昨日(9月1日)目黒の東京 土山人という蕎麦屋で6歳年下の往年のクライマーSさんと楽しいお酒を飲んだ。
Sさんは私が顧問を務めている建設コンサルタント会社の役員さんであり、私が山好きだと聞いてお誘いを頂いたものだ。
Sさんのクライマーとしての経歴は凄い。高校時代に山岳部に属しながら社会人山岳会に入り岩登りを始めその後無雪期・積雪期を通じて日本の名だたる岩壁を踏破されている。
ビールで乾杯した後、Sさんがおもむろに古い本を見せてくれた。RCCが作った岩場ルート集で、Sさんが登ったルートが赤線でマークされていた。
その中の幾つかのルート、例えば穂高の屏風岩第1ルンゼなどは私も登ったことがあるが、ロッククライマーとしての経歴はSさんの方がはるかに上だ。例えば私は遭難事故で有名な谷川岳の一ノ倉沢の岩壁に取り付いたことがないが、Sさんは一ノ倉を代表する衝立岩を登っている。凄い往年のクライマーと出会ったものだ、と感心そして感動。
山仲間とお酒を飲むことは多いが、これ程の登攀歴を持った人と飲む機会はまずない。いや一人思い出した。その人は去年ネパールトレッキング中に偶然お会いした愛知県のMさんだ。Mさんの詳しい登攀歴は存じ上げないが、冬の剣岳に遭難救助で長期間入山されたことや、海外遠征隊の隊長を務められたことを聞くと凄いクライマーだったのだな、と推測はつく。Mさんの凄いのは過去だけではない。今もヒマラヤトレッキングを続けられているところが凄い。Mさんとはネパールの山小屋で2度ばかり盃を傾けただけだが、機会があれば是非また山のお話をしたいと思っている。
国内登攀歴ではSさんに劣るが、海外遠征歴を加えると大学山岳部の先輩・井上さんも素晴らしいアルピニストだった(過去形でいうと失礼かな?)。
大学山岳部の仲間でいうと5,6年後輩に中川君という体力抜群で岩登りの上手い男がいる。登攀歴ではSさんに劣るが、彼の体力・技術は中々のもので、私も彼を頼りにしながら、年に1,2回山スキーや沢登りに出かけている。
ここまで書いてきて気がついたのだが、紹介した方々は皆さん、理工系の方でお仕事でも技術畑を歩まれた方が多い(一人カレー屋さんの社長もいるが)。
数々の海外遠征で名をはせた京大山岳部もサル学者など理系の人の活躍が目立つ。
優れたクライマーやアルピニストに理工系の人が多い(少ないサンプル数で断じて良いかどうかは疑問だが)のは、必然なのかもしれない。なぜなら先端的な登山は常にその時の先端的な科学技術を取り入れて行われるからだ。また先端的な登攀では、冷静沈着・客観的判断が求められる。どうも理系に求められる資質とクライミングに求められる資質は共通点が多いようだ。
文系の登山は、どちらかというと詩的・放浪的なのだろう。良く言うと気楽・気まま、楽しみ重視。悪く言うと計画性やストイシズムに欠けると言えるかもしれない。
私が第一級のクライマーになれなかった理由も私が文系的な人間だったことによるのかもしれない。(笑)
仕事に就いても、文系人間は「営業」「人事」など人を相手にする分野が多く、技術的向上心に乏しくなり、つい目線は組織の階段を登ることに向いてしまい、厳しい岩壁を攀じることを忘れてしまう(言い過ぎですか?(笑))
ともあれ一夜明けても色々なことを考えるSさんとの素敵な一夜だった。