金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

米国の住宅市場が低迷する本当の理由

2008年01月20日 | 国際・政治

米国の住宅市場が低迷している。多くのマスコミはその理由をサブプライムローンの破綻に主な原因を求めているが、正鵠を得ていない可能性がある。本当の理由はベビーブーマーの高齢化により、住宅の売り手が買い手を上回り需給が長期的に悪化した結果、住宅価格の下落が始まり、サブプライムローン問題が拡大したという側面がある。

エコノミスト誌はサザンカリフォルニア大学のMyer氏とRyu氏の研究を紹介して「米国は一世代続いた住宅バブルの終わりに備えるべきである」と警告を発している。同レポートによると78百万人のベビーブーマーが退職するので住宅市場は劇的に変化すると主張している。

30年間にわたってベビーブーマー世代は住宅価格を押し上げてきた。彼等は結婚し身を固めるとより大きな家とセカンドハウスを購入した。しかし彼等の第一陣が2011年に65歳を迎えるとこの流れは変わるだろう。

退職世代と現役世代の比率は向こう20年間で67%拡大するので、若い世代は退職世代が売りに出す住宅を総て買うことが出来るのか?ということが問題だ。レポートの著者のNter氏は売り圧力が延々と続く買い手市場になると示唆している。価格が下がることを認識した若年層は買い控えるので、益々住宅価格が下落する可能性がある。

米国の地域毎に影響の出方は異なっている。退職者が多く住んでいるフロリダやアリゾナでは、老齢者は79代までネットベースで住宅の売り手にならないので、影響の出方は遅い。しかし中西部の斜陽地域では売り手と買い手のミスマッチは最も深刻な問題になっている。

住宅業界として、米国政府としてこの問題にどう対処していくべきかということは大きな課題だろう。例えば2000年から2006年の住宅取得者の成長の内4割は移民である。今私は統計的なデータを持ち合わせていないが、移民等信用履歴の乏しい人がサブプライムローンを利用して住宅を取得したことは容易に想像できる。しかし今これらの人が住宅融資の道を閉ざされたとなると、ベビーブーマーが売りに出す住宅の買い手が不足するという難問が立ちふさがる。

今米国で必要な政策はベビーブーマーが売りに出す住宅の買い手に住宅取得に関する強いインセンティブを与えることかもしれない。エコノミスト誌はそこまで踏み込んでいないが、私はそのような気がしている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする