金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

リビアを見ればエジプトが良く見える

2011年02月23日 | 国際・政治

少し前エジプトで100万人の反政府デモが行なわれた時は、この国はどうなるのか?という不安を持った人が多かったろう。だが今リビアでカダフィ大佐側が民衆に向かって無差別な発砲を行い200名以上の死者が出ている状況を見ると、ムバラクの退任は随分平和的に行なわれたと思われる。

米国の外交問題シンクタンク・外交問題評議会Council on Foreign RelationsはLibya's Leadership Crossroadsというタイトルで短いレポートを掲載している。その書き出しは「中東に広がった騒動の中でエジプトの民衆蜂起が最良のものとすると、カダフィの政権維持のための残忍な努力は最悪のものだ」というものだ。

エジプトで専制政権の打倒が比較的平和裏に行なわれたのに対し、リビアでは何故流血の惨事が起きているかという問題を考えると、エジプトでは軍が民衆を支持することで、自らの正当性を保ったのに対し、リビアの軍部はそのような役割を果たせなかったことが大きいと思われる。リビア軍は他のアフリカ諸国からの傭兵が多く入っているからだ。

現在リビアの反政府派は、同国東部のベンガジ(第二の都市)を中心に東側を押さえカダフィ政権と対峙を続けている。予断を許さない状態だ。

リビアは世界12位の産油国で、イタリア・ドイツ・フランスは同国の原油の半分以上を輸入しているので、リビアの混乱が欧州経済に与える影響は甚大だ。

外交問題評議会は「暴力と残虐行為により、原油の輸出が妨げられることが起きるならば、欧州の主要国は、武力介入を含むより強力な次の手段を考えざるを得なくなるかもしれない」と結んでいる。

☆   ☆    ☆

リビアの刻々と変わる情勢の分析は専門家に委ねるとして、本当の国の強さはどこから来るのか?ということをちょっと考えてみたい。

エジプトの政権交代が平和裏に進むという前提の下、エジプトとリビアの対比で考えると、エジプトにはムバラクという独裁者に対して、軍部あるいは抑圧されていたとはいえ、イスラム同胞団のような中立ないし反対勢力が存在したが、リビアではそのような勢力が存在しないことが指摘できる。

私は早晩カダフィ政権は倒れると見ているが、その後権力の真空状態が発生し、先が読めない事態が起きると予想される(後段は専門家の見方)。

つまり石油市場や金融市場がリビヤ騒乱に怯えているのは、ポスト・カダフィが予想が着かないことにある。

話を国の強さに戻すと、健全な反対勢力を持つことが国の強さ、つまり安定性を保つ有効な手段であることが分かる。

来年度予算を巡って日本はまさに政治的混乱の最中にある。この原因は09年の総選挙で民主党が大勝するまで、自民党の一党独裁が続いたことの反動ではないか?と考えられるのである。

健全な批判勢力を育てるということは、国や会社にとって生存の必要条件なのである。

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伊香保温泉、のどか旅行

2011年02月23日 | 旅行記

アラブ・北アフリカを中心に世界は激動している。だが伊香保温泉の少し濁ったお湯に体を沈めてぼんやりしていると、実にのんびりする。

2月20日午後2時前森秋旅館に到着。ここはバスターミナルから近くて便利だ。チェックインまで時間があるので、ワイフと石段街へでかけまず伊香保神社を参拝。

次に石段下の「旧ハワイ王国中日代理公使別邸」を見学して、それから「楽水楽山」でコーヒーを飲んだ。この喫茶店は伊香保の有名旅館「千明仁泉亭」の中にある。次に伊香保に来ることがあれば、ここに泊まり夕食後「楽水楽山」でスコッチのシングルモルトを飲みたいものだ。

Rakusui

さてハワイ公使別邸だが、写真のとおり普通の民家という感じで、入場料も取らないし、管理人もいないという大らかさが良い。

Hawai

明治時代、伊香保は箱根・日光と並ぶ大避暑地だった。外国人にとっては蒸し暑い日本の夏をいかに過ごすか?ということが大きな問題だったのだろう。伊香保で時間があれば立ち寄る値打ちのあるところだ(無料だし)

Hawai2

最後に「保科美術館」に行き、小林かいちや竹久夢二の絵を見た。夢二の薄幸そうな美人画は余り好きになれないが、小林かいちは良かった。入館料は1,000円。保科美術館は伊香保の坂の下の方にあるので、森秋旅館に戻るのは大変だと身構えていたが、循環バス(100円)に乗ると簡単に戻ることができた。

Musiam

一度は見ておいて良い美術館だろう。

伊香保温泉の人気は草津温泉に押されてイマイチだと聞く。我々が乗った草津行きの特急列車でも渋川で降りた人は一握りだった。だが伊香保の湯は中々良いし、交通の便も良い。

洒落た旅館やバーを見つけて、明治の文人墨客の気分になるのも良いかもしれない。因みに千明仁泉亭は徳富蘆花の定宿だったそうだ。

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日本三大うどんの一つを食す

2011年02月21日 | まち歩き

「日本三大何々」の中でうどんはかなりマイナーだろう。うどんの横綱格は讃岐うどんだが群を抜いているだけに二番得三番手の知名度が落ちる。二番手は秋田の稲庭うどん、三番手は群馬の水沢うどんという説が紹介されていたが、稲庭うどんはさておき三番手の水沢うどんはどれだけ全国区で知名度があるのだろうか?

