金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

日本人のトレッキング・ドイツ人のトレッキング

2017年08月20日 | シニア道

「定年後」(楠木 新著 中公新書)のあとがきで著者はこう書いている。

「会社で働いていたときははツアー旅行やパック旅行だったと言えるかもしれない。目的地に行くのに会社がある程度お膳立てをしてくれる。もちろん社員の自由度がないわけではないが、基本は自己主張をせずに仲間に合わせている。・・・しかし定年後になっても平穏で波風が立たないパック旅行ばかり求めていては、何のために生きているのか分からなくなる」

この一文を読んで私はネパールにトレッキングに行った時会ったある日本人グループとドイツ人グループの違いのことを思い出した。

その日本人グループとはエベレスト街道の入り口ルクラで会った。それは大手旅行会社が企画するエベレストホテルツアーのグループだった。エベレストホテルは標高3,800mのナムチェバザールに建つ高級ホテルで、徒歩ではルクラから2日間かかる。だがそのグループはヘリコプターでルクラからナムチェバザールまで飛ぶ予定だということだった。費用はかかるがヘリコプターなら短時間で楽に(もっとも高度順化の問題はあるが)ホテルに入ることができる訳だ。あるツアー参加者は「一生に一度のことですから、多少の贅沢も良いでしょう」と言っていた。

それから10日ほど後、トレッキングの帰り道で退職者の集まりと思しきドイツ人グループと親しくなり、芝生の美しいロッジでビールを飲みながら雑談をした。彼らの中には既に何回かネパールに来ている人がいた。「ネパールは素晴らしい。滞在費用は安いので年金暮らしでも毎年のように旅行することができる。俺たちはできるだけ多く旅行できるように、一回の旅行費用はできるだけ抑えてBudgetな旅をしているのだ」と言う。

正確にはBudget(悪く言うとケチケチ、良く言うと賢い)という言葉を使っていたかどうか記憶はあいまいだが、彼の主旨がBudgetな旅行をしてできるだけ多く楽しみの機会を増やす、ということであったことは間違いない。

もちろん日本人の中にも豪華ツアーではなく、Budgetなトレッキングを行う人もいる。私たちの仲間もそのグループだ。ひょっとするとドイツ人の中にも豪華旅行組がいるかもしれない。しかし典型的には「日本人は日本人ガイド付きの豪華旅行を一生の記念に行い」「ドイツ人はケチケチ旅行を何回も行う」ことを目標にしているように思われる。

うがった見方をすると、これは退職後の海外旅行のスタイルだけではなく、働いてい時の余暇の過ごし方から違いがあるような気がする。ドイツ人は労働時間が少なく、しかも生産性が高く、有給休暇を目一杯とることで有名だ。有給休暇を目一杯とるのはドイツ人だけではない。恐らくほとんどの欧米人が有給休暇を目一杯とって遊んでいるはずだ。彼らは遊びの楽しさを知っているし、どうすれば安く長い休暇を過ごすことができるか?ということに長けているのだ。

会社というパック旅行に乗ってきた多くの日本人は残念ながら、長い休暇を安く過ごすことに長けていない。

長い休暇の過ごし方に慣れていないので、退職後という膨大な長い休暇を前にすると、立ちすくむ人がいるのではないだろうか?

パック旅行に較べて、自分たちでお膳立てして出かける自由な旅は、ハプニングや小さなトラブルに見舞われることが多い。だがハプニングや小さなトラブルからその土地や人々の本当の姿が見えることがある。自由な旅こそ本当の旅というべきである。

歳を取ってから見知らぬ土地に自由な旅に出かけるのは、多少勇気がいるし、気が重いと感じる人も多いだろう。

しかし会社や役所を退職すれば、旅に出なくても、未知の世界を自分の足で歩いていかなければならない。そこにはお膳立てしてくる会社や組織はない。ならば若い時からパック旅行ではない個人旅をしてみてはどうだろうか?

それはひょっとすると長い老後の過ごし方にヒントを与えてくれるだろうと私は考えている。

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団塊世代、SNSを使う人使わない人の差は?

