山はその特徴を味わうことができる一番良いルートから登るのが良いというのが私の持論だ。そのルートは一般登山道でなくバリエーションルートと呼ばれることが多い。したがって多少の経験と技術それに体力や判断力が求められることが多いが、そこで得られる感動は大きい。
例えば前穂高岳の場合は北尾根の岩稜を縦走して、山頂に立つのがベストルートだと私は考えている。また北穂高岳の場合は槍側から大キレットを越えて山頂に立つのが良いだろう。また岩登りに自信のある人なら、滝谷出会いから滝谷の岩壁を攀じるのも良い方法だ。
さてこの文脈でいうと北海道第二の高峰・トムラウシのベストルートはクワンナイ川ということになる。滝ノ瀬十三丁と呼ばれる長く広大なナメをヒタヒタと登って奥深いトムラウシの頂きに立つとき、縦走路歩きでは味わうことのできない深い感動を得ることができる。
8月10日(木)曇時々晴 全員9名で天人峡温泉の天人閣を午前5時に出発。最初は林道を歩いてポンクワンナイ川に5時23分到着。ここが入渓点だ。最初は広い川原の平凡な沢歩きが続く。
6時30分ゴルジュに到着。
左側(右岸)に残置シュリンゲがあり、そこから藪の中を直上して高巻した(フィックスロープを張った)。
ゴルジュの上はまた川原歩きであるが、渡渉が頻繁になってくる。流れの速いところではロープを張って安全を期した。
やがてカウン沢出合いが近づいてくる。
13時30分カウン沢出合い到着。もう少し歩いて魚止めの滝まで進むことも考えたが、9人テント・ツエルト3張りの場所としてはカウン沢出合いの方が良いと判断してここに泊まることにした。
出合いの小さな滝壺に竿を入れると簡単にオショロコマが釣れた(餌はブドウ虫)。
人数分+αのオショロコマを釣って、塩焼き・バター炒めで頂いた。
8月11日(金)晴のち小雨 5時47分 カウン沢出合い出発。6時魚止めの滝到着。
滝の右側の水際の岩を登ることもできそうだが、早く通過するためその右手の草付きを登って滝を越えた。
滝の上からいよいよ滝ノ瀬十三丁と呼ばれる2kmのナメが始まった。
ところどころ写真のような滝が出てくるが直登または簡単な巻きで越すことができる。
このあたりが滝ノ瀬十三丁のハイライトだろう。
10時ハング滝到着。ここは明瞭な踏み跡をたどって右岸(左側)から滝を巻いた。巻きルートの上部は5mほどの垂直の岩壁で残置ロープが下がっている。ここはザックを釣り上げて安全を期した。
ハング滝から上もナメや小滝が続く。水たまりを覗くとオショロコマが沢山泳いでいた。オショロコマはどうしてハング滝を越えることができたのだろうか?疑問だ。
水が枯れる手前で今後の飲み水をペットボトルなどに詰めた。やがて小雨が降ってきた。巨岩帯を越えて行くのに疲れを感じ始めた頃ようやく稜線にでることができた。15時5分である。小雨降る中縦走路を延々と歩き、16時55分ヒサゴ沼の避難小屋に到着した。先着客が多かったが何とか人数分のスペースを確保することができて落ち着いた。
8月12日小雨のち曇 午前7時に避難小屋を出発してトムラウシを往復する。石狩岳方面の空は明るく山並みが見えた。
ヒサゴ沼から主稜線に出る手前は残雪が残っている。
この残雪の下の雪解け水を勇敢にも?私は飲んだ。ヒサゴ沼の水はエキノコックスのリスクがあるので煮沸が必要だが雪解け水は美味しかった(笑)
トムラウシに近づくにつれて天気が回復してきた。
巨岩帯を進み10時25分トムラウシ山頂到着。
14時ヒサゴ沼避難小屋に戻った。
8月13日(日)小雨 化雲岳(1,954m)を経て天人峡に下山する日である。朝4時41分避難小屋を出発。6時18分化雲岳到着。元気な人は化雲岳山頂の大岩に登った。
化雲岳から暫く気持ちの良い稜線歩きが続いたがやがてぬかるむ灌木帯歩きとなった。途中湿原帯がありそこには木道が設置されていた。
霧に浮かぶ遠くの針葉樹が長谷川等伯の障壁画を思い出させる。美しい場所だが天人峡は遠いので程々で休みを切り上げた。
12時27分天人峡(化雲岳登山口)に下山。温泉で一風呂浴びて私とNさんはタクシーで旭川空港に向かった。そこからレンタカーを借りて次の山旅に向かうからである。因みにタクシー代は7,200円ほど。往路のタクシー代は8,400円だったがこれはコンビニエンスストア経由のため少し遠回りしたことによるようだ。