金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

致仕を迎える(3)~働くことができる幸運

2020年05月24日 | うんちく・小ネタ

前回「シニアになっても働き続けるにはヒューマンスキルを維持する必要がある」と書いた。

しかしこれは必要条件であって、スキルがあっても仕事に出会わないこともあるだろう。

仕事に出会うには運が必要なのだ。キャリアマネジメント理論の大家クランボルツ博士は「計画された偶発性理論」の中で「キャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決まる」と述べている。私の場合も60代の後半をある会社のアドバイザーとして過ごしたが、これはその会社の社長と昔一緒に仕事をしたことがあるという縁によるものだった。

そんな個人的な体験からも私は「計画された偶発性理論」を信じている。世の中には若い時に描いた設計図どおりの人生を歩きキャリアを積み重ねている人もいると思う。ただし芸術家、職人さん、個人事業主の人ならそのような生き方が可能だろうが、会社員の場合は難しい。まずほとんどの会社では定年というものがある。定年後のことを考えるとキャリアの8割は偶発的なことで決まるという考え方は説得力がある。

「キャリアの8割が偶発的に決まる」とすれば我々はどうすれば良いか?

それには幸運に出会う頻度を高めることが一番だ。ある出会いが幸運を呼び込むかどうかは事後的にしかわからないことが多いだろう。そこでとにかく出会いを増やすのが良いと私は考えていた。出会いには「人との出会い」や「未知との遭遇」など色々なものがあるが、まず家に籠らず外に出て、色々なものを見よう、色々な人との出会いを楽しもうということだ。

クランボルツ教授は「予期せぬ偶然」に出会う行動指針として「好奇心」「持続性」「楽観性」「柔軟性」「冒険心」の5つを持って行動することをあげている。

この5つは性格とか資質と呼ばれるものだ。つまりかなりの部分は持って生まれたものなのだ。

では好奇心や柔軟性に乏しい人は人生をプラスに導く偶然に出会うことはできないのだろうか?

そんなことはない、と私は思う。性格や資質を100%変えることはできないと思うがある程度は変えることができるだろう。

心が変われば、態度が変わる。態度が変われば、行動が変わる。
行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変わる。
人格が変われば、運命が変わる。運命が変われば、人生が変わる。

という言葉がある。色々な人が使っているので元の出典は知らない。また因果のチェーンが長いので短くして使い易くしよう。

つまり「行動が変わると運命が変わる」だ。たとえば「分からないことが出た時なおざりにしておかず自分で調べる」という行動パターンを作ることだ。つまり学習する習慣とコツを身に着けることだ。そうすると新しい仕事にチャレンジする勇気が湧いてくる。だから出会いのチャンスが広がるのだ、と私は思う。

結論をいうとクランボルツ博士があげた5つの資質を伸ばすような行動特性を大事にすることがキャリア人生を豊かにする。行動特性を変えることがemployabilityを高める王道だといえると私は確信している。

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致仕を迎える(2)~働く能力

2020年05月22日 | うんちく・小ネタ

前回70歳まで働くにはemployability(雇用される力)を持続させる必要があると書いた。今回はその続き。

組織の中で働く人のスキルモデルとして有名なのは、ハーバード大学のロバート・カッツ教授の「テクニカルスキル・ヒューマンスキル・コンセプチュアルスキル」モデルだ。このモデルは半世紀以上も前に提唱されたものだが、今なお多くの人が引用している。

私はカッツモデルに近い形で「奥行・間口・高さ」モデルというものを考えていた。奥行は個別の技術領域における専門性の深さを示し、間口は数多くの専門分野を活用してビジネスに結び付ける応用力の大きさを示し、高さというのはリーダーシップの強さを表す。

若い時は専門性からスタートする。カッツ・モデルのテクニカルスキルだ。そして10年選手になる頃から間口を意識する。一人の人間が極められる技術領域には限りがあるが、各分野の専門家の知見を組み合わせることで大きな仕事ができる。

大きな仕事というのは概ねプロジェクトだ。プロジェクトとは日常業務の反対概念。具体的にいうと大きいところではオリンピックの開催などの国家的イベントだ。もう少し小さいところでは企業の合併だとか大規模システム開発がプロジェクトだ。プロジェクトでは色々の利害関係人の利害を聞いて調整していく作業が一番大変だ。またまとめた話を実行に移すには段取りが大切。これらをまとめて広い意味でヒューマンスキルと呼ぼう。私流にいうと間口の広さだ。

最後のリーダーシップはカッツ・モデルのコンセプチュアルスキルに該当する。ただ私はコンセプチュアルスキルの「スキル」という点にやや疑問を持っている。というのは企業や組織の頂点に立つ人に求められるものは「スキル以外の何か?」だからだ。それの何か?はカリスマ性であったり、優れた予知能力であったり、並外れた懐の深さであったり様々だ。そしてこれらの能力や気質は学んで得られるものというよりは天性のものが多いと私は考えている。

従って一般人は主に「奥行と間口の広さ」カッツモデルでいうと「テクニカルスキルとヒューマンスキル」で勝負するのが良いということになる。つまりEmployabilityとは何か?というとその時代時代が求めるテクニカルスキルとヒューマンスキルということになる。なおテクニカルスキルは一比較的短時間で習得することができる場合が多い。だが陳腐化する速度も速く、更には人工知能やロボットに代替される可能性がある。

