相続税の改正を含む税制改正大綱が発表されて以来、書店では相続関係の本を見かけることが多くなった。相続税改正は国会を通り、2015年1月からは基礎控除額がグンと下がることになった。法定相続人が3人の場合、現行では基礎控除額は8,000万円だから「ウチは関係ない」と思っていた人も改正後の基礎控除額は4,800万円になるから「関係がある」場合も多くなりそうだ。
ちなみに私のように東京23区外(西東京市)の45坪程の家に住んでいる者でも路線価から見ると土地の評価額だけで25百万円程度はするから、相続財産は基礎控除額を上回る可能性がある。もっとも私が妻より先に死ぬ場合、自宅は「小規模宅地等の評価減の特例」を受けられるので、遺族が相続税を払うことはなさそうだ。だが次に妻が死んだ場合、子供たちは同居していていないので、単純には「小規模宅地の特例」は受けられない・・・・。とすれば相続税を払わねばならないのか?
などと考え始めてた人も多いのではないだろうか?
相続税改正によって今まで相続問題に関心が薄かった一般サラリーマンにとっても相続は身近な問題になってきた。そんな時この「かしこい相続」(著者 板倉京+羽田リラ 日本経済新聞出版社)は手頃な参考書になる。
なぜ手頃な参考書になるか?というと次のような理由からである。
・相続問題に関する著者のスタンスが明確で一貫している。それは「相続対策」の一連のプロセス~「あらかじめ財産を把握し(継続的に把握する手順を整えておく)財産リストを作る」「財産リストをもとに財産を老後どう使うか、だれにどれだけ遺産をあげるかを決める」「相続税がかかるかどうかを確認する」「相続税を支払う可能性がある場合納税資金(キャッシュ)の有無を確認する」「相続税対策を考える」「遺言書を作成する」~の中で、「まず円満に財産を分けることを優先し、節税は二の次、三の次」というスタンスを明確にしていることだ。節税対策は上手くいったが、家族がバラバラになっては本末転倒である。
・次に比較的一般的な事例で、つまり普通に家庭を築いてきた一般のサラリーマンが抱えそうな問題について、簡潔に説明している点が分かりやすい。本によっては非嫡出子の問題等に頁を割いているものもあるが、私の回りではそのような話は聞かない(もっとも言わないだけで問題を抱えているのかもしれないが)。つまり学問的には研究価値のある話でも、実際にはそれほど多くない問題にfocusし過ぎた本は普通の人には余り役に立たないのである。
・ただしこの本だけでは、複雑で専門的な知識を必要とする相続問題に対処することはできない。事業主の人などは事業承継について専門的な勉強をする必要がある。だが日頃相続のことを余り考えないサラリーマンやサラリーマンあがりの一般の人にとっては、手頃なガイドブックである。ある程度自分が抱える固有の問題が見えてきてから、もう少し縮尺の細かな地図を開いて「相続」という複雑な世界に足を踏み入れても良いだろう。