今日(9月1日)の日経新聞朝刊の「経済教室」は、「高齢化による空き家の増加で住宅価格が大暴落する可能性がある」というものだった。これは日本だけの話ではない。中国、韓国、香港といった近隣諸国だけでなく、ドイツでも2040年には2010年比で4割強の住宅価格の下落が起きることが推計モデルで予想されるという。推計モデルは一人当たり生産性の変化、総人口、老齢人口依存比率をベースにしたものということだ。
2040年といえば今から25年後の話。そこまで生きているかどうか微妙なところだが、住宅価格の下落はある日突然起きると考えるよりは、じりじりと下がり続けると考えるべきだろうから、我々の老後に大きな影響を与えることは間違いない。
私は3大都市圏で上がり気味の住宅価格は、東京オリンピックが行われる2020年頃を境目に下落に向かうと考えている。住宅価格の長期的下落は、個人の生活設計のみならず、金融機関の融資方針や経済統計にも大きな影響を及ぼす。
個人の生活設計については、住宅価格の長期・持続的な下落が広く認識された時点で、住宅取得の延期・賃貸の継続という消費行動につながる。問題は働いている内は家賃を払い続けることができても、年金生活に入る時に住宅取得資金を確保していないと、老後も家賃を払い続けることになり、生活費が圧迫されることだ。
金融機関は住宅価格の長期的な下落を認識すると、債権保全のため、住宅ローンの掛け目を引き下げる。このため頭金の額が増え、住宅取得が困難になるケースがでるだろう。
以上のようなことから、新規住宅着工件数がドンドン低下する訳だが、これは住宅業界のみならず、家電メーカーなどにも大きな影響を及ぼす。
統計的には、「帰属家賃」が低下するので、物価の引き下げ圧力が高まり、デフレ傾向が続くと推測される。
ということで住宅化価格の下落は大きな問題なのだが、有効な対策はあるのだろうか?
日経新聞の記事の著者・清水千弘シンガポール国立大学教授は「年間130万人規模の移民の受け入れ」「定年年齢の70~75歳への引き上げ」「女性の社会進出」をあげるが、その現実性には私は疑問を感じている。特に年間130万人規模の移民受け入れについては。
私は住宅問題の解決については、何らかの形の国や自治体の強力な関与が必要だと考えている。
その一つは防災対策と住環境の整備のため、大都市圏の狭小住宅を区画整理などの手法でまとめて、集合住宅化し、空き地を道路拡張、公園等の公共施設にするというもの。郊外においては、省エネ型のゆったりした長期耐用型の住宅を作る。「民泊」が可能なほど大きな家を作る場合は、なんらかの補助を出す。
仮に大規模な移民を受け入れることになってもこれらの居住施設は必要なはずだ。
もっともこれらの施策を推進できるかどうかについては悲観的だが。
ただし可能性はある。それは不幸な予想だが、大都市圏で直下型の地震が起きるということだ。この場合は大規模な都市再開発が起きることは間違いないだろう。大震災以外に住宅問題を解決する方法はない、というのでは提言にならないので、この話はこれでおしまいにしたい。