資本主義の特徴を「株式投資意欲が高い」ということと「富の偏在度合いが大きい」とするならば、中国は日本より資本主義国だろう。中国は近々予定されている米中高官会議の前に外国人投資家による中国への投資限度を100億ドルから300億ドルに引き上げると発表している。これにより米国の投資銀行を中心に中国への投資を一層高まるだろう。
金融機関が注目しているのは、中国での富裕層取引だ。FTによるとボストン・コンサルタントは「2006年末で100万ドル以上の金融資産を保有する家計の数は31万世帯と推定され、2011年までに60万9千世帯に拡大するだろう」と述べている。100万ドル以上の金融資産を持つ世帯数で中国は既に世界第五位だ。因みに野村総研の資料によると、概ね100万ドルに相当する1億円以上の金融資産を保有する日本の富裕層・超富裕層の世帯数は86万5千だ。
中国の富裕層を狙って12の外銀が既に中国内にオペレーションを展開している。例えばHSBCは15の都市で53の拠点を構えている。焦点は上海、北京、広州、深センという中核都市からその他の地域に拡大している。
たとえば渤海Bohai地方のTianjin天津、Dalian大連、Qingdao青島あるいは内陸部のChongqing重慶、Chengdu成都などだ。
中国の地名をわざわざ英語・漢字並べて書いているのは、自分のビジネスや投資のために中国の固有名詞の英語表記を理解する必要があり、データベース化を試みているからだ。
このように中国国内に外銀の進出が進む一方で、中国の銀行は外国の銀行の株式取得に走っている。例えば中国銀行は香港第三位の東亜銀行The bank of East Asiaの株を5%近く取得している。私は東亜銀行の株に少し前投資していたことがあるが、ターゲットの50ドル近くまで上昇した時利食いした。それはそれで一つの投資判断なのだが、この話がでてから東亜の株価が60ドル以上に上昇したのを見ると「先見性が乏しかったかなぁ」と思わざるをえない。
話がわき道にそれたが先月、工商銀行がアフリカのスタンダード銀行の株を2割取得したのも市場では有名な話だ。今の世界の金融の大きな流れを見ているとアメリカと欧州の一部の銀行と中国の銀行が、相互に株式の取得を行い提携を進めながら儲けと企業価値の拡大を図っている姿が浮かび上がってくる。これこそ資本主義のダイナミズムそのものだ。
個人資産の観点からも中国は日本以上の資本主義国なのだが、金融機関のダイナミックな動きという点でも日本よりはるかに資本主義国だと言えそうだ。
この中国をどう捉えるかがビジネスマンとして個人投資家としてもキーポイントになるだろう。