昨日(8月3日)の米国株市場はダウは小幅続伸で一昨日達成した22,000ポイントを堅持した。S&P500とナスダックは下げているから、米国株がこのまま続伸を続けるとみるよりは、少し足踏みするとみる方が良いと私は考えている。それでも今年のダウは2割以上値を上げている。
パフォーマンスが良いのは米国株だけではない。日本を除くMSCIアジア太平洋インデックスは25%上昇している。世界的に株高なのだ。その中で日経平均の年初来の上昇幅は5%に留まっている。
日本企業全体の業績は好調だし、株価バリュエーションも他の先進諸国に較べると割安だ。日銀は金融緩和政策の堅持しているし、投資環境は悪くない。マイナス要因としては年初に較べて円高が進んだことと都議選前頃から安倍政権の支持率が急落し、政治的混乱が予想されることだ。
だが政治的混乱はトランプ政権下の米国でも起きている。
アナリストはバリュエーションの点から日本株は米国株の2割安になっていると述べている。為替レートについては今後の円安を予想する筋が多い。WSJはヘッジファンドや投機家筋は3年半ぶりに円安に賭けて大きくポジションを傾けているという。
以上のようなことを考えると出遅れている日本株が大きく値を上げる可能性は高いと思うのだが、現実は必ずしもそれほど甘くはなさそうだ。
みずほ証券の菊池株式ストラテジストによると、日本株は伝統的に外国人投資家が売り手となる夏場に値を下げ9月末には5%ほど株安になっている可能性があるという。
日本株の最大の問題は、短期的な動きをする外国人投資家が3割を占めるのに対して、長期的な投資家である個人投資家が少ないことだ。
米国株を押し上げてきた一つの要因は、ETFを通じた個人のパッシブ投資があるという。日本株市場を健全(つまり世界的な株式投資尺度にあう市場にしていく)な市場にするためには、個人投資家が安心して長期資金を投資できる市場にする必要があるのだ。
そのためには相続税制のゆがみを修正する必要がある。具体的には相続時の不動産評価額と株式評価額の差を縮めることである。株式は時価評価されるが、不動産特に借家建付け地だと大幅に相続財産の評価額が下がるので、資産家は相続財産を株式から不動産に変えようとするのだ。
そのため空き家が820万戸もあるにも関わらず、毎年100万戸近い新規住宅が建設されているのである。新築アパートの中には将来収益をあげず重荷になるものが多くでてくるだろう。また新たに住宅を取得する層が、安心して既存住宅(世間では中古住宅というガラパゴス的表現を使っているが)を購入できるような仕組みがもっと必要なのだ。既存住宅を購入する人は相対的に住宅ローン負担が軽いので、余剰資金を老後資金として株式資産の積み立て投資に回すことができる。
私は今取らねばならない政策は「新規住宅の着工を減らし、その資金を株式市場に振り向ける」ような政策だと考えている。個人の長期資金が安定的に市場に入ってくる(そして留まる)ような制度改革が進まない限り、日本株の将来はぱっとしないのではないか?という懸念を私は抱いている。