金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ノックインか?ノッキングか?

2008年04月16日 | 株式

最新号の週間ダイヤモンドに「リスク限定型投信を購入した個人投資家が思わぬ損をしている」という記事があった。広告だけで中身は見ていないがこれは「リスク限定型投信」という投信を購入した個人が思わぬ日本株の下落で損をしているという話である。リスク限定型投信というのは、投信の購入者がノックインKnock inオプションという日本株のプットオプションを売却し、そのプレミアムを金利の形で受け取るという商品だ。こんな説明をすると「頭が痛い。面白くない」という声が聞こえそうだが、私は難しい話をするつもりはなく「リスクのない投資話なんてないですよ。それに経験の少ない個人投資家にとってオプションを売るような商品には落とし穴がありますよ」ということを伝えたいのである。オプションを売るというと又難しく聞こえるが「保険を引き受ける」と考えても良い。リスク限定型投信に話を戻して、どういう商品設計かというと「2,3年という一定期間日経平均が30%等一定範囲以上下落しない限り、元本は100%償還される上4%程度の高い配当を受け取ることができる。しかし一定期間内に当初定めた範囲を超えて株価が下落した場合は、元本の保証はなくなり日経平均株価に連動して償還される」というものだ。

1986年から現在までの日経平均株価の騰落状況についてインターネット上の百科事典ウイキペディアから表を取り込み、データを分析してみた。ある年の年初の株価とその後3年間の日経平均の最安値を比較してみたところ、日経平均が3割以上下落しているケースが10回あった(全体は23回)。また平均の下落率は26.3%だった。一番大きく下落したのはバブルが崩壊した90年から92年の3年で日経平均は63%下落している。以上のようなことから日経平均が3割以上下落することはそれ程まれなことではないことが分かる。

次の期待値的な考え方から、リスク限定型投信のリターンを考えて見よう。期待値とは将来のリターンを確率的に計算する方法である。

次のように前提を置いてみよう。「リスク限定型投信を購入してから3年以内に一度は3割の確率で日経平均は3割を超える下落をする。日経平均株価は償還日にリスク限定型投信を購入した時の日経平均株価の75%になっている。7割の確率で元本が確保され、この場合4%の利息がもらえる。」

このシナリオのリターンは次のとおりだ。

4×3年×70%=8.4 ①  -25×30%=-7.5 ② 従ってこの投信のリターンは①+②の0.9になる。年平均では0.3%のリターンだ。

無論のこの計算の前提は株価が下落する確率や3年後の株価の水準を仮定の上で行っている。もっと多くのデータを駆使してもっともらしい計算をすることは可能だが、それは過去の話で将来の確率については一人一人の投資家が自分のシナリオを持つ他はない。それが自己責任というものである。

もし私の前提が妥当なものとするならば、リスク限定投信のリターンは確率的には銀行預金と余り差がないものになる。繰り返しになるが、これは上記の前提で計算した結果であり、違う前提を置くと当然違う結果がでることにご留意頂きたい。ただリスク判断の一助となれば幸いと考えて、私見を披露した次第である。

最後に駄洒落の世界だが、ノックインオプションがノッキング(自動車のエンジンががたつくこと)オプションになることもあるというとこにご注意を。

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