金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

トランプ大統領の経済政策、不透明度は過去最高レベル

2018年04月03日 | 投資

WSJにUnder Trump,a storong Economy but murky policy outlookという記事があった。「トランプ政権下、強い経済と不透明な経済政策」という意味だ。Murkyを辞書で確認すると「(闇が)濃い、濁っている、後ろめたい、恥ずべき」という後ろ向きの意味が並んでいるので、単に「不透明な」というより闇に包まれたというニュアンスが強そうだ。

記事によるとスタンフォード大学のニコラス・ブルーム教授達は「経済政策不確実指数」という指数は開発した。この指数は経済政策に関する新聞記事の中のUncertain(不確実な)とUncertainty(不確実)という言葉を追跡して指数化したものである。

トランプ大統領就任後の13か月間の経済政策不確実指数は平均140.2でオバマ前大統領の同じ期間の平均126よりも高かった。

過去の大統領の経済政策不確実指数を見ると、レーガン104、父ブッシュ109、クリントン89、息子ブッシュ107、オバマ135、トランプ140となっている。

オバマ大統領時代はリーマンショック後の大不況期で自動車メーカーの救済、連銀の非伝統的な金融緩和政策が行われた時期で、議会は税制政策を巡り、絶えず民主党・共和党の瀬戸際政策が展開されていた。

本来経済状況が好調な時は経済政策は見通しが良いと思われるのだが、なぜ絶好調に近い経済状況の下で経済政策の不透明度が高まっているのか?

指数の開発者の一人ブルーム教授は「その原因の一部は貿易政策などでの大きな政策スタンスの変更があったことで、もう一つは無秩序な意思決定プロセスにある」と不確実性が高まっている原因を分析する。

同教授は「トランプ支持者たちは、経済政策の不確実性はトランプが選挙期間中に公約したことを実現している結果である主張するだろう」と述べるが、同時に「トランプ大統領の経済政策に関する懸念は、経済に『不必要なコスト』を課している」と述べている。

理論的には、経済や経済政策の不確実性が高まると、企業は投資や雇用を抑制するので、経済活動はスローダウンする。しかし足元の状況はトランプ政権の経済政策の不確実性が企業活動全般にブレーキをかけるような事態を引き起こしてはいない。

ただし投資の世界では、ブロードコムによる買収に対し政府が待ったをかけたクアルコムの株価が急落したり、最近大統領がツイッターで攻撃の矛先を向けたアマゾンの株価が急落するなど、想定外の事態が起きいている。

時価総額が大きいハイテク銘柄の急落は、市場平均株価を押し下げ、コレクションを引き起こすかもしれない。そうなってくると消費者のセンチメントに変化が現れ、経済活動に影響が及ぶ可能性がある。

経済政策の不透明度が高いということは軽視するべき問題ではないだろう。

 

 

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人事部が人工知能を使い始める~アメリカの話だが

2018年04月02日 | デジタル・インターネット

人工知能に関する記事を新聞で見ない日はまずないだろう。

もっとも現在の人工知能はまだまだよちよち歩きの状態で人間が教え込んだ範囲の作業を行うに過ぎないが、

教え方を間違うと人工知能が人間を支配する可能性があるかもしれないことを示唆する記事に出会った。

WSJにWhat's on your mind? Bosses are using Artificial Intelligence to find out「何を考えているの?その発見に上司は人工知能を使い始めている」

記事は中規模クラスの鉄鋼メーカーが、従業員に所属組織をどう感じているか?を自由回答形式で記述させ、それをUlimate Software Groupが開発したXanderという人工知能を使って、分析していることを報じている。

人工知能はテキストブロックを分析して、従業員が楽観的か、混乱しているか、怒っているかなどを分析する。

米国では生産性の向上を図るために、以前から人工知能を使い始めているが、幾つかの会社は「従業員が言っていることと感じていることの違い」を探り出すために人工知能の利用を始めている。

人工知能は人事部門の生産性向上につながっているそうだ。

人事部門での人工知能の利用には、批判や懸念の声もある。例えば感情の表現は言葉ではなく、表情そのもので行われる場合が多いので、人工知能が文章だけで従業員の本当の気持ちを理解できるのか?という批判だ。

Xanderを開発した会社は「Xander(人工知能)は常に正しい答を得るとは限らない。しかしそれは人間も同じ」と述べている。

人が人を評価する人事考課というものは悩ましい。従来直属上司が部下を判断するのが人事考課だったが、最近では部下や同僚の評価も取り入れる多面評価というシステムを導入する会社も増えていると聞く。

その内日本でも多面の中の1人に人工知能が入る日が来るかもしれない。

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高度情報化時代を生き抜くには情報を熟成させることが必要

2018年04月01日 | うんちく・小ネタ

明日(4月2日)某所で新入社員の方に講話をすることになっている。

これから社会人になっていく人は、我々が経験したことのない環境変化を迎えることになる。一つは高齢化社会だ。話をする会社の定年年齢は60歳で65歳まで雇用延長制度を採用しているが、やがては70歳ぐらいまで定年延長を行うことになるだろう。長い間働くためには、雇用される能力を持続する必要がある。つまり勉強を持続することが必要なのだ。

また遅かれ早かれ色々な分野で人工知能AIが進出してくる。単純作業はやがてAIに奪われる。つまりAIに奪われないような能力を身に着けていくことが必要なのだ。

タイトルは「高度情報化社会の仕事術入門」というやや大袈裟なものにした。

ポイントは現在のIT技術を活用しながら、効率よく「自己研鑽の時間を捻出する」ことにした。

では捻出した時間で何を研鑽するのか?

それは「情報を熟成させ、知識に高め、さらに思想にまで高める」プロセスを研鑽することである。

情報とは基本的には日々起きていること・起ころうとしていることだ。重要ではあるが、それ自体では大きな意味をなさない場合が多い。

例えばマスコミに「どこそこで自動運転車の実験が行われた」とか「AIスピーカーに話かけると天気予報を教えてくれる」などが情報の例だ。

このような情報が積み重なってくると「我々は高度情報化社会の入り口にいる」という認識が固まってくる。これが知識のレベルだ。

次にその知識に基づいて「我々は何をすべきか?」という行動指針の問題が出てくる。これら価値観・理念をまとめて思想と呼ぶことにしよう。

現段階で単純な情報収集では既にAIは人間を上回る能力を発揮する場合が多い。

しかしその情報を知識に高め、さらに思想に高める点では人間の方がはるかに優れている。

人間は他人と議論をしたり、自分の中でテーマを掘り下げることで情報から文脈を紡ぎだすことができるからだ。

文脈を紡ぎだすためには、時間が必要だ。つまり情報を熟成させることで、味の良い知識や思想を得ることができるのだ。

結論としては味の良い知識や思想を発信することができる人間がAI時代を生き残ることができるということになり、そのような人間を目指す仕事術が必要ということである。

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