ポンドの下落が激しい。今日は120円程度だろう。ポンドが下落する理由について著名な投資家ビル・ロジャースがファイナンシャル・タイムズに明快のその理由を述べたいた。曰く「英国には売るものがないからだ。ポンドはもっと下落する」
ロジャースは英国の売り物は北海油田の石油とシティの金融サービスだったが、油田は掘削量が減少し(しかも今は原油安だ)、シティは金融機能麻痺でサービスはお休みという訳だ。また英国の住宅市場は米国よりも悪いという見方もある。ロイヤルバンクオブスコットランドに対する政府の出資比率が7割近くなるなどと、金融機関の痛み具合も激しい。
もしビル・ロジャースの意見が正しいとすると、為替はその国に売り物がないと下落し、売り物があると上昇することになる。円高が進んでいるということは日本は売り物がある・・・・ということになるのだろうか?
その日本の輸出だが今日発表されたデータによると、12月の輸出は前年比35%下落した。1990年以降最大の落ち込みだ。輸出先別では米国向けが36.9%減、中国向けは35.5%の減だ。
中国向けの輸出減は中国から見ると輸入減だ。中国の12月の輸入は21.3%減少した。この理由は部分的にはコモディティ価格の下落や部品の内製化により説明可能だ。しかし中国が日本から輸入している高付加価値な工業製品を簡単に内製化することはできないので、中国経済が急速に減速していることを裏付けている。
実際今日発表になった中国の経済成長率データによると昨年10-12月の成長率は6.8%で年間成長率は9%程度になると予想されている。また今年の経済成長率については5-6%とみるエコノミストが増えている。
ファイナンシャルタイムズによると、中国の11月の電力生産量は前年に較べて7.8%減少した。中国では電量生産量の伸びは10%以上だからこれは極めて異常なことだ。参考までに中国電力企業連合会の発表を見ると1-9月ベースでは15.12%の伸びだから、秋以降中国経済に急ブレーキがかかったことが想定される。
ところで英国などに較べれば「売るもの」があると思われている(だから円高が進む)日本だが、車の輸出が萎んだように「売るもの」があっても、買う人がいないと結局「売るもの」がないのと同じではないだろうか?実際日本は3ヵ月続けて貿易赤字である。
市場がこのことをもっと認識し始めると円の独歩高に少し歯止めがかかるかもしれない。