だがそんな詮索は専門家に任せるとして、今回は日本三大うどんの一角を占める水沢うどんを食べる旅に出た。いや正確にいうと「伊香保温泉一泊二日の旅」に出たので途中水沢うどんを食べることにした次第だ。

「伊香保一泊二日の旅」は、JR東日本が伊香保の森秋旅館と提携して作った「ホテル+JR料金」のパック旅行だ。一泊二日運賃込みで13,000円というので夫婦二人で申し込んだ次第。ただし日曜出発・月曜帰着ということなので今日2月21日は有休休暇とした。

さて日曜日(20日)渋川駅に昼前に到着して、「水沢うどん」を食べるべく、バスで伊香保の手前の「ビジターセンター」に向かった。渋川駅から伊香保に向かうバスは15分に1本程度はある。渋川-伊香保の料金550円はやや独占価格的に高いという気がする。

さて「水沢うどん」のことは深く調査をせず、絵地図を見て「ビジターセンターから少し歩けば着くのではないか?」と考えていたが、これがとんでもない間違いだった。「水沢観音」の大きな立て札の下には小さく3kmと書いてある。若いカップルならいざ知らず中年夫婦が道路脇に雪が残る道をトボトボ歩く訳にもいかず、思案していたら具合良く空のタクシーが通りかかったので、これで水沢うどんと観音をいっぺんに済ませることにした。

12時半位なのでまずうどん店に直行。タクシーの運転手さんに任せると、「山源」という店に連れていってくれた。釜あげうどん800円を注文。中々出てこないので回りを見回すとどのテーブルにも注文品が出ていない。待つことanother十数分、空腹が頂点に達する寸前でうどんが一斉に出てきた。後でタクシーの運転手さんに聞くと、うどん店では注文をある程度まとめて「ゆで」に入るので、遅れることがあるという話だった。

うどんを食べた後、タクシーで水沢観音の駐車場まで連れていってもらう。

Mizusawa2

Mizusawa1

水沢観音の参道にはうどん屋が30軒程(正確ではない)軒を連ねている。皆水沢観音の門前町に発達した店だ。水沢観音の由来はよく知らないが、JR渋川駅辺りから榛名山方面を眺めると水沢山が聳えている。榛名山というのはこの方面の複数の峰の総称で最高峰は掃部ケ岳(1449m)で、水沢山(1194m)は外輪山の一つだが、実に立派に見える。

勝手な想像を述べると、立派な山の下にお寺ができ、お寺を参拝するする人のためにうどんの店ができたということなのだろう。境内の杉は何も語らないがこの辺りの経緯を知っているのだろう。

Sugi

水沢観音の境内の池の中には弁天様が祀られていた。写真が上から目線になって相済みません。

Bennzaiten

さてタクシー料金だが、ビジターセンターからうどん屋に行き、うどんを食べている間待って貰って(ただし待ちメーターなしの約束)、観音様拝観後伊香保の森秋旅館まで送って貰って3,600円程だった。

後で調べて分かったことだが、水沢観音に公共交通機関(要するにバス)で行くには、高崎駅から日に数本しかないバスを利用する必要がある。ただしバスの間隔が開いているので勝手は良くない。

従ってマイカー・レンタカーがないと、伊香保からタクシーを使うのが一番良さそうだ。うどん食べ待ち付3,600円~4,000円(ビジターセンターは伊香保より水沢に近い)というのが目安だろう。

さて昼飯に食した釜あげの水沢うどん、ボリュームは十分でうどんの歯ごたえ、出汁とも良かった。さすが三大うどんの一つ!と言いたいところだが、「日本三大うどん」は「日本三景」程定着していはいないと私は考えている。水沢うどんの一層の精進に期待する。

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中国の高速鉄道にはご用心

2011年02月20日 | 社会・経済

ニューヨーク・タイムズに中国の鉄道大臣・劉志軍氏Liu Zhijunが首になったという記事が出ていた。劉大臣は汚職の嫌疑で解雇され、党の懲罰委員会の尋問を受けている。だが大臣級の大物が単なる汚職嫌疑で解雇されるというのは中国では稀なケースだ。ニューヨークタイムズは劉大臣の解雇の背景にはもっと大きな問題が潜んでいるだろうと推測する。

大きな問題は幾つかあるが、その一つは高速鉄道の安全性に関する問題である。タイムズは次の鉄道大臣と目されるSheng Guangzuが「質と安全を鉄道建設の中心課題とし、安全性をトップ・プライオリティにする」と述べていることから、劉大臣が推し進めた鉄道網建設に安全上の大きな問題があるのではないかと推測している。

