「おとなになったら、したいこと」というのは、JR東日本の「おとなの休日倶楽部」の宣伝文句である。吉永小百合さんのポスターにでているキャッチコピーである。「おとなの休日倶楽部」は50歳以上の男女をミドル、65歳以上の男性および60歳以上の女性を「ジパング」会員として、乗車券等を優遇する仕組みだから、「おとな」とは還暦前後を指すことになる。
「還暦になってしたいこと」というと、7,8年前に出版された「ローカル線おいしい旅」(講談社現代新書)の冒頭で、著者の嵐山光三郎さんが還暦をむかえた月夜の晩に書き出してみたと10個のやりたいことをあげていた。
①寝台列車の旅②駅弁再調査③日本の奇祭めぐり④港町の酒場で酔って女にもたれかかる⑤神社お参り⑥海峡見学⑦不良婦人発見⑧ローカル温泉⑨ご利益のある散歩⑩胃がほくそ笑む料理・・・・である。
嵐山さんは「寝台列車に乗って、ガッタンゴットンと余生をすごし、不良ジジイの見本になる」と続けている。
少し時間があったので嵐山さんに習って「おとなになったら、したいこと」をピックアップしてみた(嵐山さん風の切り口に揃えてみた)。
①旬(しゅん)の山旅②山の合間の地元料理や蕎麦③神社などパワースポット参り④山の合間の温泉入浴⑤ワイフとの国内外旅行⑥スポーツジム・サイクリング⑦酒の肴作り⑧原資料からの歴史探訪⑨対等目線の女性との飲み会⑩流水見学
僕の場合、軸は旬つまり季節季節で一番美味しいところを目指した山登りになっている。花の美しい山は花の季節に、山スキーが楽しめる山は雪の季節にである。
山あいには地元料理・蕎麦があり、山里や山の頂上には神社がある。また大抵の麓には温泉がある。また山には沢や滝がある。だから①~④と⑩はほぼワンセットだ。山に登るには体力作りが必要だから⑥もセット。また家を空けすぎるとワイフから不満が出るのでワイフとの旅行も表裏の関係にある。⑦は主に冬場の燻製作りなど。これも山旅のお供である。
女性に関していうと嵐山さんのように港町酒場の女性や不良婦人には興味はない。むしろ年齢に関係なく対等目線の女性とお酒を楽しみたい。山仲間やスキー仲間にこのような女性がいるからこれも広い意味では山旅のセットだ。
「原資料からの歴史探訪」というと大袈裟だが、近代史などをプレーヤー自身の手による日記や随想録で読もうという発想。江戸時代まで射程を伸ばしたいが古典力が追いつかないのが難点だ。
早春に江戸後期の随筆家・鈴木牧之の「北越雪譜」でも読みながら、越後を旅して晴れた日は苗場の神楽峰か平標山をスキー登山し、温泉で清酒・八海山を飲む・・・これが僕の「おとなになったら、したいこと」の一つのモデルだ。ああ、おとなになりたい。