惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

生原稿

2006-03-10 21:19:41 | 本と雑誌
 〈文藝春秋〉4月号を購入。目当ては村上春樹さんの書かれた「ある編集者の生と死――安原顕氏のこと」。

 朝刊で村上さんの生原稿流出の記事を読んで、いったいどういうことなのか、詳しく知りたかったのです。俄かには信じがたい、あり得ないような出来事。

 村上さんのエッセイは、安原氏との付き合い(デビュー前にジャズ喫茶をやっていた頃からのことだという)を時間を追って記述し、最初、村上さんを絶対的に認めていた安原氏が、ある時から突然、態度を変え、敵視するようになったこと(理由はわからないらしい)などを綴っている。
 古書店やウェブのオークションに流出している生原稿は、当然、それ以前に渡したもの。安原氏が勤めていた中央公論社(当時――今は中央公論新社)では、作家の生原稿を倉庫に保管するようにしているという。ところが、村上さんによれば「一部の担当編集者がその(森下註:印刷所から戻ってきた)生原稿を社に戻さず、自宅に持ち帰って勝手に保管していたらしい」とのこと。安原氏はどうやら生前からそれらを古書店に売り渡していたようだ。

 生原稿は誰のものかという問題は、私自身、これまではっきりと意識したことはありませんでした。昔、原稿用紙を使っていた頃、編集者に渡した後でそれがどのようになっているのかを尋ねたこともありません。ただ、一部の出版社は後日、印刷所への指示の赤字が入ったものを包装して返却してくださり、「丁寧なところだなあ」と思ったりしたものです。
 今にして思えば、まるで権利意識のないバカなもの書きのようですが、「活字になった後の原稿は不用なゴミ」ぐらいに考えていたのです。実際、私の原稿はゴミとして処分されたと思います。

 しかし、著名な作家の生原稿となると事情は違います。価値ある文化財ですものね。
 それを書かせた編集者が、自分の宝物のように思って手元に置きたいと思うこともあるかもしれません。しかし、会社に所属して仕事をしている人は、職業倫理としてそれをしてはならないと心得ているはずです。

 勝手な想像ですが、安原氏は彼独自の理想の「文学」にのめりこむあまり、その倫理を超越してしまったのではないでしょうか。自分と「文学」は特別な関係を取り結んでいる。だから、自分が作った宝物は自分で持っていていいんだ、と。

 しかし、晩年になぜそれを売りさばいてしまったのか。
 「文学」に裏切られたからでしょうか。それとも彼の方から「文学」を裏切ろうとしたのでしょうか。
 いずれにせよ、いたたまれない話ではあります。


トーチカ

2006-03-09 20:11:48 | 日記・エッセイ・コラム

 ご近所で家を解体中。仕事場の窓から作業の様子がよく見えます。

 解体にとりかかったのは昨日。朝一番に屋根瓦を剥がし、その後、ユンボがやって来てメリメリと本体を壊し始めました。
 横付けにしたトラックに、柱や梁などを次々と積み込んで順調に作業が進行しているかに見えました。しかし、昨日いちにちでは終わらず、残りは今日に持ち越し。

 普通の木造住宅なら1日で解体してしまうのではないでしょうか。しかし、昨夕、見てみると、このお宅は内部に大量のコンクリートブロックを使っていて、かなり頑丈な造りのようなのです。
 で、今日は終わるのかと思いきや、夕刻になってもユンボは立ち去りません。作業終了後そっと見てみると、昨日見たブロックの奥にも、さらにブロックが積まれているようで、そのあたりはまだ手つかずといった状態なのです。かなり手を焼いているのではないでしょうか。

 それにしても、なぜこれほどまでに頑丈な住宅を造ったのでしょう。外から見た時だけでは思いもよらない強固な内部。まるでトーチカのような印象さえあります。
 家にはそれぞれ、人知れぬ個性があるのだなあと思い知らされました。


春宵

2006-03-08 20:39:36 | 日記・エッセイ・コラム
 ぽかぽかと暖かい。日中、仕事部屋の寒暖計は20度をうわまわっていました。

 夕方には、昨日遂行できなかったミッションをやりとげるため電器屋方面へ。
 日が落ちても温度はさほど下がらず、素肌をなぶってゆく風が心地いい。あちこちから梅の花が清冽な香りを漂わせてくれるのもいい感じです。何も考えずに歩いていると、至福の境地に達することができそう。

 今日はきちんとクーポン券を持参したので、無事、目的達成。プリンタのインクとDVDを入れる不織布のケースを買って帰りました。
 クーポン券と交換のお土産は梅の花の色をした小鉢。ちょっとした春先の料理に似合いそうです。しめしめ。


どじ

2006-03-07 20:17:05 | 日記・エッセイ・コラム
 電器屋さんからクーポン券が送られてきたので、買いものの時に使うつもりだったのです。しかし、電器屋で買うものがすぐにあるわけでもない。
 と思っていたら、プリンタが「黒色のインクが残り少ない」といいだしたので、「よし。インクを勝ってクーポン券を活用しよう」と、夕方、出かけました。

 その電器屋さんまでは片道4500歩。30分ほどかかります。
 到着して、インクと他の消耗品も買うつもりで手に取り、ショルダーバッグからクーポン券を出そうとして、気がつきました。券は自宅の机の上に出したまま、バッグに入れていなかったのです。
 「どうする?」
 自問自答して、インクなどを元の場所に戻しました。

 今日は買いものではなく、たんなる散歩だったことにしよう。買いものはまたの機会ということにしよう。

 いったんはそう思ったものの、何となくしゃくなので、さらに足を伸ばしてお酒のディスカウントストアに寄り、日本酒を買って帰りました。万歩計は1万歩を大幅に超えていました。一升瓶が重かった。


春風

2006-03-06 20:43:14 | 園芸
 強い風が吹いて暖かい。春一番でした。

 昨日に続いて鉢ものの植え替え。松、楓、棕櫚、山椒、花梨、なんだかわからない木などあれこれ。
 やっているうちにだんだん疲れてきて、最後の方はおざなりになってしまった。ごめんね。

 鉢ものの植え替えだけでなく、ホームセンターから買ってきたツバキも地植えしました。「春風(しゅんぷう)」という品種。今日、植えるにはもってこいのツバキだったかもしれません。
 まだ50センチ足らずの苗なので、大きくなるには時間がかかりそう。それまでじれったいけど、でも、楽しみです。

 その横にオカメナンテンも鉢から下ろしました。水はけの悪い鉢だったので、根が窒息しそうになり、木全体が弱っていたのです。元気になって立派に葉を繁らせて欲しい。