金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

母親の食事が男女を決める?

2008年04月25日 | うんちく・小ネタ

ニューヨークタイムズ(NT)はオックスフォードとエクセター大学の「受胎時の母親の食事と胎児の性別」に関する研究を紹介していた。研究は740名の初出産者に食事の状況をヒヤリングして行ったもので、結果は最も良く食事を取ったグループは56%が男児を出産し、最も食事が少なかったグループは45%が男児を出産した。

胎児の性別は父親から与えられるX,Yの染色体で決定されるが、受胎時の母親の栄養状態が、男子または女子の胚の発達に影響を与えるらしい。母親の摂取エネルギーが高いと男子が生まれる可能性が高く、低いと女子が生まれる可能性が低いらしいが、その理由は良く分かっていない。しかし先進国で長期的に男子の出生比率が下落している傾向は、母親の摂取エネルギーが低下している傾向と一致している。例えば米国では1965年から91年にかけて成人が朝食を食べる割合は86%から75%に下落している。

因みに動物についていうと、母親のランクがグループの中で高くて十分な食事が取れる場合、オスを出産する可能性が高いということだ。

先進国の栄養摂取量は貧困国のそれを上回るという前提の下、先進国と貧困国の男子の出生比率を比べてみた。まず日本の男子比率は1.06(女子1人に対して男子1.06人誕生)、米国1.05、英国1.05である。一方貧困国を見るとアフガニスタン1.05、エチオピア1.03、シエラレオネ1.03モザンビーク1.02だった。アフリカの貧困国と先進国を比べると先進国の方が男子出生比率が高い。このことは「栄養摂取量が多いと男子の出生率が高くなる」可能性があることを示唆しているが、決定付けるものではない(つまり貧富と男子比率の間には栄養以外の要素が関与しているかもしれないからだ)。

母親の栄養摂取状態が悪い状態の下で、男子出生比率が低下する理由を私は次のように解釈している。一般の女子に比べて男子の方が外部環境に対する抵抗力が低い。そこで母体の栄養摂取レベルが低いと母体は「外部環境が悪い」と判断して、胎児の性を女性にするような働きが起きるというものである。ただしこれは直感的な考察で、生物学的な裏付けを勉強したものではない。

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私論・裁判員制度導入の理由

2008年04月25日 | 社会・経済

裁判員制度導入まで後1年となった。「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が平成16年5月21日に成立し、5年後の平成21年5月から実施されることが決まっている。最高裁判所もホームページで広報活動を行っているので、ちょっとのぞいてみた。すると漫画を使って「どうして裁判員制度を導入するのか?」という問いに対して「わかりやすい裁判を通じて司法への信頼を高める」という説明が出ていた。

だが私はこれは表面的・形式的な説明で、裁判員制度の導入を進めた人の真意は「犯罪に対する処罰強化を図り、犯罪抑止力を高める」ことにあるのではないか?と推測している。

こう考える理由は次のとおりだ。

日本の主要犯罪の検挙率は長期的に低下している。「犯罪白書」によると2004年の主要国の検挙率は次のとおりだ。( )内は1988年の検挙率。日本26.1%(59.8%) 米国19.9%(20.7%) 英国 20.5%(35.2%) ドイツ 54.2%(45.9%) フランス 31.8%(40.8%)

かって日本は検挙率において、主要国でトップだったが今ではドイツやフランスの後塵を拝している。平成8年の刑法犯総数は247万件で平成17年の総数は27%増えて313万件になっている。一方検挙件数は8年の139万件から17年の151万件と9%弱しか増えていない。

予算の制約から警察活動を強化できないとすると、司法・警察当局が別の方法で犯罪抑止を考えたとしても不思議ではない。

厳しい量刑が犯罪抑止力となる考え方がある。罰の重さを量る一つの尺度として人口10万人当たりの入獄者の数を比較して見る。圧倒的に入獄者が多いのは米国で、ロンドンのキングス・カレッジの研究によると、10万人に751人が刑務所に入っている。これは大人に限れば100人に1人が刑務所に入っていることを意味する。日本の入獄者は先進国の中ではかなり低く、63人だ。先進国に入獄者数を見ると英国は151名、ドイツ88名、フランス91名だ。因みに中国の入獄者は119名ただしこの数字は正式の裁判を受けずに、拘束されたり矯正施設に収容されているものは含まない。

ただし入獄者の比率だけを見て、米国の犯罪比率が極めて高いと判断すると統計を読み間違える。米国は他国に比べて、同じ罪でも量刑が重い。例えば強盗罪による平均受刑期間は米国で16ヶ月とカナダ5ヶ月や英国7ヶ月をはるかに上回る。NTは年辺りの懲役刑を受ける比率を見ると欧州諸国の中に米国を上回るところがあると報じている。

