金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ムードもほとんどドイツの一人勝ち~ピューの調査から

2012年06月12日 | 国際・政治

米国の大手調査機関Pew Reseachが5月末に欧州諸国の政治・経済に関する世論調査を発表していた。

【国の方向感】

調査対象の欧州各国の内、ドイツ以外の国は方向感に対する満足度は半分以下だ。ドイツでは53%の国民が満足しているが、満足度合いは2番手のポーランドで33%、3番手のイギリスで30%、次のフランスが29%という状況だ。金融危機に悩む南欧諸国は押しなべて低くイタリア11%、スペイン10%である。最低のギリシャでは国の方向感に満足している人はたった2%で98%の人が不満を抱いている。

【経済状態】

一人勝ちの状態のドイツを除いて、総ての国で「悪い」という人が「良い」という人を上回っている。ドイツでは73%の人が良いと言っている。良いという人はフランスで19%、イギリスで15%、南欧諸国は押しなべて一桁。イタリアとスペインでは6%の人が良いと言い、ギリシャではたった2%の人だけが良いと言っている。

過去10年のトレンドで見ると02年にはイギリスが65%でトップでフランスは45%だった。ドイツでは27%の人が経済状態は良いと言っていたに過ぎなかった。

【経済問題の根源はどこにある?】

多くの国は経済問題の責任は政府にあると考えているが、その次に銀行等の金融機関と欧州連合(EU)にあると考えている。例えばギリシャでは87%の人は責任は政府に、39%の人が銀行に、19%の人がEUに、そして42%の人が自分達にあると考えている(複数回答のため合計は100%を超える)。

イギリス、スペイン、フランスでは銀行に責任があると判断する人が政府に責任があると判断している人を上回っている。イギリス(政府に責任67%、銀行に責任69%)、スペイン(59%、78%)、フランス(59%、74%)

【向こう1年間の見通し】

向こう1年間で経済状態が改善すると予想する人は押しなべて低い。イギリスでは「良くなる」と判断する人と「悪くなる」と判断する人の割合はそれぞれ32%で同じだ。ドイツでは「良くなる」と判断する人は29%で「悪くなる」と判断する人27%を若干上回っている。スペインでは25%の人が「良くなる」と判断(「悪くなる」は47%)、フランスでは「良くなる」が22%で悪くなるは40%だ。ギリシャでは「悪くなる」が81%で「良くなる」と予想する人は81%に過ぎない。

参考までにいうと米国では現在の経済状態が良いという人は31%に過ぎないが、1年後に改善すると予想する人は52%で欧州諸国を大きく上回っている。これはアメリカ人の楽天的気質によるものだろうか?あるいは米国がリーマンショックの後遺症を克服しつつあるということだろうか?

☆  ☆  ☆

世論調査はほとんどドイツの一人勝ち状態を示している。10年前はユーロのお荷物と言われたドイツだが構造改革を経て一人勝ちになっている。もっとも構造改革だけが一人勝ちの理由ではあるまいが。いずれにしても向こう1年いやもう少し先まで暗いのが欧州だ。

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答えより疑問の方が多かったスペイン銀行救済案

2012年06月12日 | 金融

昨日(6月11日)の東京株式市場は、9日にユーロ圏17カ国の蔵相が緊急電話会議でスペインに最大1千億ユーロの資金援助を用意すると表明したことを受けて2%近く上昇した。ところが欧州市場では半日の内に「安心感」は消えてユーロは下落、株価も大西洋をはさんで欧米とも下落した。今米国の投資家は欧州を見て、短期取引を行なっているから、欧米市場がシンクロするのは当然だが。

WSJにMore questions than answersというSimon Nixson氏の短いコメントが出ていた。要は1千億ユーロの資金援助をする、といっても具体的にはどうするの?ということで市場が疑問を突きつけたということだ。

まずスペインの銀行救済に本当のところどれ位資金が必要なのかがまだわからない。IMFはスペインの銀行がバーゼルⅢで求められるコアTier 1比率7%を維持するには370億ユーロが必要だと見積もっているが、市場は新たな償却を含めるとTier 1比率は9%は必要だと判断している。

1千億ユーロがどこから出てくるのかというのも疑問点だ。既存の欧州金融安定基金から来るのかそれとも7月に作られるESM(欧州安定メカニズム)から出るのかという点ははっきりしない。もし既存債務に優先するESMの拠出金が使われるとすると、劣後する既存債務のリスクが高まることになる。

そして最後の大きな疑問は、スペインの銀行救済の主な目標は彼等を健全化して市場に再びアクセスできるようにすることだが、資金がスペイン政府経由で銀行に注入されることになると、スペイン政府と銀行の関係は一層強くなり、一蓮托生リスクが高まるのではないか?というものだ。

☆   ☆   ☆

スペインの銀行問題は今世界が抱えている構造的な問題の縮図なのだろう。構造的な問題というのは「誰も何も決められなくなっている結果、将来の予想が立たない」という問題だ。各国の既存政党は舵取りに必要なマジョリティを確保できず、その場しのぎのパッチワークを繰り返している。国家の連合体であるユーロ圏ではその混迷が増幅しているということだ。

市場が注目している17日のギリシャの総選挙だが、どのような結果が出てもやはり一時的な気休めのような気がする。

政治の決断の混迷は、市場の短期志向を強め、市場の短期志向が経済の混迷を増幅し、それが政治の混迷を増幅させているのである。

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