金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

民法(相続法)変わって争い増える?

2018年01月18日 | 相続

昨日法制審議会(相続)が法改正の骨子を発表したことがマスコミの関心を集めた。私のところにも某ラジオ局から「夜の番組の中で10分程専門家のコメントが欲しい」という依頼が来たので知り合いの弁護士を紹介した。

その弁護士の話を聞いていると法律専門家の間でも新しく創設される「生存配偶者の居住権の内容がまだ明確でなく困ったね」という意見もあるというところが印象に残った。

およそ法律には事実後追い型と理念先行型があると思われる。事実後追い型というのは英米法的な考え方で既成事実で積みあがったことを法制化しようという考え方で理念先行型というのはある理念、この場合は「生存配偶者が遺産分割で住む場所を失う事態は避けるべきだ」という理念に基づいて「居住権」という新しい概念を持ち込んだと思われる。

しかしこのような権利の概念が一般に受け入れられるかどうかはもう少し見てみる必要がある。

半世紀ほど前に法学者の川島 武宜氏は「日本人の法意識」の中で「法律を作っても、それが現実に行われるだけの地盤が社会の中にない場合には、法律というものは現実にはわずかしか時には全く行われない」と述べている。

また明治の法学者穂積八束氏はフランスからコピーした民法を制定しようとする動きに対し「民法出でて忠孝滅ぶ」という言葉で反論を述べた。

生存配偶者にとって住む場所は大切だが多くの人が今まで住んでいた場所に住み続けるという前提でものを考えるのが実態に即していると判断して良いかどうかは疑問の残るところだ。夫(あるいは妻)を失った機会に老人ホームに移ることを選択する人もいるだろう。

また法改正では「介護寄与」についても従来より認める方向にあるようだ。だが介護する側も高齢化してくると寄与を認められるより、お金を払って誰かに介護を任せて欲しいというニーズもあるかもしれない。

高齢化社会における個々人のニーズは壮年社会より幅が広いのではないだろうか?

その幅広いニーズを法律で方向付けることはそもそも無理なのではないか?と私は考えている。

また仮に民法が改正されたとして、その内容を完全に把握することは現時点では専門家でも「困ったね」という状態だから条文や解釈が整ってきても多くの高齢者には内容把握がかなり困難なのではないだろうか?

悪いケースを想定すると新たな権利が生まれるだけ権利を主張して争いが増える可能性もあるのだ。

「民法出でて忠孝滅ぶ」をもじれば「民法変わって争い増える」のである。

自分や配偶者にとって「尊厳ある生き方」をしようと思えば、結局のところある程度の収入や取壊しに耐える資産を確保しておくことに尽きるのではないだろうか?そして出来るだけ子どもや孫の世話にならずに人生を全うするような準備をすることなのだろう。

もちろん準備をしたからといって子どもや孫の世話になることは多いと思う。だが準備をせず世話になったという思いを世話する人に残すのと準備をした上で足りないところの世話をしたという思いを残すでは残された者の思いは違うだろう。「出来るだけ世代で完結する」という思いを残すことがこれから続く高齢化・少子化社会では必要なことではないだろうか?

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公的年金、繰下げ受給のブレークイーブン年齢

2018年01月18日 | ライフプランニングファイル

昨今公的年金の繰下げ支給が話題になっている。支給開始時期を遅くすると支給額が増える仕組みだが、総受取額から見た損得勘定はどうなるのだろうか?

