先日ブログで「良いシニア生活を送るには自分の引き出しを充実させるのが良い」と書いた。
自分の引き出しを充実させると良いのはシニア生活だけはない。働いている最中でも「引出しの数と大きさ」は極めて重要だ。
ただ働いている時、役に立つと考えていた引出しの中には、会社や組織を離れると無用であるばかりか害になる引出しもある。害になる引出しは早めに処分した方が良い。
害になる最大の引き出しは、「会社や組織固有の価値観やルール、仕来り」というものだ。会社や組織は従業員の業務能力と忠誠心を引き出すために様々な仕掛けを作っている。従業員の競争心を煽り、組織の階段を登ることが人生の目標であるかのように思い込ませるのもその仕組みの一つだ。
このような「引出し」はシニア生活では害以外の何物でもない。
これ程の害はないにしろ「会社や組織固有のルール」というのも、会社や組織を離れると意味はない。そこで必要なのは「共通語としてのルール」だからだ。雇用の流動性が高い社会では、人が幾つかの会社や組織を渡り歩くことを前提としているので、会社や組織は「固有のルールより共通ルールの採用」を心掛けている。日本の退職者は、退職後地域社会等新しいグループに参入し難いと言われているが、その原因の一つは「固有ルール」に縛られ「共通語としてのルール」に慣れていないことによるだろう。
有害な引出しや無駄な引出しは早めに処分して役に立つ引出しに置き換えた方が良い。人間のキャパシティには限界があるので不要な引出しを取り去らないと新しい引出しを置く場所がないからだ。
ところで引出しの中には有効期限の短い引出しと有効期限の長い引出しがある。勤めていた時の業務知識などは有効期限の短い引き出した。
これに較べて語学力など基礎学力の引出しは有効期間が長い。いつでもどこでも役に立てる場所があるからだ。
最も有効期間が長い引出しは「学習する姿勢と方法論」という引出しだろう。学び続ける資質と言っても良い。新しいことを学び続ける意欲と言っても良い。
この引出しがある限り、世の中の変化についていくことができるだろう。陳腐化し時には害になる引出しを処分して有効期限の長い引出しに置き換えることができるかどうかが、良いシニア生活を送ることができるかどうかの分かれ道なのである。