今のところ高速鉄道の事故は起きていない(在来線では時々事故があるが)。しかし鉄道省に関係の深い人物の話では基礎のコンクリート(枕木等か?)の材質が安物で、数年の内にレールの直線性が劣化し、現在の速度を維持できなくなる可能性があるとということだ。詳しくいうと、現在の新幹線の速度は時速約350kmだが、5年以内に300km以下での走行にしか耐えられなくなる可能性があるということだ。

強いコンクリートを作るには、大量のフライアッシュ(飛散灰)が必要だが、石炭燃焼時の副産物であるフライアッシュの確保が間に合っていないということだ。

また中国は鉄道建設コストを欧米・日本のレベルに較べて大幅に抑え込んでいる。中国の鉄道建設コストは1マイル15百万ドルだが、米国では40百万ドルから80百万ドルかかると予想される。いくら中国の人件費が安いとはいえ「手抜き」が多い感じがする。

JR東海の葛西社長はFTに「中国は日本のデザインに基づく列車を25%速い速度で走らせている。中国の鉄道省は我々と同じレベルで安全性に注意を払っているとは思えない」と見解を述べている。

これ程建設コストを抑えているにも関わらず、中国の民生銀行のレポートによると、鉄道省の債務比率は現在で総資産の56%で、2020年には70%に達する可能性がある。同レポートでは新幹線の利用率が高くても、20年間は赤字続きということだ。

新幹線の切符代が在来線の数倍という高さにも国民の非難が高まっている。混んでいる上、ヤミ切符はさらに高いからだ。劉大臣が解雇だれた時期が新幹線に対する国民の不満が高まった中国の正月直後というのは、重要な意味を持つのではないか?とタイムズは結んでいた。

☆   ☆    ☆

高速度で成長を続ける中国経済を象徴するのが中国の高速鉄道網だ。だが建設スケジュールと予算を重視する余り、安全性が軽視されていたことは否めない。日本の新幹線を真似した車両で、十分なテストもせず、25%も早く走らせているとすれば大変危険な話だ。

公害、環境汚染問題など高度成長と並行して、色々な問題が中国では高まっている。高速鉄道も大きな懸念材料になってきたかもしれない。

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鳩山の激しい菅批判、なんとも見苦しい

2011年02月18日 | 政治

昨日小沢元代表に近い16人の衆院議員が会派からの離脱を表明した民主党。この16名は比例代表で選ばれた議員で順位は下位だ。このまま行くと次の総選挙では当選確率の低い連中なので、一か八かのdeseperateな行動にでたと見るべきだろう。

同じ日の夜、鳩山前総理は大畠国土交通大臣や海江田経済産業大臣らグループの幹部と会談して「今の党は私が作った民主党ではない。菅首相がめちゃくちゃにしてしまった」と、菅総理による党運営を激しく非難した。

私は菅首相を支持するものではないが、相対的にいうと鳩山前首相よりはましだ。特に与謝野氏を経済財政政策担当相にすえて、財政再建やTPP参加に取り組もうとしている姿勢は評価できる。

前首相が現職の首相を激しく批判するのは、会社で言えば辞めた社長が現社長を酷評するのと同じだ。金融マンであれぼこのような会社に融資をする時は慎重になるものだ。欧米の洗練された民主主義国家でこのようなことがあるだろうか?例えばブッシュ前大統領が公然とオバマ大統領を批判するとか。いやこのようなことは日本でも余り見かけない。

現職の時、たとえ大功を上げたとしても、退けば後任を批判しないのがリーダーのあり方というものではないだろうか?まして日本の外交をメチャクチャにした「敗軍の将」である鳩山前首相に政治を語る資格はあるのだろうか?

鳩山氏の「米軍方便」発言を捉えて今日の日経新聞は「このような政治家が昨年6月まで首相を務めていたかと思うと、背筋が寒くなる」と筆誅を加えている。

それはそれとして小沢系の反旗で菅政権は窮地に陥った。24日から始まる「子ども手当」法案審議が一つの山になると思うが、政局に対する個人的な予測を述べてみよう。

菅政権として残された手段は「子ども手当」法案他幾つかの法案の大幅修正か廃案と差し替えに、自民党の協力を得て11年度予算案(暫定か?)と赤字国債法案を通すより方法はないだろう。自民党としても「責任与党」として、景気や金融秩序に大きな懸念を及ぼす予算案の不成立の引き金を引くことが国民の支持を得られるかどうか懸念するはずだ。

与謝野氏は財務省や経済産業省の信頼が高いので、水面下ではこのようなシナリオ作りが進んでいるのではないだろうか?

この場合当然年度明け早々に総選挙が予想される。その選挙では自民党・民主党が「責任政党」として「財政再建・消費税引き上げ・TPP参加」等について、ポピュリズムを排し、実行しなければならずかつ努力すれば実現可能なマニフェストをぶつけ合うことを期待したいものだ。

この過程で、小沢系議員や鳩山前首相のような「背筋が寒くなる」政治家を排除することができるのであれば、今日のpolitical mess(政治的混乱)もまた意味があることになるが果たしてそのようにモノゴトが進むかどうか・・・・は不明である。

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