金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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「花咲舞」雑感

2015年09月04日 | テレビ番組

私は余りテレビを観ない方である。定期的に見ている番組は磯田道史さんが司会する「英雄たちの選択」、NHK大河ドラマ「花燃ゆ」、「鶴瓶の家族に乾杯」そして日本テレビの「花咲舞が黙っていない」位だ。

「花咲舞」を観ているとワイフが「あなた、やっぱり銀行のことが懐かしいのね」と時々笑う。

長年銀行に勤めていたといっても、国内営業店の経験が少ない私には、「花咲舞」ドラマのテーマのような状況にそれ程多く遭遇した訳ではない。とはいうものの、多少類似体験はあるので、このドラマにある程度リアリティを感じていることは確かだ。

数少ない類似体験を紹介しよう。多少銀行内部の話に触れるが15年以上前の話だから、時効と考えて良いだろう。

少ない営業店の経験として名古屋市内の支店長に着任したことがあった。その店は個人営業部門では全国トップクラスの大店だったが、着任時事務管理部門の評点は全国最低だった。

その理由は行内検査で「現金の入ったテラーの手提げ金庫がカウンターの下に放置されていた」ことが発見されたからである。現金の杜撰な管理は極めて重要な検査指摘事項で当然大罰点を食らう。

何故テラーが手提げ金庫を放置したまま退社したか?という点について、当時もっぱら「パワハラ(その当時はこの言葉はなかったが)で、女性陣を軽視した支店長に罰点を食らわすため、故意にテラーが手提げ金庫を放置した」という噂があった。

「花咲舞」ドラマでは、ここで杏が啖呵を切り、支店長(私の前任者)は左遷され、一般行員やドラマの視聴者が溜飲を下げるということになるのだが、現実はそうではなかった。支店の営業面の成績がそこそこ良かったので、支店長は少し大きい都内店に支店長として転出。順調にキャリアを進めた訳だ。

この支店長は多少仕事はできたが、子どもっぽいところがあった。私が着任後部下から聞いたところでは、その支店長は「俺はまだゴルフの店内コンペで優勝したことがない。ハンディキャップがきつ過ぎると思う。次のコンペではハンディキャップを増やしてくれ」と言って、ハンディを増やして貰い、コンペで優勝したということだった。

このような「子供じみた」ところが当時の役員クラスに気に入られて、検査で大罰点を食らっても、キャリアを傷つけることなく、支店長で転出したのではないか?と私は推測している。あくまで推測に過ぎないが。

この男はまもなく、早期退職割増金を貰って、某外資系金融機関に転職した。その時元の銀行との間で「競合先への転職は割増退職金支給条項に違反するから退職金を返せ」「いや条項自体が違法だから返さない」という論争があったと聞いている。結果がどうだったかは知らないが、彼のような人物は、「まったく自分本位の考え方」しか持っていなかったと私は判断している。

もっとも支店長クラスの人間が「自分本位の考え方」で、進路を決めることを非難するつもりはない。支店長になったところで、銀行がその先まで面倒を見てくれる時代はとっくに過ぎていたから、自分で転身先を見つけたことは自体は立派、というべきかもしれない。

しかし当時邦銀は不良債権問題や低迷する株価やそれに不安を感じる顧客の預金流出に苦しんでいた。一般行員には「頑張れ」といいながら、本人がさっさと船から降りてしまうことに、不愉快さを感じた行員も多かったと思う。

こんなエピソードもすっかり昔話になった。でもひょっとすると「花咲舞」を観ながら、自分の体験を重ねて、杏の啖呵に溜飲を下げている人もいるのではないか?と思うことがある。

サラリーマンは難しいと思うことがある。特にキャリアの天井が見えてくる50代以降は難しい。つまり「今の仕事で頑張る自分」と「新しい道を探す自分」のバランスを取ることが難しいのだ。バランスを取る唯一の方法は、恐らく与えられたハンディキャップを慫慂として受け入れ、目先の仕事を誠実にこなしながら、将来に目を配るということなのだろう。

でもこれは、気楽な身分だからいえる話。私は水割りをチビチビ飲みながら、「花咲舞」を観て、この話はリアリティがあるな?とかこれは少し嘘っぽいな?などと勝手な評価をしているのである。

コメント
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