ユーロが対ドルで2年半ぶりの高値圏に入っている。
昨日ブログでドル安の原因は「トランプ政権の混乱」と書いたが、それは米ドル側の一つの問題で、ユーロが堅調なのは欧州経済が好調で、欧州中銀の緩和政策の転換が視野に入っていることによる。
先日発表されたユーロ圏19か国の4-6月のGDP成長率(年率換算)は、2.3%で、1-3月期より若干改善した。ユーロ圏は昨年まで経済成長で米国に後れを取っていたが、このペースが続くと今年の世界経済を牽引するエンジンになるだろう。
経済が良くなってくると、ユーロ圏への信頼が復活し、反ユーロ・脱ユーロを唱える政治グループの勢いが弱まり、政治が安定する。
ユーロ圏の失業率は金融危機時の12%に較べると、9.1%に改善している。これは日米に較べるとまだ高い水準だか、消費者やビジネス界の信頼感指数は相当回復しているので、ムードは良い。
インフレ率は1.3%と欧州中銀のターゲット2%よりかなり低い。
しかし欧州中銀が2014年中頃から開始した債権買取プログラムを縮小させる方向に向かうと見る筋は多い。
注目される出来事としては近いところでは今月24-26日に米国のジャクソンホールで予定されているドラギ総裁の演説だ。
また9月の欧州中銀政策会合会議で来年以降のテーパリングが取り上げらるという観測もある。
仮に欧州中銀がテーパリングの方向感を打ち出すと、円ユーロも更にユーロ高に向かうことになる。
ユーロ建て投資を行っている向きには短期的には悪い話ではないが、やがていつまでも金融正常化に向かうことができない日本に対して批判の眼が向いてくることは間違いない。
日本では安倍政権が内閣改造を行い、支持率挽回を図ろうとしている。しかし支持率挽回を政権目標にすると、財政規律の回復がますます後回しになる可能性が高い。ハードルが高くても、労働市場の改革か社会保障制度の改革を通じて、経済成長と財政バランスの改善をともに図らねばならないということを強く国民に訴え、苦い薬を飲んでもらう必要があるのだが。