金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

女性に優しい社会が強い

2006年04月20日 | 社会・経済

エコノミスト誌が「女性経済へのガイド」という記事を載せていた。女性経済という言葉はエコノミスト誌のWomenomicsを直訳したものだ。Womenomicsはエコノミスト誌の造語だろうと思ったが(当然辞書には出ていない)、英語の検索エンジン(ヤフー)で検索してみるとなんと約10万件のサイトがあることが分かった。一方日本語の検索エンジンで「ウーマノミックス」と検索してみるとたった1件のサイトしかなかった。「女性経済」で検索してみるとこちらは約500件のサイトがあった。しかし10万件対5百件、なんとも日本人の女性経済に対する関心は低いものだ。

エコノミスト誌の記事はA4版4枚にわたる少し長いものなのでポイントだけ紹介しよう。

  • 先進国では今や女性の方が、学校の成績が良く、大部分の国では大学卒業者の中で女性が占める割合が高い。(米国では男子100人の卒業生に対して女子140人、スウェーデンでは100:150、日本は100:90である) 議論のあるところだが、女性は最もパワフルな世界の成長エンジンである。
  • 1920年頃の米国の従業員構成は男性8割、女性2割であったが、2005年にはほぼ拮抗するところまで女性の比率が高まっている。先進国で女性の就業者が増えた理由は、伝統的に男性の仕事であった2次産業の仕事が減り、サービス産業の仕事が増えたことにある。
  • 発展途上国でもまたより多くの女性が就業している。東アジアの新興国では、男性労働者100人に対して83人の女性が就業しているが、これはOECDの平均より高い。
  • 勿論「女性が就業する」という言い方は誤解を招く。正規に雇われることに加えて、女性は家事に従事している。ただしこれは正式な統計には含まれない。自動織機洗い機や洗濯機等の普及で家事に費やす時間は減少している。とはいえ大部分の働いている女性は家庭の雑用(原語はchire、退屈な仕事という意味もある)に責任を持っている。先進国の経済で、女性は公表されているGDPの4割弱を産出しているが、家事の価値を計算する(ホームヘルパーの賃金等を使って)し加えると女性の貢献度は国民生産の半分を少し超える。
  • GDP成長の源泉は3つある。「雇用を拡大すること」「従業員一人当たりの投下資本を 増やすこと」「新しい技術により労働と資本の生産性をあげる」ことである。1970年以降女性は男性が1名雇用される時2人雇用されるペースで雇用を伸ばしてきた。女性を採用することは、雇用が増えるだけではなく、資本投資と生産性向上の点でもGDP成長に効果があることが示唆されている。過去10年程で先進国における女性の雇用拡大が世界の経済成長に貢献した度合いは、中国経済の貢献よりも大きい。
  • 女性は世界的な市場において従業員としてだけではなく、消費者、起業家、管理者そして投資家として重要になりつつある。幾つかの調査が示唆するところでは、女性はヘルスケアから家や食品にいたる商品・サービスの購入に関して恐らく8割の決定権を持っている。
  • ゴールドマン・サックス東京のチーフストラテジスト・キャシー松井氏は女性の就業者増加で利益を受けると考えられる115社を選択してバスケット化した。このバスケットは金融サービスや、オンライン小売業、美容院、衣料品、レトルト食品のような業種を含んでいる。過去10年間に東京の株式市場は13%の上昇に過ぎなかったがこのバスケット内の株価は96%上昇した。
  • 労働力に占める女性のシェアには限りがある。米国では既にそれは減速している。しかし女性の持つ能力をより良く活用するならば、女性にとって生産性を高める余地は沢山ある。これからより高い教育を受けた女性がより高いポジションで仕事をするだろう。今のところ女性の給料が男性の給料より低い主な理由は、同じ仕事をして女性の給料が低いのではなく、女性が組織の階段を登らない傾向があるからだ。または女性が看護や教育という給料の低い仕事を選択するからである。しかしこのパターンは変わる可能性が高い。
  • 女性の技術をより活用するというのは、単に公平の問題ではない。多くの研究がそれがビジネスに有効なことを示唆している。女性は世界の会社の取締役の7%を占めるに過ぎない。アメリカでは15%で、日本では1%以下だが。コンサルタントのカタリスト社によれば、米国企業で女性の幹部職員が多い会社は、少ない会社より資本収益率が高い。これは恐らく男女混成のチームの方が単一の性によるチームよりも、問題解決や外部の問題発見に優れているからである。
  • 更に男性にとって悪く感じさせることは、調査結果では女性の方が男性より優れた投資家であることが分かった。メリルリンチがアメリカの投資家について何故女性が投資において優れているかを調査したところ、女性は男性よりじっくり構えて投資対象をかき回さないのである。男性は一つの危険なアイデアにコミットし過ぎる傾向がある。自信過剰と過剰な売買は投資結果を悪くする元である。
  • 女性は世界で最も活用されていない資源だろう。アメリカでは65%の女性が働いているが、日本では57%の女性しか就職していない。女性がより多く労働市場に参入する様になれば、高齢化と人口減少を相殺する助けとなる。ゴールドマンのキャシー松井氏は日本の女性の就業率がアメリカ並に上昇すれば、向こう20年にわたって、GDP成長率を0.3%押し上げると推定する。
  • 昨年の世界経済フォーラムの研究で男女間の平等さ(経済的参加度合い、教育、健康、政治的権利で測定)と一人当たりGDPの間に明確な相関関係があることが発見された。
  • 女性の就業者が増えると少子化が起こり、低成長につながるという議論が時折あるが、事実は逆のことを示している。スウェーデンのように女性の就業率が高い国では、日本やドイツ、イタリアより妊娠率が高い。事実女性の就業率が低い幾つかの国で最も大きな妊娠率の低下が起きている。
  • 女性の高い就業率が正しい政策でサポートされているのであれば、妊娠率を低下させる必要はないと思われる。女性の能力の国家的なプールを活用するために、政府は女性にとって仕事と子供を持つことの両立妨げている障害物を取り除く必要がある。
  • ドイツ、日本、イタリアのように専業主婦が多い国では、働く母親に対するサポートが少ない。これはより少ない女性しか職に就いたり、職を求めたりしないことを意味するが、同時に妊娠時期を遅らせるので、出生率の低下を意味している。

この小論文は中々理路整然としている。恐らくかなり評判になる記事ではないだろうか?私も女性が働きたいと思う限り、働きやすい社会を作るべきだと考えている。その理由は外に出ることが、世界を広げることと、お金を稼ぐということが女性に力をつけるからである。

ワイフは娘達が大学に入った頃から、アルバイトを続けているが、結構仲間のおばさんたちとわいわい言いながら仕事をするのが楽しい様だ。今私と二人の娘が働きに出ると、家にいても余りすることがないはずである。(高尚な趣味でもあれば別だが)従って働くことは、社会とのつながりを持つ良い機会なのだ。

お金を稼ぐことで、ワイフの発言力や行動力も高まっている。(私は別にお金の力でワイフをコントロールする積りなどないのだが) 最近は自分一人でお芝居等を見に行く様になってきた。これも良いことだと思う。経済力はプライドの一つの源泉なのだから、経済力があるに越したことはない。

私の二人の娘達のためにも(私は息子はいない)、より女性にとって働きやすい社会を作るべく、努力を続けたいものである。

コメント
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