることだ。つまり学習する習慣とコツを身に着けることだ。そうすると新しい仕事にチャレンジする勇気が湧いてくる。だから出会いのチャンスが広がるのだ、と私は思う。
結論をいうとクランボルツ博士があげた5つの資質を伸ばすような行動特性を大事にすることがキャリア人生を豊かにする。行動特性を変えることがemployabilityを高める王道だといえると私は確信している。