これに較べてヒューマンスキル(交渉力・指導力・プレゼン力・司会力・傾聴力など)は習得するのに時間がかかるが、一度習得すると応用分野が広いし、人工知能に代替され難い機能だ。またヒューマンスキルの中に新しいことを学ぶスキル(メタ学習力)を入れておくと裾野が広がる。

資格(つまりテクニカルスキル)は持っていても商売に結び付かないこともある。商売に結び付けるのはヒューマンスキルだ。ヒューマンスキルがシニアになってもemployabilityを維持する源泉だと私は考えている。

 

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致仕を迎える(1)

2020年05月22日 | うんちく・小ネタ

昨日70歳の誕生日を迎えた。

致仕は70歳の別称だ。中国の古典礼記によると70歳になると中国の官僚は退官を許されたので70歳のことを致仕というらしい。

70歳を指す言葉としては古稀という言い方もある。これは杜甫の曲江という詩の「酒債は尋常行く処に有り 人生七十古来稀なり」(酒のつけは人生至る所にあるが70歳まで生きる人は滅多にいない」という一節に由来する。

「70歳まで生きる人が滅多にいない」ということと「70歳まで退官を許されない」ことは矛盾するような気もするが、古来人間の活動寿命というものはそれほど変わっていないのかもしれない。

地球全体で見た時我々の平均寿命は近年大幅に伸び70歳程度になったそうだ。これは発展途上国の幼児死亡率が大幅に低下したことで平均寿命が延びたことによる。一方最大寿命は確かなところで122歳程度であまり伸びていないようだ。

現在政府は70歳まで働きたい人は働けるように制度を変えようとしている。それ自体は悪いことではない。古代中国の官僚の退職年齢は上記のように70歳だった訳だし、江戸時代の侍も70歳までは老衰隠居は認めらなかったことを考えると、働きたい人が70歳まで働くことができる社会を作ることは良いことである。

ただemployability(雇用される能力)ということを考えなければならない。現在は江戸時代に較べると技術進歩が激しい時代だ。情報通信技術は日進月歩し、1,2年前には革新的だったことがすぐ当たり前の世界になっている。Employabilityとして求められるものの水準は常に高くなる傾向にある。

そんな中何とか私もこの年まで仕事を行ってくることができた。仕事を続けるということは日々勉強を続けることであり、勉強を続けることは老化の最大の予防策であることを考えると誠に恵まれていたと思う。

これまでご支援頂いた方にお礼を申し上げたい。

そして別のブログでもう少しemployabilityについて論じてみたい。

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徒然草を読む(11)~あくせくして何になる?~

2020年05月20日 | 本と雑誌

コロナウイルス騒動のプラス面はラッシュ時に電車が空いていたことだ。

やがて東京でも非常事態宣言が解除され、少しずつ通勤者が増えてくるだろう。3密への警戒は持続するからいきなり以前のような過密列車には戻らないだろうが。

過密列車を恒久的に減らす方法は都心集中を止めることだ。会社を郊外に移転すればよい。それが3密を減らす抜本策だが、そこに踏み込める会社がどれだけあるか疑問だが・・・・

さて兼好法師は「蟻のごとく集まりて、東西に急ぎ、南北に走る。・・・夕べに寝(い)ねて、朝(あした)に起く。・・・身を養ひて何事か待つ。期(ご)するところ、ただ老(おい)と死とにあり」と喝破する。

兼好法師の眼はまるで現在の仕事人間を見ているようだ。

「蟻のように東西南北に走り回って、夜家に帰り朝起きてまた仕事にでる。そんなにあくせくして何を期待するのか?何も期待できない。待ち受けているのは老いと死のみである。生きることの意味を知ろうとしないものは死を恐れず、生きることの意味が分からないものは老いと死が迫ることを悲しみ恐れる。それは無常の原理をしらないからである」

無常の原理を体得することは難しい。それができるのは覚者だけだ。

だが満員電車に詰め込まれて会社を往復することがおかしなことだと感じることはできる。おかしなことは少しでも改めた方がよい。全部改めることはできなくても少しづつでも改めるべきだ。たとえば週のうち1日でも2日でもよいからテレワークに切り替えよう。社会全体がそのようになればかなり通勤ラッシュは緩和されるはずだ。

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特別定額給付金、振り込まれる

2020年05月20日 | デジタル・インターネット

今日(5月19日)特別定額給付金が振り込まれる。

市役所からの連絡ではなく、受取銀行からのメールで分かった(引落・振込についてメール連絡を受けるに設定している)。

給付金を申請して10日で給付された。市役所がホームページで「オンライン申請から10日ほどで振り込みます」と書いていたとおりの日程で処理された訳だ。

新聞には「オンライン申請しても市役所側で膨大な手作業があるので遅れるかもしれない」という記事があった。また今朝の新聞は「自民党がマイナンバーカードと預金口座の紐づけを義務化する提言案をまとめた」と報道していた。

実際のところ市役所が人海戦術で事務処理を行ったのか、あるいはもう少し自動処理化が進んでいて、オンライン申請→住民台帳との自動的照合→給付金データベースに処理の登録(二重払いを避けるため)→金融機関への送金指図がオンラインベースで流れたのかはわからない。

ただ「オンライン申請は簡単で給付金の振込も早かった」という結果を示せたことは良かったと思う。

これによりマイナンバーカードの利用が進むはずだ。マイナンバーカードの活用は確実に行政コストを削減し、我々の税金負担を軽減する。そのためならマイナンバー活用のメリットをいくらでも宣伝したいと思う。

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