昨日ワイフに「近頃ブログに余り金融の話題を取り上げていないわね」と言われた。「金融そして時々山」という大袈裟な名前を付けている私のブログだが、一つの曲がり角に来ているのかなぁと昨今感じている。というのはこれまでの仕事人生では「金融」が中心テーマだったが、そろそろ第一線を引く・・・ということで仕事としての「金融」から離れつつあることだ。次に「個人投資家」の観点から見ると、現在はsidelineに立っている。「株は買えなくても、為替がある。ユーロをショートすれば良いのではないか?」というご意見もありそうだが、為替にノメリ込むには少し仕事が忙しい・・・という状態だし、基本的に私はショートポジションが苦手である。毎月小さな金額を貯める個人としては、資産を買い持ちできるような投資環境でないと動き難いのである。
さてその投資環境だが、スペインの経済危機、欧州圏の記録的な失業率、米国の雇用市場の停滞あるいは中国の工業生産のスローダウンといった逆風が明らかになるにつれ、混迷が深まっている。中でも今投資家がもっとも注目しているのは、ユーロが統合を保つことができるのか?あるいはギリシャ等南欧の国が離脱するのか?が市場関係者の最大の関心事だ。ニューヨーク・タイムズはこの問題をEuro Zone nears moment of truth on staying togetherというタイトルの記事で取り上げている。Moment of truthは最後の審判あるいは正念場という意味だ。
先週末ユーロ危機の最中にあるイタリアのモンティ首相はユーロ維持のために「欧州連合債」の創設を訴え、スペインのラホイ首相は欧州諸国の予算と債務管理の同期をとるため、共通の財務局を作るという提案を掲げた。
だがニューヨーク・タイムズは「世界経済の沈鬱さが深まる中で、そのような高尚な話は投資家にとって効果が少な過ぎまた遅過ぎるのではないか」と懐疑的だ。
同紙によるとスペインの不動産関連の不良債権額だけで2,200億ユーロに達する。アナリスト達はスペインの包括的な救済に要するコストは3,500億ユーロに達し、イタリアの救済コストはそれを上回るだろうと推計している。少なく見積もっても二国の救済に7千億ユーロという資金が必要で、これは欧州安定メカニズム(来年7月発足予定)が用意する5千億ユーロの融資枠を凌駕している。
スペインの中央銀行によると、3月に投資家はスペインの株と債券を売却して、660億ユーロの資金が海外逃避した。またECBによると4月にはスペインの銀行から310億ユーロの預金が引出され海外逃避した。目先投資家が注目しているのは、今週木曜日に予定されているスペイン国債20億ユーロのオークションだ。ニューヨーク・タイムズは10年債の入札利回りが7%に達しても買い手を魅了しないのではないか?と懐疑的だ。
ところでニューヨークタイムズは別の記事で「ユーロ問題に対するQ&A」を提供していた。その内の幾つかをご紹介しよう。
Q「迫り来る銀行取付危機に対して、スペインやギリシャの当局あるいはECBは何故対策を打たないのか?」
A「ユーロ圏の銀行はそれぞれの国の規制下にあり、それぞれの国が預金保険プログラムを持っている。しかし預金者は国の財政状況が悪化するにつれ、その保険能力に疑問を感じている。欧州諸国の政治家達は全欧州をカバーする預金保険機構について討議を行っているが、実際のアクションはほとんど取られていない。ECBのドラギ総裁は健全な銀行が資金不足に陥るようなことは認められないといっているが、ECBにできることは、銀行に融資をするだけで、枯渇した資本準備金を埋めることも、預金保険を提供することもできない」
Q「ECBは何故『国』に融資しないのか?」
A「ECBは各国の銀行に融資することはできるし、現に多額の融資を行っている。しかしECBが『国』に融資することは認められていない。もっともECBはこのルールを曲げて、オープンマーケットで国債の買い入れは行なっているが。ECBが米国連銀が行なっているような規模で国債を購入することは考え難い。アナリストや政治家の中には中央銀行が大量に国債を買う量的緩和を行なうべきだと考える人もいるが、ドイツや北方諸国の強い反発を招くだろう」
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手詰まり感の高まるユーロ危機問題。本日の日経平均は144円下げて、8,295円でクローズした。下げ足は急速だが、まだ底は見えないようだ。第二の世界的大不況の瀬戸際である。