昨日のFTにカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)が米国のプライベート・エクイティ・ファンドの持分9.9%を買うというニュースが出ていた。
これは逆張りの一種である。昨年1月に米国ではブラックストーンがプライベートエクイティとして始めて上場 した時、私はブログで「プロ中のプロのブラックストーンが、彼等の持分を売りに出したということは 今が天井と見たからだ」と述べた。事実IPO時35ドル強だったブックストーンの株価は一年後の今半値近い 18ドルだ。
昨年来サブプライム問題に起因する信用収縮で、銀行がファンドへの融資を抑制している。このため企業買収やIPOが停滞しているのだ。だがカルパースはこのところプライベート・エクイティ・ファンドへの資産配分比率を8%から10%へ引き上げている。何故引き上げているのか?というと今がプライベートエクイティファンドの底値(に近い)と見ているからだ。
更に上場株式ではなくプライベートエクイティ投資を増やすという理由は、カルパースが公開企業の株式より未公開企業の
株式の方が妙味があると見ているからだ。
株式の個人投資家に警鐘を鳴らした本で「なぜ株式投資はもうからないのか」(保田 隆明著 ソフトバンク新書)という本
がある。年末にブックオフに手持ちの本を売りに行った時、眼に留まったので350円で買ってみた。その中にこのような記述がある。「プライベートエクイティの連中に言わせると、上場株式を売買するという行為はそもその値段がたかくなってしまっているものを売買しているだけであり、そんなものよりも未公開企業の株式のほうがおいしいということになる」「しかし残念なことに、プライベートエクイティには我々一般投資家はほとんど出資できない。プロの投資家は自分たちの運用資金の一部をそういうファンドに出資しているのに、である」
正確にいうと個人でもプライベートエクイティに出資する方法はある。それは上場したプライベートエクイティ(ブラックストーンなど)の株式を買えばよいのだ。ところがプライベートエクイティファンドの創業者たちは最高値時にIPOを行うので、新発株を買うと高値つかみになるだろう。
年金基金はプライベートエクイティに出資するからといって基金のポートフォリオ全体ではそれ程高いリターンを求めている訳ではない。
ミリマン社の調査によると日米の年金基金の年度別期待運用収益は次のようなものだ。2004年日2.17%、米8.37%、2005年日2.21%、米8.23%、2006年日2.37%、米8.15%日本の場合10年国債利回りプラス1%未満の期待収益なのだ。話は横道にそれるけれど、個人投資家の期待収益はもっと高いはずだ。過去の長期間にわたる日本株の投資利回りは5%から10%程度である(どこからどこまでを取るかで大きく変わる)が、一般にもっと高い利回りを狙っているのではないだろうか(私を含めて)?
この結果個人は高いリスクを取り(例えば分散投資ではなく個別銘柄に張り過ぎて)過ぎて損失を被るのである。
それはさておきカルパースがプライベートエクイティへの資産配分を高めたことは個人投資家も頭にいれておいて良いだろう。
上場されているブラックストーン株も買い検討に値するかもしれない。