ニューヨークタイムズ(NT)はオックスフォードとエクセター大学の「受胎時の母親の食事と胎児の性別」に関する研究を紹介していた。研究は740名の初出産者に食事の状況をヒヤリングして行ったもので、結果は最も良く食事を取ったグループは56%が男児を出産し、最も食事が少なかったグループは45%が男児を出産した。
胎児の性別は父親から与えられるX,Yの染色体で決定されるが、受胎時の母親の栄養状態が、男子または女子の胚の発達に影響を与えるらしい。母親の摂取エネルギーが高いと男子が生まれる可能性が高く、低いと女子が生まれる可能性が低いらしいが、その理由は良く分かっていない。しかし先進国で長期的に男子の出生比率が下落している傾向は、母親の摂取エネルギーが低下している傾向と一致している。例えば米国では1965年から91年にかけて成人が朝食を食べる割合は86%から75%に下落している。
因みに動物についていうと、母親のランクがグループの中で高くて十分な食事が取れる場合、オスを出産する可能性が高いということだ。
先進国の栄養摂取量は貧困国のそれを上回るという前提の下、先進国と貧困国の男子の出生比率を比べてみた。まず日本の男子比率は1.06(女子1人に対して男子1.06人誕生)、米国1.05、英国1.05である。一方貧困国を見るとアフガニスタン1.05、エチオピア1.03、シエラレオネ1.03モザンビーク1.02だった。アフリカの貧困国と先進国を比べると先進国の方が男子出生比率が高い。このことは「栄養摂取量が多いと男子の出生率が高くなる」可能性があることを示唆しているが、決定付けるものではない(つまり貧富と男子比率の間には栄養以外の要素が関与しているかもしれないからだ)。
母親の栄養摂取状態が悪い状態の下で、男子出生比率が低下する理由を私は次のように解釈している。一般の女子に比べて男子の方が外部環境に対する抵抗力が低い。そこで母体の栄養摂取レベルが低いと母体は「外部環境が悪い」と判断して、胎児の性を女性にするような働きが起きるというものである。ただしこれは直感的な考察で、生物学的な裏付けを勉強したものではない。