金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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運用資金流出が続く中国

2013年07月04日 | 投資

WSJによると中国から運用資金の流出が続いている。調査会社EPFRによると過去18週の内16週が資金流出超。6月5日までの5日間の資金流出額は834億ドルと金融危機が進行していた2008年1月以降最大の流出額だった。

中国から運用資金が流出している理由は、経済成長鈍化予想と成長鈍化に対策を打たない政府に対する失望感だ。

ゴールドマンサックスは今年の経済成長見通しを前回予想の7.8%から7.4%に引き下げた。人民銀行は野放しになっている与信市場を正常化させるために引き締めに動いている。また李克強首相は北京政府は持続的な経済成長を達成するために、目先の景気浮揚のための金融財政政策を取るつもりはないと示唆している。

このような状況に対して株式市場は大幅な下落。上海株式指数は今年に入って12%下落し、外国人投資家が参加する香港のハンセン指数は22%下落した。

需給面でいうと、米連銀の債券買取プログラムの縮小が視野に入り、投機的な資金の回収が始まる中で、問題を抱える中国からの資金回収が加速している状況だ。

リーマン・ショック以降の世界的な景気後退に対して、積極的な金融財政政策を取って経済成長鈍化に歯止めをかけようとした中国だが、不動産バブルの拡大、環境汚染の悪化、農民と地方政府の対立等矛盾が臨界点に近づき、成長路線の見直しを迫られている。

少し前まではBRICsという言葉が投資家の間でもてはやされた。この言葉は今世紀初めにゴールドマンサックスのアナリストが使い始めた。当時経済成長著しかったブラジル、ロシア、インド、中国を推奨するものだったが、このところ新興国の息切れが続いている。

「幸せな人は一様に幸せだが不幸な人はそれぞれの理由で不幸である」という言葉がアンナカレーニナの冒頭にあったが、新興国もまたそれぞれの理由で息切れに陥っている。

山高ければ谷深し。

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