どんなに内容が優れた本であってもタイトルが時代に合っていないと売れないものですね。実は私は5年くらい前に「インフレ時代の実勢設計術」というキンドル本を書きました。アベノミクスが喧伝される中、日本にもインフレの足音が聞こえる日がくる、長い低金利の時代に慣れきって我々は今の貨幣価値も10年後20年後の貨幣価値は同じだと考えている。だがインフレが進むと貨幣価値は時間とともに低減する。インフレを視野に入れた生涯収支予想を立て、それにしった投資行動が必要だというのが趣旨でした。
本を書いてから数年間インフレは起こらなかったのでこの本が売れなかったのは当然でしょう。でもこの本をお買いになってそこに書いてあるグローバルな株式運用を行ってきた人はコロナウイルス騒動を乗り越えて金融資産を増やしたことだと思います。
さて文藝集住2月号に第一生命経済研究所の熊野首席エコノミストが「『悪い値上げ』傾向と対策」という記事を寄稿していました。
記事は「悪い物価高」とは、モノの値段は上がっているのに、給料が増えない状態のことだといいます。日本では過去30年ほど名目賃金はほとんど上昇せず実質賃金は1割程度減っています。そしてここにきてガソリンなど輸入品目の値上げにより物価高が進むと悪いインフレが進むことは間違いありません。超高齢社会に突入している日本では、厚生年金等の公的年金がシニア層の主要な収入源になっています。公的年金が物価上昇分だけ引き上げられると物価高の痛みは多少緩和されますが、マクロスライド制が導入されているので、物価上昇分だけ年金額が増えるということはありません。つまり年金生活者にとって総ての物価上昇は悪い物価上昇なのです。
さて熊野エコノミストは物価上昇の対策は「越境」だと述べています。
企業レベルでは低迷する国内市場にとどまらず、ネットを使って海外市場に進出を図り、働く人は会社という枠を越えて副業や兼業を考えなさいと言っています。
資産運用については円の枠組みを越えて海外資産での運用を考えなさいと言っています。
結論は「国内市場、会社、円を越える「越境」スキルを獲得することが、この値上げ時代を生き抜くために求められている」ということでした。