金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ドバイ・ワールド危機の影響程度

2009年12月02日 | 金融

先週ドバイ・ワールドが債務返済猶予を求めた時、情報不足から市場は一時的にパニックに陥ったが今週に入って落ち着きを取り戻している。ファイナンシャルタイムズはスタンダード・チャータードのチーフ・エコノミストLyons氏の「先週は一時的に地域全域または世界的な問題だろうと見えたが、今は一地方の問題のように見える」という言葉を紹介している。

くよくよする人は1997-98年のアジア危機との共通性を指摘することができるが、ドバイの負債規模とユニークさを見るとドバイに直接的なエクスポージャーを持つ先では影響は出ているものの危機の伝播については落ち着いているとFTは報じる。

負債規模について見ると97年のアジア通貨危機の時の韓国の対外負債は1520億ドルでドバイ・ワールドの負債は590億ドルだ。10数年前と現在の世界の金融市場の規模の差を考えるとドバイ・ワールド問題の影響度合いは大きくないと判断されるとFTは見ている。

ドバイ・ワールドの債務問題が片付くかどうかは、ドバイが保有する資産の処分とアラブ首長国連邦の支援次第だ。チープ・クレジットの時代にドバイ・ワールドは世界の色々な資産を買いあさっている。著名なのは英国の港湾オペレーターをシンガポールのPSAと競り合い、64億ドルで落札したディールだ。ニューヨーク・タイムズは「シンガポールのPSAは港湾オペレーターに興味を示すだろうが、購入価格は足元を見たものになるだろう」と予測している。

ドバイ・ワールドは2年前にバーニーズ・ユーヨークを9.4億ドルで購入している。またラスベガスの住居・カジノ案件にも85億ドルを投じている。この不動産が売りに出された場合、市場にネガティブな影響がでるのか、それとも底値買いを狙うファンドの連中を喜ばして終わりになるのかどうか判断する材料を私は持ち合わせていない。

ドバイのもう一つのお宝はエミレーツ航空だ。エミレーツ航空はドバイの兄貴分のアブ・ダビが保有するエティハド航空と並ぶアラブ首長国連邦の航空会社だ。石油資源の豊富なアブ・ダビはドバイ支援の見返りにエミレーツ航空の株(一部にせよ)を要求しているという噂がある。こちらの方は兄弟間のやり取りなので外部への影響はないだろうが。

以上のように見てくると確かにドバイ・ワールド問題は地域限定の問題として片付くように見える。だがチープ・クレジットの落とし子であるドバイ・ワールドの仲間は他にいないのだろうか?もし次の仲間が出てきたら市場は一気に弱気になるのではないか?という懸念を私は多少持っている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日光の山旅の基地・アストリアホテル

2009年12月02日 | 旅行記

11月最後の週末は日光の二つの日本百名山を登りに行った。二つの百名山とは日光白根山(2578m)と男体山(2486m)だ。二つの登山のことは別の記事に書いたので、今日は登山のベースとした日光アストリアホテルの話をしよう。日光アストリアホテルは戦場ヶ原の東、光徳牧場の向かいにある。ホームページはこちら http://www.tobuhotel.co.jp/nikkoastraea/

Astraea

日光地区にある二つの日本百名山を登る上で登山基地として私がアストリアホテルをお勧めする理由は次の点だ。

・二つの山の中間点にありアプローチが良い。男体山の登山ルートは中禅寺湖側の二荒山神社から登るルートと北側の裏男体林道経由で志津乗越から登るルートがある。この志津ルートから男体山を往復する場合、アストリアホテルは格好のベースとなる我々も土曜日に志津ルートから男体山を往復した(車で15分程度)。日光白根山については幾つかの登山ルートがあるが我々は金精トンネル北側の菅沼から往復した。菅沼までアストリアホテルから車で20分程度である。

・温泉が良い。山で汗をかいた後の温泉ほど気持ちが良いものは少ない。アストリアホテルの温泉の源泉は湯元。60度を超える源泉は適温にするため加水されているが、硫黄の香りが高くいかにも温泉という感じの温泉だ。露天風呂もあり疲れた筋肉をゆっくり休めるにはもってこいの温泉である。

・サービス・料金のバランスが良い。我々は3人一部屋夕食あり・朝食は早立ちのためオニギリとした。これで1人1万円(宿泊料はシーズンや部屋によって異なるのでホテルにご確認下さい)。料理では山女の揚げ物が美味しかった。

アストリアホテルには数年前真冬に泊まって、ホテルの回りや戦場ヶ原でクロスカントリースキーとスノーシュー散策を楽しんだことがある。このホテルは四季を通じたアウトドアスポーツの拠点である。

支配人の吉原さんにお伺いしたところ「ウインターシーズンでも週末は満員になることがありますよ」というお話だった。この冬もここでクロスカントリースキーを楽しみたいと考えているので、このブログを見られた方でホテルが混雑するのは不本意(冗談です)だが、気に入っているホテルなので、二つの百名山登頂の機会に紹介した次第である。

なお今後アストリアホテルさんに希望することはマウンテンバイクの利用者を誘致することを考えてはいかが?ということである。ホテルでマウンテンバイクを貸してくれると登山の範囲が一層広がると私は考えている。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エコノミスト誌、日銀の「量的緩和」を酷評

2009年12月02日 | 金融

昨日(12月1日)日銀が発表した追加的金融緩和策についてエコノミスト誌は酷評を下している。「10兆円の資金供給枠というのはGDPのたった2%であり、アナリスト達はデフレ懸念を緩和する上でも、本気で円を安くする上でも不十分である」

「金融コンサルタントのGaveKalによると、リーマンショック以降日本のマネタリーベースは僅かに年率4.7%しか増加していないが、米国のマネタリー・ベースは71%増加している」

そうである。このマネタリーベースの違い、つまり米ドルが市場に溢れていることがドル安の原因であり円が相対的に少ないことが円高の大きな要因である。とすればマネタリーベースを拡大するのが円高抑止策である。

エコノミスト誌はマッコリー証券のチーフ・エコノミストJerram氏の言葉を引用して日銀の不熱心な対応を批判する。曰く「量的緩和策の量の少なさと白川総裁の談話に失望した」

何故市場が白川総裁の談話に失望したかというと「今回の量的緩和が日銀の確固たる確信の結果ではなく、鳩山政権の要求に対するご機嫌取り」と判断されたからだ。

なお最後にエコノミスト誌は「12月1日の日銀の努力が十分意味のあるものでないと市場が判断すると円は再び上昇するだろう。だが今や日銀と日本政府は円高によるデフレリスクに用心深くなっているので、次回はもっと協調したアクションをとるだろう」と期待をにじませている。

世界でもっとも信頼のおける経済誌が積極的に円安政策を取れと言っていることは、欧米の政府・中央銀行も日本の本格的なデフレ防止策としての円高阻止を是認しているということだと私は感じている。勿論この判断に基いて今が円のピークと見てショートポジションを取るかどうかは読者諸氏のご判断に委ねるしかありませんが。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする