金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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景気後退と恐慌の違い

2009年01月05日 | 社会・経済

エコノミスト誌にリセッションRecessionとディプレッションDepressionの違いは何か?という記事が出ていた。Recessionは英和辞書では景気後退、Depressionは不況という訳が一般的だが、Great Dpressionは米国の「大恐慌」を指すのでここでは「景気後退」と「恐慌」とした。一般にリセッションというのは、二四半期続いてGDP成長率がマイナスになることを指しているが、デプレッションの定義は定まっていないという。

エコノミスト誌がインターネットで調査したところでは、GDPの成長率がマイナス10%になる場合またはマイナス成長が3年以上続く場合をディプレッションと呼んでいることが多い。米国の大恐慌はこの両方の基準を満たしているのでまさに「恐慌」だ。

一方1990年代の日本の「失われた10年」はこの基準ではディプレッションには該当しない。何故ならGDPの最大の下落は3.4%だったからだ。エコノミスト誌によると、第二次世界大戦後、先進国でGDPが10%以上下落した例は1つしかない。それはソ連崩壊後フィンランドで1990年から93年にかけてGDPが11%下落したことである。一方発展途上国ではしばしばGDPは10%以上下落している。このことは先進国では景気後退時の政府の対応策が機能したことを示している。

エコノミスト誌はANZ銀行のチーフ・エコノミストEslake氏の分析も紹介している。それによるとリセッションとディプレッションの違いは成長率の低下度合いや持続期間だけではなく、原因も重要だということだ。

通常のリセッションつまり景気後退は金融引き締めにより発生するが、ディプレッションは資産と信用バブルの崩壊で発生する。従って両者に対する政策対応が異なる。金融引き締めで発生した景気後退に対しては金融政策つまり金利の引下げが有効に作用するが、財政政策は余り有効ではない。一方信用収縮やデフレーションを伴うディプレッションでは、伝統的な金融政策は財政政策ほど有効に機能しない。

今回の世界同時不況がリセッションで終わるか、ディプレッションになるかは政策当局の舵取り次第であろう。

エコノミスト誌は別の記事で今年の主な政治日程を列挙していた。1月にはオバマ米大統領の就任、又チェコがEUの議長国になる。3月は中国の全国人民代表大会、5月はインドの総選挙、6月はイタリアの大統領選挙・・・・などが上がっていたが、日本の総選挙については何もコメントがなかった。いつ解散が行われるか検討が付かなかったので、書かなかったのだろうか?まさかどう転んでも世界経済に影響がないと思って書かなかった訳ではないだろうが、気になるところだ。

コメント (1)
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