金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

資産形成の目的は自主・独立を維持すること~「お金の心理学」を読んで(4)

2020年10月08日 | ライフプランニングファイル
 仮題「お金の心理学」The Psychology of Moneyも漸く終わりに近づいてきた。この本を読んでいる間に、高値更新を続けていたGAFAが下落したり、菅政権の発足でドコモ株が急落するなどと私のポートフォリオにも色々なことがあった。また急落したドコモ株はNTTがドコモにTOBをかけたことで4割アップするという思わぬ利益を生んだ。
 この短期間の経験からだけでも、我々は資産運用はかなり運に左右されるということを学ぶことができる。成功体験は概ね後講釈と考えておいた方がよい。
 そもそも「資産運用を商売にする」ことは割の良いビジネスかもしれないが、資産運用そのもので金持ちになるのは容易なことではない。もし「他人をお金を運用して手数料を頂く」よりも「自分のお金を運用してキャピタルゲインを稼ぐ」方が確実に儲かるのであれば、多くの金融パーソンをそちらの道を選ぶはずだが、実際は違う。多くの金融機関は「不確実なキャピタルゲイン」を狙うより「確実に利益が上がる手数料」ビジネスを志向するのである。
 では我々が資産運用~より正確にはその結果としての資産形成~を行う目的は何か?
 著者はそれは「資産形成によって自主・独立を維持することだ」と断言する。誰にも、そう子どもや親せきあるいは国家にも口を挟まれずに、自分らしい生き方を生きるという自主・独立性を生涯保持するのが資産形成の目的なのだ。
 同じ趣旨の話は昔私が資産運用ビジネスに従事していた時、米国の大手信託銀行ステートストリートの社長から聞いたことがある。その社長は「退職者の尊厳性を維持するために、年金ビジネスを通じて我々は社会に貢献している」と言っていた。
 もちろん自分らしい生き方を持続するには、資産や収入という金銭面の裏付けに加えて、身心の健康・家族や友人とのつながり・生きがいというものが重要だ。だが孟子が述べたように「恒産無き者は恒心無し」なのである。安定した収入や資産なくしては、定まった心を持てないというのは古今東西を貫く真理である。
 恒心、言い換えるならば誰に対しても卑屈にならず、また驕ることもなく、自分の主張を貫き、自分らしく生きるために資産形成を心掛けるというのが「お金の心理学」を読んで再確認したことである。
 
コメント
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