金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ハイブリッド経営の真相(1)

2007年12月01日 | 社会・経済

昨日1130日)の日経新聞朝刊は小さな囲み記事で「英エコノミスト誌がバブル時代の挫折を教訓に 日本的経営が生まれ変わり、新たな『ハイブリッド型』が誕生したと高く評価している」「編集責任者は 『アングロサクソン型に勝り、世界の企業経営を根本から変える可能性があると実感した』と報じている。

これでけ見るとエコノミスト誌が日本型経営の変身を手放しで賞賛しているような印象を与えるが、同誌の記事を読んで見ると話はかなり違う。一連の記事は十数ページにわたる論文なので、まだ全部を読んでいないが、かなり詳細に日本の強み・弱みを分析している。

エコノミスト誌はトヨタのプリウスを最も成功しているハイブリッド車で販売台数はまだ少ないが、トヨタのイメージを変えたと言う。そしてそれは日本自身の変身の象徴だと言う。確かに日本の一部の会社が日本型経営モデルと米国型モデルの融合に成功し、それがアジア諸国から注目を浴びていることは事実だ。しかし日本株のパフォーマンスの悪さが示すように、欧米の投資家が日本の構造改革の遅さと将来のパフォーマンスの見通しに悲観的なことも事実だ。

エコノミスト誌が言いたいことの一つは「国際的競争力を持つ改革の進んだ先進的企業と内向きで改革の進んでいない企業が並存する」という点であり、そのねじれが大きくなり色々な点で「今日本は重要なステージにいる」ということだ。

ところで私はこの論文をさっと読んで二つのことを改めて思った。一つは「ある時代に成功や成長の原因となったものは次の時代には失敗や停滞の原因になることが多い」ということだ。第二次大戦後の日本の高度成長を支えた要素「終身雇用」
「年功序列型賃金体系」「企業内組合」「メインバック制」といったものは、二十世紀最後の大変革期にマイナス要因となっている。

今まで読んだところでは、エコノミスト誌の指摘はないが、私は「少子化政策」も同類項だと考えている。少子化策は国や家計の教育費用負担を減じることで、より多くの資金を産業投資に回し急成長を可能にした。しかしそのツケが世界でも例を見ない急速な高齢化社会の到来となり、近未来に経済成長の低下が予想される。

もう一つはそれぞれの国にはそれぞれの成功モデルがあるということだ。ハイブリッド車を例に取ると、ハイブリッド車は炭酸ガス削減の一つの対策だが万能ではなく、他の有効な対策もある。ディーゼルエンジンやバイオ燃料あるいはハイパワーと省エネルギーを同時に実現したフォルクスワーゲンのツインターボエンジンなども代替的な対策なのだ。

日本の企業と従業員の関係の際立った特徴は、他の国とは異なり企業が正社員の福利厚生の面に深く関わっている点だ。これは国民の自助努力をベースとした米国型とも国民の高負担・高福祉をベースとする北欧型とも違う。

20世紀後半の「失われた10年の時代」に日本企業は正社員を減らし、派遣社員やアルバイトで代替することで経費を減らし、ボトムライン(利益)を改善してきた。しかしその反動は大量の非正規雇用者を生んだことである。所得の低い非正規雇用者が増えることは国内消費の減少を意味する。

このように日本のハイブリッド経営は色々な問題を抱えている。今後少しづづエコノミスト誌の論文にコメントを加えていきたいと思う。

コメント
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