金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ネパール政府、外為法違反のAlipay,Wechat利用を禁止

2019年05月23日 | ネパールニュース

マスコミでは、連日米国政府による中国の通信機器大手ファーウェイに対する締め付けが報じられている。

それに較べると些細な話だが、WSJに「ネパール政府が外為法違反のAlipayとWechat利用を禁止した」というニュースが載っていた。

AlipayとWechatは中国を代表するスマートフォン決済アプリだ。細かいことは分からないが、日本のLine Payと同じような仕組みだろう。

電子決済が進んでいる中国では今や現金決済はほとんど行われず、買い物代金の支払いはAlipayなどで行われている。

中国からのネパール旅行者は年々増え、昨年の旅行者は15万3千人以上になった。中国人はネパールにとってインドに次ぐ大きなお客さんになった。

ネパールを旅行する中国人は、買い物の支払いをAlipayやWechatで行う。代金を支払う場合、お金の流れは「ネパールルピー代金に相当する人民元金額の計算→顧客の中国国内の銀行口座から人民元の引き落とし→ネパール内の銀行に送金→人民元からネパールルピーに転換して売り主口座に入金」となるのが通常の流れだ。

ところが売り主・買い主とも中国の銀行にAlipay等で決済する場合は、お金はAlipay等のネットワークの中で流れネパール国内にルピーが落とされることはない。

売り主がAlipay等を持っているというのは、売り主が中国人や中国資本が経営する企業の場合だ。

ネパールは自国生産の工業品が少ないので、店先で中国製の商品が売られている場合も多い。

つまりネパールを売り場にして、中国人が作った製品を中国人が買い、お金は人民元で支払い、ネパールには従業員の人件費等僅かなお金しか落ちないという構図だ。これは極端だが、資金決済に外為銀行の利用を求めるネパールの法律に違反している。

記事ではこのような違法取引がどれくらいあるかは分からないとしているが、ネパール政府にとっては見過ごすことができないレベルなのかもしれない。何故なら観光立国を標榜するネパールにとって中国人は大切なお客さん。一定の制限付きとはいえ、Alipay等の利用禁止は中国人観光客を減らすリスクがあるからだ。

通信やIT面で飛躍してきた中国だが、色々な面で諸国の法律・規制等と摩擦含みである一例だ。

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邦銀株配当利回り4%超えが意味するもの

2019年05月22日 | 投資

WSJにJapan's tantalizing bank dividends mask a world of troubleという記事が出ていた。意訳すると「興味をそそる邦銀の高配当利回りの影に問題山積」というところだろう。

昨日WSJの記事から欧州のマイナス金利問題を紹介した。この2つの記事に共通するテーマは「マイナス金利政策という劇薬による対症療法は銀行を衰弱死に追い込む」というものだ。

一般に金利高は株価にとってマイナス要因であるが、その一つの例外が銀行株だ。昨年米国では政策金利の引き上げが続いたが、その恩恵を受けたのが銀行セクターだった。金利が上昇する過程で、銀行は貸出金利を迅速に引き上げるが、預金金利については緩やかに引き上げることが多い。従って金利上昇は銀行に収益拡大のチャンスを与えるから、金利上昇時は銀行株が上昇する。また正常な経済情勢の中で金利が上昇するのは景気が良い時なので、銀行には貸出を伸ばすチャンスが多いから株価が上昇するとも考えられる。

さてご存知の方も多いと思うが、邦銀株指数の配当利回りは先週4%を超えた。これは1973年以降初めてのことだ。

殆どゼロといっても良い銀行預金にお金を預けるよりは、4%の配当を求めて銀行株を買っても良いと考える人もいるかもしれない(いや、いないか?)が、これは投資資金がある程度目減りしない時の議論である。

邦銀の配当利回りが上昇したのは、株価が下落しているからだ。株価水準を図る一つの指標は株価純資産倍率(PBR)だが、邦銀PBRは0.4まで下がっている。これは株価が解散価値の4割しかないことを意味している。

国内に貸出機会がない邦銀が融資を伸ばしているのは海外だ。メガ3行の海外融資比率は5年間で28%から34%に増えた。

また直接海外融資に取り組む手段に乏しい地銀はローン担保証券を購入している。

このローン担保証券というのは、リスクを外部から測定し難いので一概に危険きわまりないと評価するつもりはないが、業界アナリスト達は厳しい評価を下しているようだ。邦銀株低迷の一つの要因である。

現在の多くの地銀の収益構造は相対的に金利が高かった時の有価証券の遺産やハイリスクのローン担保証券に頼っている状態だ。

マイナス金利が前門の虎とすれば、預金取引を含む銀行取引のインターネット化・モバイル化は後門の狼だ。

以上のことを考えると配当利回り狙いならドコモ株は買うことができても、とても邦銀株は買えないことになる。

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ブログは記念誌作成に役に立つ

2019年05月21日 | ブログ

ブログを書く目的は「何かを他の人に伝える」ことにあります。

他の人は不特定多数の人の場合が多いでしょうが、メンバー限定で配信することもあります。

私の場合、山仲間の顔が大きく写っている写真はメンバー限定のブログで仲間と共有しています。

現在ではフェイスブックやラインを使って写真を共有する方が手っ取り早いのですが、いくつかの理由からブログを使うことが多いです。

その理由は次のようなものです。

  • 仲間の中にフェイスブックもラインもやっていないという人がいるので、ブログを使わざるを得ない。
  • 山行記録のアーカイブとしては、検索や写真の再取り込みの点でブログが便利だ。

