マスコミでは、連日米国政府による中国の通信機器大手ファーウェイに対する締め付けが報じられている。
それに較べると些細な話だが、WSJに「ネパール政府が外為法違反のAlipayとWechat利用を禁止した」というニュースが載っていた。
AlipayとWechatは中国を代表するスマートフォン決済アプリだ。細かいことは分からないが、日本のLine Payと同じような仕組みだろう。
電子決済が進んでいる中国では今や現金決済はほとんど行われず、買い物代金の支払いはAlipayなどで行われている。
中国からのネパール旅行者は年々増え、昨年の旅行者は15万3千人以上になった。中国人はネパールにとってインドに次ぐ大きなお客さんになった。
ネパールを旅行する中国人は、買い物の支払いをAlipayやWechatで行う。代金を支払う場合、お金の流れは「ネパールルピー代金に相当する人民元金額の計算→顧客の中国国内の銀行口座から人民元の引き落とし→ネパール内の銀行に送金→人民元からネパールルピーに転換して売り主口座に入金」となるのが通常の流れだ。
ところが売り主・買い主とも中国の銀行にAlipay等で決済する場合は、お金はAlipay等のネットワークの中で流れネパール国内にルピーが落とされることはない。
売り主がAlipay等を持っているというのは、売り主が中国人や中国資本が経営する企業の場合だ。
ネパールは自国生産の工業品が少ないので、店先で中国製の商品が売られている場合も多い。
つまりネパールを売り場にして、中国人が作った製品を中国人が買い、お金は人民元で支払い、ネパールには従業員の人件費等僅かなお金しか落ちないという構図だ。これは極端だが、資金決済に外為銀行の利用を求めるネパールの法律に違反している。
記事ではこのような違法取引がどれくらいあるかは分からないとしているが、ネパール政府にとっては見過ごすことができないレベルなのかもしれない。何故なら観光立国を標榜するネパールにとって中国人は大切なお客さん。一定の制限付きとはいえ、Alipay等の利用禁止は中国人観光客を減らすリスクがあるからだ。
通信やIT面で飛躍してきた中国だが、色々な面で諸国の法律・規制等と摩擦含みである一例だ。