では何故米国の刑が重いかというと、米国の司法界に「厳しい量刑が犯罪抑止力となる」という考え方が強いからだ。

裁判の民主化は刑罰を重くする傾向がある。これはNTが報じていることなのだが、米国(州によって異なるが)では判事や検事が公選で選ばれることが多く、判事・検事は選挙民を意識したポピュリズムから量刑を重くする傾向があるらしい。別の言い方をすると、一般人は厳しい量刑を求める傾向があるという。

以上のことをまとめると「犯罪の増加と検挙率の低下に頭を痛めた司法当局が、犯罪抑止のため刑罰を重く運用することを考えた。その方法として一般市民の裁判への関心と関与を高めるため裁判人制度の導入を決めた」ということになる。

私はこれが裁判員制度の導入を企画した人達(誰かはしらないが)の真意ではないかと推測している。しかしそれが国や司法のあり方として良いのかどうかは良く考える必要がある。

米国は「富と成功に対する欲望・自己責任とセーフティネットの不足・複雑な人種構成・貧困層の高い犯罪率・高度に発達した市場取引・銃とドラッグの蔓延・厳しい刑罰による犯罪抑制」がセットになった社会である。これは日本とはかなり異なった社会である。

私は裁判員制度の導入に一概に反対するものではないが、導入に際しては色々考えるべきことがあると思っている。

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不況で潤うインド人

2008年04月24日 | 社会・経済

米国の不況で潤っているインド人がいる。それはインドから電話で米国に遅延債権の取立を行っているインド人だ。住宅ローンは税金問題や法律問題が複雑なので、遅延債権の取立は米国内で行われているが、シンプルなクレジットカードや自動車ローンの遅延債権は海外からの取立が増えている。現在のところ海外からの取立は5%程度と推定されるが、今後どんどん増える見込みだ。

追い風は米国の不況でクレジットカードの支払遅延が増えていることだ。2年前の延滞率は3.5%だったが、2007年第4四半期の延滞率は4.5%に増えた。ニューヨークタイムズ(NT)はプライスウオーターハウスの調査を紹介しているが、それによると2005年に米国で取立に回された遅延消費者債権は1,410億ドル(約14兆5千億円)だ。この内取立業者は36%相当の510億ドルを回収していて、その4分の1は利益となった。債権回収業者は、銀行やクレジット会社から延滞債権を安い値段で買い取るので、回収金額が買取元本を超えると利益が急増する。安いコストで回収金額を高めることは彼等の至上命題だろう。

NTの話を続けると、インドから債権取立を行うこコストは米国の4分の1だ。米国内では債権取立人の平均サラリーは6,500ドルだが、インドでは425ドルだ。もっとも取立金額が多いとボーナスが支払われる。ボーナスは時には1,000ドルを越える場合もある。インド人の平均月収が63ドルであることを思うと大変な高給である。

債権回収会社にとってインド人を使うメリットは、人件費の低さだけではない。良くトレーニングされたインド人の債権回収手腕は米国人を越えるそうだ。インド人は感情的にならず、債務者の話を聞くので回収金額が増えるということだ。

NTは債権回収の従事して豊かになったインド人は、スクーターやiPods、スオッチなどステータス・シンボル商品を買うがそれらのものは米国の債務者を多重債務に追いやった原因だろうと皮肉りながら締めくくっている。インド哲学ではないが因果は巡るとはこのことである。

色々探すと世の中には不況を逆手にとって儲ける商売があるのだ。日本のグレーゾーン金利問題でサラ金が過去の利益を吐き出し、その一部が弁護士に回った様に。

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増やすための運用か?使うための運用か?

2008年04月22日 | 金融

団塊の世代の資金運用を巡って知恵を絞っているのは、日本だけでなく米国も同様である。日本については今日(4月22日)日経新聞朝刊に「生保各社が退職金運用商品を拡充」という記事が出ていた。変額年金や投資信託を使って「元本を確保したうえで、チャンスがあれば増やしたい」という退職者のニーズを取り込む戦略だ。

たまたま同日ニューヨーク・タイムズ(NT)でも退職者の資産運用に関する記事が出ていたが、こちらのタイトルはMaking your money last as long as you liveである。「生きている限り、お金がなくならないようにする」という訳がニュアンスを良く伝えるだろう。

二つの記事を見て日米の退職者の資産運用に関する考え方の基本的な違いが分かって面白かった。米国の勤労者は退職するまで貯蓄をしたり、大きな住宅を買ったりして資産を形成する。その目的は老後その資産を取り崩しながら、老後を楽しく暮らすことにある。一方日本の退職者の考え方は・・・あるいは退職者をターゲットした資産運用会社の考え方は、出来るだけ退職金などの元本を減らさないに運用するというところにある。

NTによると米国で退職者に今売れている運用商品はフィデリティ投信のFidelity Income replacement Fundのような元本取崩運用型の商品だ。商品概要をFidelityのホームページとエクセルを使って分析すると概略次のようだ。

