先日「日本でテレワークの生産性が上がらない一番の理由は会社が従業員を信用していないことにある」と書いた。それは誠にそう通りなのだが、モノゴトには複数の理由がある場合が多い。私はプレゼンテーションの講習会なのでは「断るにしろ受けるにしろ、モノゴトは理由を3つ上げて説明するのが良い」と言ってきた。なぜなら我々がモノゴトを判断する場合、3方面から見ることが多いからだ。例えば投融資先を判断する場合は、収益性・成長性・安定性の3方面から見るという具合にだ。
また通常3つ以上の理由をあげるのもやり過ぎだ。なぜなら聞いた方が覚えていることができないからだ。ということで日本でテレワークの生産性が上がらないことについても3つの理由で説明しようと思う。
今日は2番目の理由についてだが、それは「コミュニケーション技術が未熟」ということだ。コミュニケーションとは意見と情報と感情をお互いに伝え合い、何かを成し遂げていく技術の総称で広い意味ではネゴシエーションやファシリテーションの一部を含む。
ポイントは2つある。一つは技術ということだ。技術は先人たちが積み上げ体系化したものなので、学ぶことで効率よく成果を得ることができる。逆に学ばずに我流でやっていると良い結果はでない。
もう一つのポイントは「お互いに伝え合い」という点だ。コミュニケーションでは意見や情報の出し手と受け手が対等でなくてはならない。対等という意味はお互いの時間やスケジュールを尊重しあうというところから始まる。
たとえば上司が自分の都合で知りたいことがあるからといって、思いつくままに部下を呼びつけて質問するというのは完全にコミュニケーションの基本ルールを無視していると私は考えている。部下には部下の仕事の段取りがあるからだ。
現在多くの企業でリモートワーク環境の構築が進み、従来の固定電話と電子メールに加えて、スマートフォン、ZOOMなどのテレビ電話・テレビ会議システム、Slackなどのチャットツール、SharePointのような情報共有ツール、あるいはBasecampのようなプレジェクトマネジメントツールなどを並行的に導入している企業も増えているのではないか?と思う。
そしてツールは増えているけれど、効率的な使い方をして企業内のコミュニケーション効果を高めている企業は多くないと私は見ている。
ここが2番目の問題なのだ。まずコミュニケーションとは何かということを全従業員に徹底する。そして相手の生産性を一番妨げない方法でコミュニケーションを行うことを考える。つまり全社的にコミュニケーションの生産性を高めることを考える訳だ。そうすると同時性を求められるZOOM会議などは極力減らして、メールやチャットで要件を伝え合おうということになってくるはずだ。メールとチャットでは前置きがなく、スレッドのあるチャットの方が効率的だから極力チャットを使おうという具合になるはずだ。
だが多くの企業はそこに至っていない。だからテレワークで生産性をあげることができないのである。
テレワークの生産性を上げようと思うのであれば、まずコミュニケーションの基礎を全社員が学ぶことであり、ITCリーダーがコミュニケーションツールの使い分けについてガイドラインを設けることが次のステップになるということだ。