日本年金機構のHPによると、増額率は「繰下げ月数×0.007」である。

つまり1年繰り下げると8.4%増える。

仮に100万円受給できる年金を1年繰り下げると1年後から貰える年金は1,084,000円になるということだ。

このことから総受取額が同じになる年齢を簡単に計算することができる。

65歳の人がn年で受け取る年金額を

100,000円×n ①

として1年後から受け取る年金額を

108,400円×(n-1)②とする。

①と②が等しくなるnがブレークイーブンの年数だ。

このnは12.9になる。つまり65歳に12年10ヶ月を加えた年数77歳10ヶ月以上長生きした場合繰下げ支給で受け取る年金総額が大きくなる。

年金の受取開始時期を変えてもnは変わらない。つまり67歳から年金を受け取るとすれば78歳10ヶ月がブレークイーブンになり、69歳から受け取るとすれば80歳10ヶ月がブレークイーブンになる。

もっとも実際に繰下げ受給をするかどうかは繰下げ後の年金受給までの収入源の有無や年金受給額の有無による税や社会保険料の違いまで考慮する必要がある。

かなり面倒な計算になるのでやめることにした。なぜなら私は繰下げ受給を選択せず、既に年金を貰っているからである。

ただ選択肢を持っている人には繰下げ受給は検討に値するオプションだろう。

 

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Melt-upラリーでダウは最速で大台更新

2018年01月18日 | 投資

昨日(1月17日)米国株式市場は高値を更新した。ダウの引値は26,115.65ポイントと大台を超えた。25,000ポイントを超えたのが今年の1月4日なので営業日ベースでは僅か7日間で1,000ポイント上昇したことになる。1,000ポイントの大台越えの新記録だ。

市場ではこの状況をMelt upラリーと呼ぶ声が上がっている。

Melt upとは相場に乗り遅れることを恐れた投資家が買い急ぐため起きる株価急上昇のことだ。

実は約1年前にも私はブログでMelt up市場のことを書いた。そこではMelt up市場の後には通常Melt downが起きるという相場の格言を引用したが、実際にはその後Melt downは起こらず、相場はほぼ一直線に上昇を続けている。

強気相場の持続は投資家の見方を変える。

WSJはバンカメ・メリル・リンチの投資家調査の結果を報じているが、今月の調査では「投資家の多数は株価のピークは2019年またはそれ以降に来ると予想している」。先月の予想では「株価のピークは今年の第2四半期」と予想する投資家が多数を占めていたから、僅か1ヶ月の間に多くの投資家が上昇相場の予想寿命を1年以上伸ばした訳だ。

そこで相場に乗り遅れてはいけないという判断が働き、買いが買いを呼ぶ上昇相場が起こり、最速の大台越えになった訳だ。

米国株高を受けて日経先物CMEも300ポイント上昇して、24,000ポイントを超えている。今日の日経平均が24,000ポイントを超えてオープンする可能性は高いだろう。その橋頭保を維持できるかどうかはまだ分からないが。

 

 

 

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1.5周遅れの自筆遺言証書方式の改正

2018年01月17日 | 相続

昨日(1月16日)法制審議会(民法・相続)が開催され、「配偶者居住権」の創設などを盛り込んだ民法改正などの要綱をまとめた。法務省は22日召集の通常国会に関連法の改正案を提出する予定だ。成立すると1980年以来の抜本的な制度改正になるそうだ。

改正案の中に「自筆証書遺言の方式緩和」という項目がある。現行法(民法968条)では、自筆証書はすべて手書きで作成されなければならない。改正案では「財産目録」のパソコン等による作成を認めようというものだ。

かなりの改正ともいえるが、私はこれを「先進諸国に較べ2周遅れを漸く0.5周ほど取り戻したもの」という評価を下している。なおこれは筆者個人の意見であり、日本相続学会の見解でないことをあらかじめお断りしておく。

まず先進国に較べ何故2周遅れなのかを説明しよう。先進国ではパソコンが普及するはるか前から遺言書はタイプライターで作成されていた。その流れでパソコンが普及して「ワード」で遺言書が作成されるようになったのは当然の流れである。

おそらく「自筆証書遺言は手書きでなければいけない」という規律を持っている国は日本以外では稀なのではないか?(皆無と言いたいが総ての国の事情を知っている訳ではないので稀とした)。

つまりここで1周遅れているのだ。

次の最近のアメリカやカナダの例を見ると「相続キット」というソフトウエアが1万円前後で販売されていて、これを使うと「遺言書・任意後見契約・リビングウイル(終末期医療)に関する委任契約」などが簡単に作成することができる。

