先週末の香港ではこれまでの週末と異なり、平和なデモが行われた。デモの規模は主催者側発表では170万人と大きかったが、「逃亡犯条例案」に反対するデモが起きて以来最も平和的なデモだったと報じられている。
これは香港人と中国政府の間で何らかの歩み寄りがあった訳ではなく、香港の民主化要求グループが市民層の支持拡大を狙い、香港が特別行政地区の地位を失うまで戦い続けることを示したと見ることができる。非暴力的なデモに中国政府が強制排除などの暴力的手段を振るうことは世界中が監視しているので、困難と考えられるからだ。
中国政府が香港問題をどう取り扱うか?ということは中国が世界のリーダーになれるかどうかの試金石でもある。
習近平主席は2017年の共産党大会で「中国は豊かになり強くなったのだから、北京政府の最終目標は世界のリーダーになることだ」と演説した。
もっとも中国が世界のリーダーになる、ということについては中国の学者などの間でも議論があるようだ。
WSJは中国人民大学のCheng(成)助教授の「中国は世界のリーダーではないし、過去にも世界のリーダーだったことはない。それはまったく新しい挑戦なのだ。」という言葉を紹介している。
「中国が世界のリーダーだったことはない」というと唐などの帝国が周辺国と宗属関係を結び、朝貢を受けていたことを持って疑問を呈する方もおられるだろう。だがCheng助教授の頭にあるリーダーとは、そのような覇道による周辺国の支配ではなく、むしろ徳化による共生つまり古臭い言葉でいうと王道に近いものだろう。
中国の話なので、覇道だの王道だの随分古臭い言葉を持ち出したが、中国4千年の歴史は力による支配には限界があり、転覆されるリスクが高く、徳による支配は持続するということを教えている。
「徳とは何だ」ということを一言で説明することは難しいが、「他人の価値観を尊重する寛容さ」もその構成要素の一つだろう。そう考えると習近平を頂点とする中国政府が世界のリーダーになるための一つの条件は他人の価値観を尊重する寛容性を持つことができるかどうかであるということができる。