2013年夏の参院選は予想通りに与党勢力が勝利。一般的には政権が安定し、成長戦略が推進されるので、日本株にはプラス要因だと判断される。だが強い力を持つ安倍政権が消費税引き上げに向かうなら株は売りだ、という人がいたのでちょっと紹介しておこう。
WSJのNext question for Japan Investors:Can Abe deliver? 「日本の投資家に質問:安倍首相は実現できるのか?」という記事の中で、東京海上アセットマネジメントの久保健一シニアファンドマネージャーの「消費税の引き上げが決まると年末にかけて日本株を売りに回る。日経平均は来年初めに12,000円―13,200円まで下落すると予想される」というコメントを紹介していた。
久保氏についてはブルンバーグなどは彼の「自公政権の勝利は政権が安定するので日本株にはプラス」という発言を紹介していた。それぞれのメディアが断片的にコメントを紹介しているので、どちらに彼の力点があるのかは分からないが、消費税の引き上げが景気の腰を折り、株価の引き下げ要因になるという見方は頭に中に入れておいて良いだろう。
安倍首相のアドバイザー役のエール大学浜田名誉教授の消費税引き上げは景気の腰を折る可能性があるという進言を受けて、安倍政権が引き上げを見送るのではないか?という憶測が流れている。
だが仮に消費税引き上げが見送られると、財政再建に対する懸念が高まり、国債が売られて急速な金利上昇を招く可能性は高い。急激な金利上昇は、消費マインドを冷やす上、株価も急落する可能性がある。つまり消費税問題は、予定通りに来年春に引き上げても、先送りしても株価に悪影響を与える可能性の高い話なのである。
私自身は消費税引き上げだけで株価が1万2千円まで下落する、とは考えていない(消費税が引き上げられる場合、景気対策で補正予算が組まれるだろうから)が、当面の株価は重たいだろうと考えている。一つはbuy the rumor,sell the fact(噂で買って事実で売る)という株式市場の本源的な性格ゆえである。自公政権の勝利は既に織り込まれている。だから規制緩和やTPPなどで新しい成長材料が提供されないかぎり相場は重たいという判断だ。またアベノミクス騒ぎから一歩引いて考えると世界経済の動きが気になる。
バンクオブアメリカ・メリルリンチの神山氏は「日経平均は年末にかけて15,500円へ緩やかに上昇。市場の関心はアベノミクスから世界や米国の経済に移るだろう」(WSJ)と述べている。
参院選は政治のねじれ現象が解決した、というだけの話で山積みの問題が具体的に解決された訳ではない。苦くても飲まなくてはならない薬を飲めるかどうかが注目される。より正確にいうと苦い薬は「飲んで当たり前」で飲まないとトンデモナイと市場が判断する可能性が高いと私は考えている。