2017年08月20日 | シニア道

最近読んだ「定年後」(楠木 新著 中公新書)の「遠くの田舎より目の前のスマホ」の中に次のような文章があった。

「(最近写真撮影に趣味を見出し、facebookなどのSNSにアップすることもある)Nさんが言うには、自分たちのような団塊の世代では、パソコンやSNSを使いこなせる人とそうでない人がいる。しかしそういうツールを使えないと人とのつながりが広がらないというのが実感だそうだ。・・・・Facebookやブログを開設していること自体がすでにオープンな姿勢なのである。興味や関心のあることを自分の中だけにとどめず広く発信することも、居場所を作るための一つの方策になるだろう。SNSなどは都会と地方との距離の差を埋めることもできるという。遠くの田舎よりも目の前のスマホかもしれない」

私の知人・友人は50代後半から60代後半が多い。この知人・友人(以下このグループ)の属性をベースにSNSを使う人・使わない人の差はどこからくるのか?ということを考えてみた。

まずこのグループのメンバーは、得意不得意の差はあるが、全員がパソコンを使うことができる。会社で電子メールなどの利用が必須だったからだ。だから技術的には全員SNSを使うことができるといえる。

次にスマートフォンを利用しているかどうか?の区分を考えてみた。一般的には若い世代ほどスマートフォンの利用が多く、年齢が上がるにつれて利用が減ると言われているがこのグループについては必ずしもこの知見に合致しない。

何がスマートフォンを使うか使わないか?を分けているか見極めるのは難しいが、一つの傾向として「会社経営層・自由業層はスマートフォン利用者が多く、従業員層は少ない」と判断した。Facebook等のSNS利用についても同じ傾向があると判断した。

その理由として次のようなことが考えられる。

  • 経営層・自由業は金銭的にゆとりがあるのでスマートフォン利用に抵抗がない。
  • 経営層・自由業は自分で時間管理ができるのでスマートフォンを使って、情報収集を行ったり、情報発信を行うことが容易である。
  • これに較べて従業員層は、会社から業務用の携帯電話を支給されていることが多く、それに加えてスマートフォンを持つことに必要性を感じない場合が多い。
  • 従業員層では、一般的な情報発信よりも業務に関する情報収集が重要課題であり、それはパソコンを使って行うことができる。

次に写真撮影が好きかどうか?ということとSNSの利用について考えてみた。

このグループは山登りの好きな人が多いので、大方の人は写真撮影を行っている。写真撮影を3つのカテゴリーに分けて考えてみた。

「一眼(レフ)カメラを使って凝った写真撮影を行うグループ」「高級コンパクトカメラを使ってスマートフォン転送などを行うグループ」「コンパクトカメラで写真を撮影するがあまり人に配らず自分で楽しむグループ」

前二者とSNSの関連は非常に高いが、「自分で楽しむグループ」はSNSの利用が少ないといえる。

次に趣味の世界における帰属集団の強固さという点から考えてみた。このグループには某大学山岳部OB会というかなり仲間意識の強い団体のメンバーが複数いるが、この仲間はSNSの利用が少ないことが分かった。

以上のことから直観的にSNSの利用・未利用は次のような違いによるのではないか?と判断した。

  • 経営層・自由業は情報の収集・発信が重要な仕事であり、また広い人的ネットワークの構築に関心が高いのでSNSの利用に熱心である。
  • 写真撮影についてはあるレベルに達すると自分の作品を公開して評価されたい(いいね!を押して欲しい、仲間に褒められたい)という欲求が高まるので、レベルの高い写真を撮影する層ではSNSの利用が多い。
  • 趣味の世界で強い帰属集団を持つ人はその仲間で完結する傾向が強いので公開SNSを利用することが少ない。

以上は私の周りの仲間を観察して得た私の直観である。

なおSNSの利用が人のつながりを広げることは間違いないだろうが、その繋がりはあくまでネット上の淡い繋がりである場合が多いことは留意すべきだろう。淡い繋がりが濃い繋がりになるためには、やはりface to faceの付き合いが必要なのだ。

ただ取っ掛かりとして私はシニア層や準シニア層がSNSを利用して人との繋がりのきっかけを増やすことは良いことだと私は考えている。何かを発信するということは、自分を深めるチャンスでもあるからだ。

 

コメント (2)
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