先週ドバイ・ワールドが債務返済猶予を求めた時、情報不足から市場は一時的にパニックに陥ったが今週に入って落ち着きを取り戻している。ファイナンシャルタイムズはスタンダード・チャータードのチーフ・エコノミストLyons氏の「先週は一時的に地域全域または世界的な問題だろうと見えたが、今は一地方の問題のように見える」という言葉を紹介している。
くよくよする人は1997-98年のアジア危機との共通性を指摘することができるが、ドバイの負債規模とユニークさを見るとドバイに直接的なエクスポージャーを持つ先では影響は出ているものの危機の伝播については落ち着いているとFTは報じる。
負債規模について見ると97年のアジア通貨危機の時の韓国の対外負債は1520億ドルでドバイ・ワールドの負債は590億ドルだ。10数年前と現在の世界の金融市場の規模の差を考えるとドバイ・ワールド問題の影響度合いは大きくないと判断されるとFTは見ている。
ドバイ・ワールドの債務問題が片付くかどうかは、ドバイが保有する資産の処分とアラブ首長国連邦の支援次第だ。チープ・クレジットの時代にドバイ・ワールドは世界の色々な資産を買いあさっている。著名なのは英国の港湾オペレーターをシンガポールのPSAと競り合い、64億ドルで落札したディールだ。ニューヨーク・タイムズは「シンガポールのPSAは港湾オペレーターに興味を示すだろうが、購入価格は足元を見たものになるだろう」と予測している。
ドバイ・ワールドは2年前にバーニーズ・ユーヨークを9.4億ドルで購入している。またラスベガスの住居・カジノ案件にも85億ドルを投じている。この不動産が売りに出された場合、市場にネガティブな影響がでるのか、それとも底値買いを狙うファンドの連中を喜ばして終わりになるのかどうか判断する材料を私は持ち合わせていない。
ドバイのもう一つのお宝はエミレーツ航空だ。エミレーツ航空はドバイの兄貴分のアブ・ダビが保有するエティハド航空と並ぶアラブ首長国連邦の航空会社だ。石油資源の豊富なアブ・ダビはドバイ支援の見返りにエミレーツ航空の株(一部にせよ)を要求しているという噂がある。こちらの方は兄弟間のやり取りなので外部への影響はないだろうが。
以上のように見てくると確かにドバイ・ワールド問題は地域限定の問題として片付くように見える。だがチープ・クレジットの落とし子であるドバイ・ワールドの仲間は他にいないのだろうか?もし次の仲間が出てきたら市場は一気に弱気になるのではないか?という懸念を私は多少持っている。