金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

「天台の国宝」を観る(2) 兜跋毘沙門天

2006年04月10日 | アート・文化

天台の国宝の仏像は皆素晴らしいが特に私が関心があったのは、毘沙門天である。もっと細かくいうと毘沙門天の中でも大地の女神「地天」に支えられた兜跋毘沙門天である。

Bishamon 写真は京都・青蓮院の兜跋毘沙門天立像(重要文化財)である。

では何故毘沙門天に関心があるのか?それは毘沙門天の由来がインドを越えてはるかギリシアまでつながるからである。毘沙門天はギリシアのヘルメス神と北インドの財宝を守るファロー神が融合したものという話は2年程前に国立博物館でやっていた「アレクサンドロス大王と東西文明の交流展」で勉強したところだ。

又この兜跋(トバツ)という言葉についてはベルナール・フランク「日本仏教曼荼羅」(藤原書店)の中で次の様に説明されている。「著名なチベット学者ロルフ・スタンによれば恐らくトルコ語のTubbatの音声表記であろうという。Tubbatとはトルコ語でトルキスタン特にシルクロードの重要な地点の一つであったコータン国とその首都をさす言葉であった。」

毘沙門天は本来北方を護る軍神であり、四天王の一員であったが、他の四天王とは異なり独立尊として信仰の対象となったのである。

中世を通じて仏教信仰が民衆の中に浸透していくに従い財の神、幸運の神としての性質が毘沙門天の中で重要性を増して行き、毘沙門天は江戸時代に完成する七福神の一員になって行くのである。

毘沙門天の像の中にはユーラシア大陸にまたがる壮大なロマンがある。

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tenndai

2006年04月10日 | アート・文化
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移民により国内労働者の賃金は下がるか?

2006年04月10日 | 社会・経済

先日米国に住む日本人の友達からメールが来た。メールによれば彼女は現在英会話学校に通っているそうだが、そこで移民の問題が議論になったとのこと。英会話学校だから移住者や滞在者が多いのは当たり前で相当な議論だったらしい。移民の問題については人口減少が問題になりつつある日本にとっても今後議論になるだろう。そんな時エコノミスト誌で米国の移民の問題を取上げた記事を目にしたのでポイントを紹介しよう。

記事の題はMyths and migration( 誤った信念と移住)で副題が移民は本当に米国労働者の賃金に害を与えるのか?である。結論からいうと色々な研究の結果は移民による賃金引下げ効果は低いということなのだが、かかる問題を実証的に研究するところにアメリカの懐の深さを見る思いがする。

さてエコノミスト誌の記事のポイント

  • 大部分は移民とその子孫で構成される米国で「入国を希望する人の洪水をせき止めるべきか否か、あるいは如何にしてそれを行なうか」という政治的な騒ぎが起きている。下院は不法労働者に対する移民政策といった宥和策とともにメキシコ国境に壁を設けることや不法移民の取り締まりといった強攻策を検討している。
  • 「移民が米国人の給料、特に高校中退者の賃金を引き下げている」という一般的な議論があるが、それはしばしば誇張されている。過去25年間米国人の収入はより不平等に配分されるようになってきた。最も未熟練な労働者の実質賃金は下落しており、移民に少なくともその責任の一端があるという議論はもっともらしく見える。2000年の国勢調査によれば、移民は米国労働者の13%を占め、その28%は高校教育を受けていない。またその内半分以上の就学年数は8年以下である。
  • 実際のところ理論的にも移民と賃金の関係は明確ではない。それは賃金は労働力の供給とともに資本の供給にも依存するからである。移民の殺到は労働者の供給を起こし、その結果賃金が下落する。しかし賃金の下落は雇用者側に新しい工場を作ること等による潜在的なリターンを増加させる。その結果新たな労働力への需要が発生する。従って全体として賃金に与える影響は、移民が労働生産性を変えない限り、良い方向であるといえる。
  • しかしながら、なお移民が異なったタイプの職業の相対的な賃金を変える可能性はある。低スキルの労働者の大量流入は低スキルの内国民の相対的な賃金を低下させるかもしれない。一方移民が補完的なスキルを持っている場合、内国民の賃金は相対的に良くなるかもしれない。移民の賃金に与える影響を測定するには、資本の調整~労働力増加を吸収し新しい生産設備を作る~がどれ程素早くなされるか、そしてどの位移民が内国民を代替するかを知る必要がある。
  • 経験的な証拠も理論と同様決定的ではない。一つの方法はロス・アンゼルスの様に移民が多い都市とインディアナポリスの様に移民が少ない都市の賃金傾向を比較することである。カリフォルニア大学のデビッド・カード氏はこの方法の主導的な提唱者である。同氏の調査が示唆するところは都市間に移民比率の大きな違いがあっても、非熟練労働者の賃金に顕著な影響を与えていない。もっとも総ての人が同氏の分析手法に納得している訳ではない。批判者の議論は移民の地理的分布はランダムではないというものだ。恐らく低スキルの内国民は移民と職を争うよりその都市を去るのだろう。
  • 一つの代替的なアプローチはハーバード大学のボージャス氏の取ったアプローチで、国に賃金統計から移民の影響を抽出したものである。同氏は人々を教育と職業経験から複数のカテゴリーに分けた。同氏は異なったタイプの人々は容易に代替しないが、同じカテゴリー内にいる移民と内国民は容易に代替すると仮定する。同氏は移民が多いカテゴリーと移民が数少ないカテゴリーの賃金トレンドを比較して移民の影響を推測する。その主な結論は1980年から2000年の間に移民は、それがなかった場合に較べて全体で3%賃金を引き下げた。また高校中退クラスについて賃金を8%引き下げた。
  • 従って移民に対する批判者はボージャス氏を同盟者に数える。しかしちょっと待て。この数字は追加的な投資による相殺を考慮していない。もし資本財が調整されるとするならば、同氏は全体としての賃金は影響を受けず、高校中退クラスの賃金低下は5%以下になると報告する。
  • ボログナ大学のオッタビアーノ氏等はボージャス氏の数字は更に調整されるべきだと議論する。彼等は同じスキルのカテゴリーの中でも移民と内国民は完全には代替せず、最終的に二つのグループは異なった職に就くと考える。メキシコ人は庭師、家事労働者や建設労働者として職を見つけ、内国民の低スキル労働者は伐採の様な仕事を占める。これを考慮すれば1980年から2000年の間で移民が米国の高校中退クラスの賃金を最大でも0.4%引き下げたに過ぎないと彼等は主張する。
  • いずれの研究も決定的ではないが、彼等の示唆するところを考慮すれば移民は長期的には米国の最もスキルの低い層に極僅かなネガティブな影響を与えるに過ぎないし、それも議論の余地があるところだ。もし議会が賃金の不公平さを減らすことを望むなら、国境に壁を作ることは悪い方法である。

私はここで紹介されている研究を見ていないのでその方法論の正しさ等についてコメントすることは出来ない。しかし、繰り返しになるがアメリカの社会学者達が移民という目の前の問題に科学的アプローチを取ってアメリカ国民の賃金に与える影響を測定しようとしていることにはある種の感銘を受ける。社会科学とはこの様に目の前の問題に具体的な評価を下すことを指向しなければならない。日本で移民問題が持ち上がる時、感情論を超えた議論が出来るものだろうか?

アメリカは懐の深い国であると思う次第である。

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