このファンドは株式約55%、債券約35%、短期金融資産約10%の割合で運用するバランス型ファンドで、毎月一定額の支払を行う。ホームページに「○○年にわたって毎月○○ドルの金額を受け取るには、最初に幾らの投資が必要か?」という簡単な枠がある。○○に数字を入れると瞬時に投資額が返ってくる。因みに毎月1,000ドル(約10万円)を20年間受け取りたいというと「当初に177,184ドル(約18百万円)投資しなさい」という答が返ってきた。

この投資の利回り(内部収益率)をエクセルの組込関数で計算すると、年3.195%になった。ついでに期間30年の毎月払いを計算すると利回りは3.586%になった。なおこの利回りはあくまで予想利回りで、毎月の受取可能額は資産運用状況により見直すことになる。

著名な投資理論家イボットソン氏はニューヨーク・タイムズで多くの退職者にとって長期間にわたる資産運用は複雑過ぎるので、このような分配型ファンドへの投資が良いのではないかという示唆をしている。

日本のフィデリティ投信に電話でこのような商品が日本にもあるのか?と確認したところ、日本にはないとのことだった。

最後にIncome replacement fundのようなファンドに対する私のコメントを述べよう。これは三つの点で退職者にとって王道を行くファンドだろう。第一に「増やすことを目的としているのではなく、使うことを目的としている」点だ。充実した老後を送るには元気な内に使えるお金を使うことである。しかしこのタイプのファンドはお金を貯めることを人生の目的にしている人には向かない。

第二に株式・債券とバランスが取れたファンドということだ。しかもプロが運用する。個人は必要以上にリスクを取り過ぎたり、逆に避け過ぎる。長期にわたって安定した運用成果を上げるにはプロに任せた方が良い。第三にシンプルということだ。元本をヘッジするためにコストかけるようなこともなく、シンプルなところが良い。

話がやや細かくなったが、日米の個人向け運用商品の違いを見ていると個人資産の運用姿勢やその後にあるライフスタイルが見えてきて興味深い。

なおもう一言付け加えるならば、日本より金利水準が高い米国の予定利回りが3%前半で設定されていることだ。日本では2%程度の予定利回りを想定した方が良いということだろう。

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日経とFT、どちらがホントでどちらがウソ?

2008年04月22日 | 社会・経済

今日(4月22日)の日経新聞朝刊に小さな囲み記事で「欧州連合のマンデルソン通商担当委員は、英国投資ファンドのJパワー(電源開発)株買い増しについて日本政府が中止を勧告したことについて『日本政府の判断を尊重している』と述べた」と報じていた。ところが同日ファイナンシャル・タイムズ(FT)は「マンデルソン氏、貿易障壁について東京をとがめる」というタイトルで「欧州の通商責任者は日本が貿易と投資の障壁を高めながら、他国が経済開放策を取っていることを悪用していると非難した」と報じている。

同じ人の話を、同じ時(昨日)に聞いて、これ程違う記事が作られて良いものなのだろうか?と私はある種の恐怖感を感じている。日経の貴社はマンデルソン氏の言葉を聞き違えたのだろうか?それとも何か特別な意図があって歪曲した記事を書いているのだろうか?

念のためFTのタイトルを原文で紹介しておくとMandelson raps Tokyo on trade barriersである。Rapはラップ・ミュージックのラップで「叩く」とか「とがめる」という意味である。

鎖国時代には、外国使節と幕府の役人双方の顔を立てるために間に立つ通訳が敢えて誤訳を行うことがあった。また秀吉の朝鮮出兵(文禄・慶長の役)の後でも、秀吉と朝鮮側使節の間に立つ小西行長達が戦争終結を目指して、捏造した通訳を行うということがあった記憶する。

もちろんFTの記事が正しく、日経の記事が何か特別の意図を持って政府(経済産業省と財務省)に媚びた記事を書いていると断言する訳ではない。FTにも欧州の権益拡大という固有の主張や利害関係があるはずだ。大切なことは世の中のことを正しく判断しようと思うならば、複数のニュースソースを持つ必要があると感じる次第だ。

ついでだからFTの記事のポイントを少し紹介しておこう。

「マンデルソン氏はJパワーの株を買い増ししようとするTCIファンドの件だけに言及しているのではなく、より広いレベルで日本の対内直接投資のレベルが低いことに言及していると言った。」「日本にとってのリスクはJパワーの件が海外で日本が外国勢の投資を歓迎しないと解釈されることである」

「日本は海外からの投資が貿易、技術とマネジメントスキルをもたらしてきたことを認識するべきである。」

「欧州から日本に対する直接投資のシェアはたった3%に過ぎない」「日本が英国とオランダだけで1ドル投資するのに対して、欧州の企業はたった3セントしか投資することができない」

以上を読む限り、マンデルソン氏が言いたかったことは「Jパワー問題で政府判断を尊重する」ということではなく、「日本の対内直接投資の障壁を低くしてくれ」ということだろいう気がする。無論外交辞令で政府判断を尊重する・・・という位のことは言うにしてもだ。

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