オバマ大統領がこれまでの米国のキューバ政策の誤りを認め、国交を回復するという。良かった。
米ソがキューバをめぐって対立し、核戦争勃発寸前まで行ったことはさまざまな形で波紋を広げました。私にとっていちばん印象的なのは、スタンリー・キューブリック監督の『博士の異常な愛情』。現代文明の狂気は笑いのめすしかないことを教えてもらいました。
片岡義男さんの新著『歌謡曲が聴こえる』(新潮新書)の112ページに、片岡さんが広瀬正さんからテナーサックスを学んでいたことが書かれています。
広瀬さんはサックス奏者としてジャズバンドのリーダーをしていたので先生としては適任。しかし、なぜ片岡さんがサックスを?
その理由は、ピアノに挫折にして、その代わりの楽器としてサックスを選んだということだったはず。どこかで読んだばかりです。
もう一度確認しようとして同書のページをめくり直したのですが、当該の記述を見出すことができません。
「あれ? 確かに読んだのに」と不思議に思っていたところ、しばらくして出典がわかりました。
並行するようにして読んでいたウィリアム・ジンサー『イージー・トゥ・リメンバー』(国書刊行会)の解説が片岡さんで、そこに書かれていたのでした。
『イージー・トゥ・リメンバー』はアメリカの古いポピュラーソングの歴史をたどる本。巻末に、アメリカン・ポピュラー・ソングとの関わりを語る片岡さんのエッセイが載っています。その中に、楽譜を集めるうちにそれを自分で演奏できればと考え、まずピアノの先生についたが挫折。次に、テナーサックスの練習を始めたが、これも結局ダメだったということが書かれているのです。
ただし、こちらではサックスの先生が広瀬正さんだったことには触れていません。『歌謡曲が聴こえる』と併せ読んで、初めて、片岡さんが20代半ばから後半にかけて、まずピアノを、その次にサックスを学んだこと。サックスの先生が広瀬正さんだったことがわかるのです。
似た傾向の本をまとめて読むことを立体的読書とかいうようですが、私は、好きなステレオグラムに引っかけて「ステレオリーディング」といってみたいですね。こうすることで、初めて見えてくるものがある。
なお、当時、広瀬さんは豊田有恒さん、伊藤典夫さんらと「パロディ・ギャング」というライター集団を結成していて、片岡さんもそこに参加していました。その縁でサックスも教えてもらうことになったのでしょう。
パロデイー・ギャングの書いたものは、中学・高校生だった私のスケベ心や遊び心をくすぐった記憶があります。ちょっと悪いお兄さんたちが、「こんな面白いことがあるよ」と教えてくれる感じでした。