セレンディピティという言葉があります。これは「何かを調べていて別のものを発見すること」を意味します。
「都市と野生の思考」(鷲田清一・山極寿一著 インターナショナル新書)を読んでいて、山際さん(第26代京都大学総長)の次の言葉に出会いました。
「安定性は多様性が担保してくれる」
この言葉は「好き勝手なことをする場が大学である意味ジャングルのようなところだ」「陸上で生物の多様性が最も高い場所がジャングルであるように大学も多様な研究を自由に行える場であるべきでしょう」「多様性を維持することがジャングルの安定性につながる」という文脈で使われています。
ここで山際さんが言いたかったことは、大学というジャングルを維持するために資金と世論の支えという資源が必要だということでした。
それはそれとして私は「安定性は多様性を担保してくれる」という言葉をもっと広い意味で理解したいと考えています。これは一種のセレンディピティでしょうが。
まずポートフォリオの考え方です。投資対象を世界の色々な国の色々な業種に広げるという多様化で安定性が生まれます。
次に人の付き合いです。色々な業種で色々な経験をした人と交わることでものの見方に広がりができて偏りがすくなくなります。
また職業能力も特定分野に偏っているより複数分野に跨っている方が安定性が高いことはパンデミックで明らかになったと思います。
もっと大袈裟な話をすると中国型の国家主導型の経済発展モデルと英米型の自由主義型経済発展モデルのいずれが最終的に安定的なのか?という議論にもつなげることができるかもしれません。
結論だけいうと私は自由主義型経済発展モデルの方が個人や企業という経済主体に多様性があるので最終的には安定すると考えていますが、それが実証されるにはもう少し時間が必要かもしれません。
このフレーズをこなれた日本語にして「多様性が安定性を生む」とすれば、心ある企業経営者にも刺さるでしょうね。