ここでまた1周遅れている。つまりパソコンをタイプライターの代替品として使うところで1周遅れ、パソコン(IT技術)を意思決定や意思表現をサポートするツールとして活用することでまた1周遅れているのだ。

今回の改正案は手間のかかる「財産目録」の作成のパソコン化を認めるという点で最初の1周遅れの半分を取り戻したと私は評価している。

私の基本的な主張は「自筆証書のすべてのパソコン作成を認める」というものだが、その実施には大きな問題があった。それは「パソコンで作成された遺言書が本人が自由意志で作成したものかどうか担保する方法」である。パソコンで作成して本人が自筆で署名・押印するという方法では本人が自由意志で作成したことを保証するとは言い難い(偽造が容易であう)。

そこで本人が自由意志で作成したことを担保するには「証人」が必要だ。実際アメリカでは遺言書は利害関係者以外の2名の証人の前で署名して有効になるとされている。

ところで今回の改正案では「自筆遺言書の保管制度を創設」することが提案されている。これは法務省に「遺言書」の保管を申請する制度だ。法制審議会の案では「遺言書の保管が申請された際には、法務局の事務官が、当該遺言の・・・適合性を外形的に確認し、また遺言書は画像情報化して保存され、全ての法務大臣の指定する法務局からアクセスできるようにする」と述べられている。

ここで述べられている法務局の事務官の役割はアメリカのnotary publicと同様と考えてよいだろう。Notary publicは日本語では「公証人」と訳されるが、日本の公証人とは基本的に異なる。日本の公証人には判事経験者など法律の専門家であるが、アメリカのNotary publicは郵便局(全部ではないが)でも行っている「本人と自由意志の確認制度」なのである。つまり身分証明書等の本人確認書類を提示し宣誓を行ってnotary publicの前で署名した書類は、本人が自由意志で作成したと認められるのである。

以上のことを踏まえて私は「せっかく法務局に自筆遺言書の保管制度を創設するのであれば、事務官の前で遺言者本人が署名するパソコン作成の遺言書は有効とする」とすれば良いと考えている。遺言書を画像イメージで補完するより、文字データで保存する方が後々の検索などはるかに便利だと思うのだが如何なものだろうか?

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増えてきた「ゆうちょ」間の電信振替

2018年01月16日 | ライフプランニングファイル

IT時代は一物多価の時代です。インターネットで色々なサイトをショッピングすると同じ商品でも安く買うことができます。各種のサービスも申込方法や決済方法により支払金額が変わってきます。わかりやすい例では、新幹線の切符をエクスプレス予約で購入すると東京=新大阪間が1,080円offになるなどです。エクスプレスの年会費が1,080円だから片道で元が取れることになります。エクスプレス予約にはIC早得など色々なサービスがありますから、使い方次第でもっとメリットを引き出すことができます。

さて本題に戻ると、私は今ある団体の年会費を集める作業をしています。年会費はゆうちょ銀行の振替口座に送金してもらうのですが、今年の送金状況を見ると「電信振込」が昨年より増えていることに気付きました。

振替口座にお金を送る方法はいくつかあります。以下送金額5万円未満で送金方法別の手数料を列記します。

・窓口で送金130円・ATMで送金80円(払込取扱票をスキャンさせる方法)・ATMで電信振替 月3回まで無料・ゆうちょダイレクトで振替 月5回まで無料

つまりゆうちょ間の電信振替を利用すると月一定の回数までの送金手数料を削減することができます。

私が関わっている団体の会員の方も賢くなって手数料のかからない方法を選択する人が増えてきたようです(笑)。

1回80円の手数料でも金利で稼ごうと思うと大変ですね。ゆうちょ銀行の定額預金の金利は年0.01%ですから100万円を1年間預けて受け取る利息は100円です(税引き前)。そこから20%の源泉税と0.315%の復興特別所得税が差し引かれますから手取りは80円にも届きません。

つまり80円は小さな金額ですが、100万円の年間利息に相当すると考えるとバカにしたものではありませんね。

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