今関係するある団体でトレッキング100回を記念して記念誌を作ろうという活動を行っています。

このような場合、ブログから行動記録と写真を引っ張ることができるのでブログは便利です。

公開用と非公開用、2つのエントリーを作成するのは手間ですが、記念誌を作る時などは役に立ちますね。

 

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マイナス金利依存症問題

2019年05月21日 | 投資

昨日(5月20日)のWSJに欧州のマイナス金利依存症問題に関する記事が出ていた。

投稿者はフランクフルト在住の記者なので、日本の話題は出てこない。しかし中央銀行のマイナス金利政策が様々な弊害を引き起こしている点では日欧共通するものがあるから参考になるところは多い。

5年前に革新的でそして短期的な景気浮揚策として導入された欧州諸国中央銀行のマイナス金利政策。景気が回復すれば、正常な金利に戻す予定だったが、まだマイナス金利を脱却した中央銀行はない。

一時的な鎮痛剤として使った劇薬の利用が常態化しているのだ。

理屈の上では、商業銀行が中央銀行に必要以上に預金を置いておくと利息を取られるから、銀行は貸出を促進する。企業は安く資金を調達できるので、設備投資を増やす。また消費者もまたお金を借りて消費を増やすので、景気が上向き物価が上昇してくることになる。

だが実際はそうはなっていない。貸出金利が低下しても、企業の設備投資に慎重な姿勢は変わらないし、安定した職業についていない消費者は銀行ローンを受けることができない。

低金利が持続しているので、収益性の低い会社もなんとか借金の金利を払うことができ、結果としてゾンビ企業が生き続けている。その結果経済全体の生産性が向上しない。欧州委員会は今年のユーロ圏のGDP成長率を1.2%と予想している。半年前の予想では1.9%だったが。

ユーロ圏の25歳以下の若者の失業率は16%で消費を牽引する力はない。

低金利が持続する中で消費者は老後に備えて貯蓄額を増やそうとするから消費は低迷する。

以上が欧州のマイナス金利政策が引き起こしている問題だ。

失業率の点などで日本との違いはあるが、ゾンビ企業が生き残り、人的資本を含めて、資本が最適配分されていない状況は日本も同じようなものだろう。

マイナス金利政策とは異なるが最近MMTと呼ばれる「現代貨幣理論」を唱える人が出始めている。これは「国はいくら借金しても自国の通過で借金できる限り破綻することはない」という主張のようだ。

だが私はこの理論に強い違和感を感じる。国家財政と家計は違うので、必ずしも国は「稼ぎの中で暮らす」必要はないが、野放図に借金して良い訳がない。また預けたお金に利息を取られるというのも常識から考えると奇妙な話だ。

奇抜な理論が常識と整合しない場合、避けるのが賢明というものだろう。保守的過ぎるという批判は承知の上だが。

マイナス金利政策が劇薬依存症を招き、脱却できないスパイラルに陥っていることは常識の重要さを示しているのではないだろうか?

 

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インド株急上昇、与党大勝利の見込み?

2019年05月20日 | ライフプランニングファイル

5月20日月曜日。週明けの余りぱっとしない相場の中でセンセックス指数(インド株)の上昇が目を引く。

午後1時半現在833ポイント2.2%の上昇だ。

出口調査によるとモディ首相率いるインド人民党連合は、総選挙で過半数から65%程度の議席を占める可能性が高い。

選挙前には、モディ首相の経済政策が格差拡大を招いている等の批判を受けて与党苦戦という観測もあったようだが、首相のヒンドゥ教よりと見える言動で支持率を引き上げたのだろう。

ところで「ヒンドゥ」という言葉は「ヒンドゥ教」という一つの宗教を指すだけではない。ヒンドゥとは「インドの」という意味でヒンドゥ教は「インドに存在する総ての宗教」を指し、ヒンドゥとはインド的なものの総称という説明を見かけることがある。

もっとも「インドに存在する総ての宗教」というとイスラム教も含むのでこの説明が正しいかどうかは疑問だが。

ただヒンドゥ第一という考え方は、トランプ大統領のアメリカファーストと通底するところがあると考えて良いだろう。

インド総選挙の投票者は9億人で開票結果を集計するのに1週間はかかるそうだから、選挙結果が明らかになるには時間がかかる。

だがどうやらモディ首相が今後5年間政権の座を維持し、経済成長政策を推進することに株式相場は自信を持っているようだ。

それは経済成長率でインドが中国を凌駕するペースを保つ可能性が高いことを意味する。

5年10年という期間で見るとインド株のウエイトの軽重がポートフォリオのパフォーマンスに影響を与える可能性は高そうだ。

 

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