米国の株安からアジア新興市場の株式相場にも暗雲が広がっている。MSCIエマージング・アジア・インデックスは昨年10月から25%下落した。少し前まで投資家はアジアの株式市場は「米国から分離されている(デカップリング)」という理論を信奉していたが、デカップリング理論も腰砕けしたかのように見える。
ただエコノミスト誌は「アジアの株式市場が欧米の株式市場から分離されていないことは、必ずしもアジア経済が米国の景気後退の影響をもろに受けることを意味しない」と述べている。
その論拠は中国はGDPの8%だけを米国向け輸出に頼っているに過ぎないし、インドになると僅かに2%である。もっとも香港、シンガポール、マレーシアの米国依存度は2割を越えている。
エコノミスト誌は2001年に米国がリセッションに入った時は、アジア諸国の米国依存度が高くかつ借入過剰、設備過剰という問題があったが、今日はもっと健全性が高まっているので米国の景気後退がアジア経済に与える影響度合いは小さいだろうという。
スタンダード・チャータード社はアジア新興経済は2007年の経済成長率7.8%から今年は6.4%にスローダウンすると予測している。つまり経済成長は1.4%減速するという見通しだ。2001年にはアジア新興経済の成長率は3%下落して4.2%になったので、それに比べると影響は軽いということである。
実体経済に与える影響はそれ程大きくないとはいえ、成長率(長期的な成長率を意味するが)が1%下落すると計算上は株価は1割下落する。アジア株が売られ過ぎかどうか冷静に考える必要が出てきた。