金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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米国の180名以上の経営者が「株主第一主義」から転換

2019年08月20日 | ニュース

米国大手企業の200名近い企業経営者で構成されるビジネス・ラウンド・テーブルが「企業目的声明」を刷新した。

彼等の企業目的は数十年にわたって、ミルトン・フリードマン流の「株主第一主義」だったが、JPモルガンチェースのダイモンCEO等のイニシアチブにより、「顧客に価値をもたらすこと」「従業員への投資」「サプライヤーに公正に倫理的に対処すること」「地域社会への貢献と環境保護」「株主に対する長期的な価値の創出」を企業目的に加えることにした。

ダイモンCEOは「アメリカンドリームは生きている。しかしほころびている」The American dream is alive, but frayingと述べている。

新しい声明を支持し、署名した181名の中にはアマゾンのジェフ・ベゾフ、アップルのティム・クックなど著名な経営者が並んでいる。

米国の経営者団体が企業目的声明を大きく変えた背景は、経済環境の激変とそれにより拡大する格差拡大の問題、そしてその問題に的確かつ迅速に対応できない政府の問題がある。

このビジネス・ラウンド・テーブルの動きは必ず日本の企業統治に影響を及ぼす。

「株主価値極大主義」で走ってきた企業経営者や経営者を支えてきた経営企画部等の幹部職員はこれから大慌てをするのではないだろうか?

特に大慌てをするのは、借り物の「企業目的声明」を使ってきた会社の連中である。

実は表現方法は異なれ日本には江戸時代からステークホルダー(利害関係者)を大事にする企業理念があった。

たとえば近江商人の「三方よし」である。「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」である。

売り手(企業=株主)は儲けるので「よし」。買い手には対価に見合う以上の価値をデリバリーするので買い手も「よし」。更には社会貢献に繋がるので世間「よし」である。

米国の動きを参考にして日本の会社も企業目的を見直すことには賛成だが、慌ててビジネス・ラウンド・テーブルの声明書の和訳をするような愚は避けて、近江商人の勉強をした方が良いだろう。風土に根ざすものは長続きするが、借り物は長続きしないからだ。

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